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住み替えのコツ

ひと昔前であれば、その土地に根付き、家を代々引き継いでいくものの象徴として、または一生に一度の買い物として「家」という存在がありましたが、現在ではそのスタイルは大きく変化しています。
現在では持ち家があっても、夫婦共働きの場合では職場に近いエリア、子どもが小さいうちは実家の近くや自然が豊かなエリア、そしてシニアになったら、病院の近くや地域のコミュニティーが整ったエリアなど、その時その時の生活環境に合わせて住み替えるという選択をする方が増えています。

住み替えるということは、現在のお住まいが持ち家ならば、売却または賃貸にして新しく住宅を購入することですが、いろいろと大変そうな印象を持たれる方も多いことでしょう。
このような住み替えについて、実際に成功している方はどのような情報を持っているのでしょうか。

「売るのが先か、買うのが先か」

住み替えを検討し始めるといろいろ不安が出てきます。

  • ほしい住宅が見つかり購入を検討したいけれど、今住んでいる住宅の住宅ローンもある中で、果たして再度新しく住宅ローンを組めるのか。
  • 土地を購入し、家族の希望を取り入れた注文住宅を建てたいけれど、土地を購入する資金はどうしたらよいのか。
  • とりあえず今住んでいる住宅を売却し、新しい住宅を探し始めようと思っても、タイミングよく希望の住宅が見つからず、賃貸住宅を借りなければならなくなり、敷金・礼金などの費用がかかってしまうのでは。

このような不安を解消するためにまず考えていただきたいのは、我が家にとって「売るのが先か、買うのが先か」について、どちらが適しているのかということです。
それを考えずに行動してしまったために、思わぬ出費が増え、住み替え自体を踏みとどまってしまうことがあるかもしれません。
そうならないためにも「売るのが先か、買うのが先か」のメリットとデメリットを知り、まずは、どちらが我が家に最適かを考えていきましょう。
下記では一般的に言われるメリットとデメリットを表にしました。

メリット デメリット
売るのが先 ■見通しが立てやすい
住宅を売却したお金が手元に残るために、次の住宅の購入資金の目安にブレが出ない。
■焦らなくてもよい
焦って売却する必要がなく、売却したい価格を設定できる。ゆっくりと新しい住宅を探すことができる。
■引き渡しと物件探しのタイミングが難しい
今住んでいる住宅の引き渡しまでに、新しい住宅を決めなければならない。希望に合った住宅が見つかればよいが、見つからなければいったん賃貸住宅に引っ越し、今住んでいる住宅を引き渡さなければならないこともある。
買うのが先 ■チャンスを逃さない
新しい住宅を買うタイミングを逃さない。希望に合ったものがあればすぐに検討することができる。
■希望通りの売却価格にならない場合もある
新しい住宅の引き渡しまでに、今住んでいる住宅を売却し資金を調達しなければならないため、売却価格の減額など、さまざまな調整が必要な場合もある。

現在お住まいの住宅が人気のエリアで、類似物件の取引も多いのであれば、すぐに買い手がつくかも知れません。しかし、どうしてもこの価格で売却したいなどの理由があって、その価格が相場と大きく差があれば売却に時間がかかるでしょう。また、希望のエリアで住み替えたいと思っても、ちょうど良い住宅がなかなか見つからないかもしれません。
住み替えを成功させるためには、ご自身のさまざまな希望に優先順位をつけ、「売るのが先か、買うのが先か」のどちらが我が家にとって適切かを考え、決まったら必要な費用について考えていきましょう。

住み替えにかかる諸費用

住み替えには目に見えないいろいろな諸費用がかかります。それを可視化させ、あらかじめ予算に組み込んでおかないと、いざとなったときに資金不足になってしまったということも起こり得る場合があります。諸費用は大まかには価格の3%~10%程度と言われていますが、集合住宅か一戸建てか、新築か中古か、注文住宅か分譲住宅かなどの条件によって変わります。必ず必要な費用ですので、事前にしっかりと専門家に確認しましょう。
住み替えにかかる諸費用には下記のようなものがあります。

諸経費 内訳
売却時 ・仲介手数料 3%+6万円+消費税
・売買契約書の印紙税(1,000万円超~5,000万円以下) 1万円
・抵当権抹消登記費用(司法書士に依頼する場合には+要手数料) 不動産一筆あたり×1,000円
・住宅ローン一括返済手数料(三井住友銀行・書面の場合)※1 2.2万円
・譲渡所得税 (売却益がある場合)
購入時 ・仲介手数料※仲介物件を購入した場合 3%+6万円+消費税
・売買契約書の印紙税(1,000万円超~5,000万円以下) 1万円
・土地 所有権移転登記(司法書士に依頼する場合には+要手数料)※2 課税標準額×1.5% (令和3年3月31日まで)
・新築建物 所有権保存登記(司法書士に依頼する場合には+要手数料)※2 課税標準額×0.4% (条件によっては0.15%)
・中古建物 所有権移転登記(司法書士に依頼する場合には+要手数料)※2 課税標準額×2% (条件によっては0.3%)
・抵当権設定登記費用(司法書士に依頼する場合には+要手数料) 債権額×0.4%(条件によっては0.1%)
・住宅ローン融資の銀行手数料 (三井住友銀行の場合)※1 ご融資金額×2.2%
・住宅ローン金銭消費貸借契約書の印紙税(借入額1,000万円超~5,000万円以下) 2万円
・不動産取得税 (土地)
条件によっては特例適用住宅用地の軽減措置もあり。
課税標準額×1/2×3%
(令和3年3月31日までに宅地等を取得した場合)
・不動産取得税 (建物)
条件によっては課税評価額から1,200万円減額等の軽減措置あり。
課税標準額×3%
・火災保険料 (条件によって異なる)
その他 ・引っ越し費用 (季節・荷物量により異なる)
  • ・住宅ローン一括返済手数料は金融機関によって、残債額に対しての割合に応じて設定される場合があります。
  • ・フラット35で借り入れする場合には適合証明書発行費用が別途かかります。

「住み替えローン」の活用

現在お住まいの住宅の価値が購入時に比べて、上がっていれば喜ばしいことではありますが、もちろん下がる場合もあります。住宅を売却しても、その住宅を買ったときに借りた住宅ローンが完済できずに、残債が出る場合があります。
「住み替えローン」であれば、残債と新しい住宅の購入資金を足して住宅ローンを組むことができます。
ただし、「住み替えローン」を利用するには、現在お住まいの住宅の売却と新しい住宅の※不動産決済を同時にしなければならず、そのため、売却が決まったら急いで次に購入する住宅を探さなければならないなどの時間的な制約を受けることになりますので、進め方には注意が必要です。
住宅ローンの申し込みができるまでの間に、必要な土地の取得費用、着工金、中間金などの資金を用意する必要がある場合には「つなぎ融資」を利用する方法や、必要に応じて何回かに分けて融資が行われる「住宅ローンの分割融資」もありますので、それらを上手に活用していきましょう。

※不動産決済とは…住宅を購入するための資金をすべて売主に渡し、所有権移転登記を始めることを言い、これで不動産の売買は終了します。

住宅を売却したときの税金について~譲渡所得に対する税金減税の特例

現在お住まいの住宅を売却したとき、購入した金額よりも高く売却できた場合は譲渡所得となり、税金がかかります。この税金についても知っておく必要があるでしょう。

  • 短期譲渡所得(所有期間5年以下)
    所得税30%+住民税9%+復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)
  • 長期譲渡所得(所有期間5年以上)
    所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)

また、譲渡所得の特例として特別控除が受けられます。

  • 3,000万円の特別控除の特例
    住宅を売却した際に、3,000万円が控除されるという制度。3,000万円に満たない場合は、譲渡所得の金額が限度となります。
  • 長期譲渡所得の特例
    所有期間が10年を超える住宅を売却した際に、軽減税率が適用されます。この特例は上記の3,000万円の特別控除の特例を適用した後の課税長期譲渡所得金額に対して軽減されます。
    ただし、住宅ローン控除と譲渡所得の特例の特別控除は重複して受けられませんので、注意が必要です。

自宅を賃貸にする

現在お住まいの住宅の住宅ローンを完済している場合には、その住宅を賃貸にし、家賃収入を得ることも可能です。その家賃収入を新しく購入した住宅の住宅ローンの支払いに充当したり、老後の資金として活用することもできるでしょう。
例えば4,000万円で自宅を売却予定の場合、その売却金を大手銀行に預けても、金利0.002%(2020年4月現在)/年の大口定期預金の場合、年間800円の利息にしかなりません。
しかし、売却せずに賃貸にした場合(家賃15万円の場合)年間家賃収入は180万円となり、単純比較はできませんが、大手銀行の大口定期預金の金利よりも利益を得ることのできる可能性があります。
このほかに、固定資産税、賃貸管理料、修繕費など、コストもかかります。また、賃貸には空家リスクがありますので、立地や類似物件の賃料、今後の資産価値について見極めることが重要です。

まとめ

家族の夢を形にすることができる住宅。買い換えによって、その夢に近づいていければとても素敵なことですね。
それにはまず正しい情報を知り、実行するために必要な費用を把握することが大切です。客観的に考えるための方法として、今後のライフイベントにかかる費用を換算した「キャッシュフロー表」というものを作成し、家計の収支状況を予測することも一つの方法でしょう。

執筆者

山田健介

FPplants株式会社 代表取締役社長

住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。

※掲載の情報は2020年5月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。

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