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生活を考える

家族それぞれが
「私らしい時間」を過ごせる家

おうち時間が長くなり、家族全員が顔を合わせる時間が増えたことで、
「一人でゆっくりとくつろぎたい」「自分時間を過ごせるスペースを確保したい」
という声が聞かれるようになってきました。

今回は大和ハウス工業のハウジングマイスター(社内認定)の芦刈創一と手島秀典が
「私らしい時間」を確保する設計のアイデアをご紹介します。

Profile

大和ハウス工業 四国支社 住宅設計課 課長
一級建築士 インテリアプランナー エクステリアプランナー

芦刈 創一

光を意識し、ガラスを用いた住まいづくりを得意とする自称「ガラスの魔術師」。ハウジングマイスターとして積み重ねてきた経験とノウハウを生かし、現場での知識共有を通じた後輩指導にも力を注ぐ。大学時代は馬術部に所属。家族は妻と、娘が2人。

大和ハウス工業 広島支社 住宅事業部設計部 主任技術者
一級建築士 一級エクステリアプランナー インテリアコーディネーター

手島 秀典

味のあるスケッチとユーモアたっぷりの打ち合わせでお客さまのハートをつかむ達人。豊かな発想力で、オリジナリティある設計デザインを次々と考案する。家族は妻と息子が1人。

自宅内でパーソナルスペースのニーズが高まっている?

ダイワハウスでは住まいの中で「居心地がいい」と感じる場所についてアンケートを実施しました。「自宅内に欲しい理想のスペースは?」という質問に対し、「一人でくつろげるスペース」や「自分専用の個室」という意見が多く見られ、自分の趣味を楽しみ、一人でくつろぐ時間を持てるパーソナルスペースを求めていることが明らかになりました。

アンケートの回答の一部をご紹介します。

  • 趣味の模型づくりや一人でいたいときのために、2帖くらいの自分専用スペースが欲しい
  • 狭くてもいいので空調完備で小窓があり、テレビが見られる防音効果のある空間
  • ベランダに椅子を置いて昼間は本を読み、夜は夜景を眺めながら非日常を味わいたい
  • 手芸用品やミシン、アイロンを出しっぱなしにできる趣味のスペース
  • 広くてキレイなバルコニーにハンモックやグリーンを置いて癒やしの時間を過ごしたい

設備の整った完全個室空間を求める人もいれば、広さにはこだわらず一人でくつろげる空間を求める人もいました。今回は、スペースが限られていても、家族それぞれが思い思いに過ごせる居心地のいい空間をつくる設計のテクニックをご紹介します。

「段差」を生かすと心地よいパーソナルスペースが生まれる

手島:アンケートの回答にも見られたように、実際のお客さまとの打ち合わせでも趣味が楽しめる部屋や書斎のご要望は非常に多いですね。しかし、リビングや寝室、子ども部屋といった居室に比べると優先度が低く、広さと予算の関係で実現できないケースもありますね。

芦刈:そうですね。そうした個室を確保しようとすれば、その分、他の部分を削ることになります。そこで我々は、家族の気配は感じられつつも、一人の時間を過ごせるような半個室スペースをご提案することが多いですね。さまざまな手法がありますが、「高低差」をうまく生かすと家族と目線の高さが変わり、居心地のいいパーソナルスペースが生まれます。

ロースタイルリビング

手島:ロースタイルリビングのステップは、ちょうどよいベンチ代わりになります。上の写真のお宅さまでは、手前のステップに腰掛け、リビングテーブルは置かずにコーヒーなども段差をテーブル代わりにして置いて休憩されているそうです。少し低めの目線から庭を見てホッと一息つくこともあれば、子どもと遊びながら窓辺の段差に腰掛けて、LDKを眺めるのも好きだとか。

日頃、気が付くといつもロースタイルに家族が集まってきており、家族それぞれがお気に入りのスペース=自分の居場所でくつろいでいるとおっしゃっていました。

また、フラットなリビングだと床にモノを飾るのは難易度が高いですが、ロースタイルリビングを設けて生まれた段差なら、自分のお気に入りのモノを飾るスペースとしても有効活用できます。このようにくつろぐ空間とはまた異なった、自分の趣味のスペースをつくることも大事だと考えています。

階段周り

芦刈:階段に腰掛けたり、階段の踊り場や階段下をくつろぎの場として活用したりする方法もあります。通常の階段よりもスペースは必要になりますが、居室をつくるよりも省スペースですし、高低差があることで、隠れ家感が増します。

さらに、その場所で過ごしているときの視線の先を考慮すると、より居心地のいい空間になります。小窓から外の植栽が見えたり、踊り場に座ったときに家族がくつろぐ様子が見えるのもいいですね。「高低差」と聞くとネガティブな印象があるかもしれませんが、スペースを立体的に活用でき、視線の方向を切り分けることも容易なので、プライベート感を演出することができます。

手島:一段上がる、一段下がるといった所作によって、気持ちのスイッチの切り替えにもなりそうですね。

動線上の「ちょい掛け」スペース

手島:こちらの事例のように、ロースタイルリビングとダイニングスペースの間に高さ40cmくらいのベンチを造作することが多いですが、ここが「ちょい掛けスペース」として重宝するようです。ソファに座るとくつろいでしまうのでそこまでゆっくりはできないけれど、家事の合間に一息ついたり、スマートフォンをチェックしたい。そんなタイミングで生活動線上にこうしたオープンなくつろぎスペースがあると、意外と使い勝手がいいようです。

ガラス越しのひとり時間を楽しむ

手島:自分はよく中庭デッキに出て、ガラス越しにリビングでくつろぐ家族の姿を眺めていることがあります。家族の姿は見えていても、ガラス戸などで話し声や生活音をシャットアウトするだけで、意外と一人の時間を過ごしている気分になれるものなんだな…と感じます。

芦刈:求めているのは、一人になれる空間(スペース)ではなく、一人になれる時間、と解釈することもできそうですね。例えば、上の写真のような中庭にテーブルと椅子を配置してガラス戸を閉めれば、ガラス越しのひとり時間を満喫できそうです。

この事例は家の目の前の交通量が多いため、視線を遮るために中庭をご提案しましたが、すべて吹き抜けにするのではなく、軒を半分かけることで適度に日射や雨を遮ることができ、風の通り道が設計された居心地のいい空間になっています。

手島:屋外に電源を設置しておけば、バーベキューや鍋を楽しむこともできそうですね。

芦刈:このような屋外のバルコニーもくつろぎのスペースとしてぴったりです。奥行き2.7mのバルコニーで、隣接するマンションからの視線を遮る高い壁と日よけのパーゴラを取り付け、写真奥のルーバーから入る心地よい風の通り道になっています。アンケートで多く見られた「非日常を味わいたい」ニーズにもぴったりではないかと思います。

夫妻でテレワーク。ワークスペースはどう使い分ける?

芦刈:アンケートでも仕事や趣味に集中できる個室や書斎を求める声が多かったように、ご夫妻で在宅勤務が多く、それぞれワークスペースを必要とするケースは増えてきています。ただ、個室を設けると空調設備の設置も必要ですし、圧迫感も出てしまうので、フレキシブルな空間にしておく方が後々使い勝手がいいでしょう。お客さまのテレワークの頻度や業務内容にもよりますが、ロールスクリーンなどでやわらかく仕切ってあげるのも方法の一つです。

手島:夫妻でリモート会議などがバッティングしてしまった場合、一人は寝室の一角に設けた書斎スペース、もう一人はLDKのダイニングテーブルで行うのが現実的かもしれません。寝室は基本的に寝るとき以外は使わないので、日中も活用することをおすすめしたいですね。

芦刈:家族構成の変化を時間軸で考えることもおすすめしたいです。例えば、子どもが個室を必要とするのは、小学校の中学年くらいから独立するまでの10数年程度です。まだお子さまが小さいご家庭なら、個室を使い始めるまでの間とお子さまが独立した後は、子ども部屋を書斎として活用できます。子どもが学校に行っている日中、子ども部屋の机を兼用する方法もありますね。

手島:お子さまがすでに子ども部屋で寝ている年齢なら夜に仕事をすることができますが、大人と一緒に寝るような低年齢なら就寝も同じタイミングになることが多いので、夜遅くまで仕事をする機会はそう多くないはず。仕事をする時間帯も考慮しながらワークスペースを考える必要がありますね。

手島:リモート会議や電話が多いお仕事の場合、防音ガラス引き戸「静音スクリーン」を設置すると、開放感が感じられながらも音漏れを防いで集中できる空間がつくれます。

快適防音静音シリーズ「音の自由区」

子どもの居場所も変化?心地よい場所を家族でシェア

手島:子どもが過ごす場所も時代とともに変化していると感じます。最近よく見られる光景は、子どもの友達が遊びに来ても家には上がらず、玄関先に3〜4人の子どもが頭を突き合わせてゲーム機で通信をしている姿。一昔前はリビングのテレビの前で遊んでいたので、ゲーム機の進化で子どもの動線も変わるのだなと思いました。玄関先に腰掛けられるスペースや椅子を置いたりすると、居心地のいい場所になりそうですね。

芦刈:ゲームに限らず、子どもがタブレット学習をするときも、窓辺のベンチや階段の踊り場、バルコニーの椅子など、家じゅうに心地よい居場所をたくさんつくれば、そのときの気分に合わせていろんな場所を使い分けることができそうですね。

手島:使う人や用途が限定された空間ではなく、家の中に家族がひとり時間を過ごせるような居心地のいい場所をたくさんつくり、作業内容やその日の気分に合わせてシェアしていく形が理想的だと思います。

実用性は大事だけれど、居心地のいい空間も生きる上で必要

手島:お客さまと打ち合わせをしていると、家事をメインに担っている方からはLDKの広さや収納、家事動線といった実用的なご要望は多いけれども、居心地は二の次になっているケースは多いです。

家づくりのタイミングでは「とにかく生活しやすい家を!」という考えで頭がいっぱいになっているのだと思いますが、今回のアンケート結果のように、しばらく住んだ後、やはり居心地のいい空間も欲しかった…という気持ちになることも考えられますので、ご自身がホッとくつろげて、家での自分時間を大切にできるような空間を考えてみませんか?とご提案したいです。

キッチン脇に設けられた家事コーナーのニーズは高い。家事の合間にお茶を楽しむことやテレワークスペースとしても利用できる。(マルチユーススペース

芦刈:その通りだと思います。家族が別々のことをしながらも、ちょうどいい距離が保たれるような居心地のいい場所が家の中にもっとたくさん増えていくような家づくりが理想ですね。

まとめ

ドアで仕切られた個室でなくても、家族それぞれがお互いの存在が気にならない距離感で自分の時間をとれるスペースは、豊かなおうち時間をもたらしてくれるでしょう。これから家づくりをされる方は、居心地のいい場所を家の中にたくさんプランニングしてみてください。

  • ※掲載写真の外観・仕様・外構等については、敷地、周辺環境等の諸条件や地域の条例その他諸事情により採用できない場合があります。
  • ※現行商品では採用できない仕様・アイテムが含まれる場合があります。
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