楽しさや幸せをたくさんもたらしてくれる猫や犬との暮らし。
近年は室内飼育がほとんどとなり、家族の一員として大切にされている反面、
室内での事故は増加傾向にあるようです。
今回はアイペット損害保険株式会社に所属する獣医師の長尾麻矢さんに、
猫や犬の異物誤飲を防ぐための心得や対処法を伺いました。
アドバイスいただいた方
ダイワハウスskye~スカイエ~幕張展示場にて撮影
「異物誤飲」について知る
前回ご紹介したアイペット損害保険の「手術請求件数ランキング」の中で、猫では第2位、犬では第5位に入った「異物誤飲」。今回は「異物誤飲」の防ぎ方や住まいづくりにおけるポイント、起こった時にどうするべきかについてお伝えします。
猫や犬が食べると危険なもの
猫や犬が食べてはいけない危険なものは、大きく分けて二種類あります。一つは中毒性のあるもの。もう一つは詰まったり、刺さったりするような物理的に危険なものです。中毒性のあるもののうち代表的なのは、玉ねぎ、ブドウやレーズン、チョコレート、キシリトールなどです。また、チューリップやユリなどの植物のほか、観葉植物にも有毒なものがあります。人間の医薬品、たばこの吸い殻、精油(アロマオイル)などでも中毒を起こします。
人間の食べもの
植物類
その他
物理的に危険なものとしては、ひもやリボン、焼き鳥などの竹串、果物の種などが挙げられます。他にも、鶏の骨、靴下やストッキング、イヤホン、ボタン状の電池、など、口に入るサイズのものはどんなものでも原因になり得ます。市販されている犬猫用のおもちゃでも、猫であれば小さいネズミのおもちゃ、犬ではボールといった物が異物になりがちですので、注意が必要です。
異物誤飲が起こりやすい年齢と場所
アイペット損害保険が実施したアンケート(n=329人)では、猫でも犬でもそれぞれ80%以上の飼い主さんがペットの異物誤飲を経験したことがあるという結果となりました。飼い主さんは「こんなものを食べてしまうと思っていなかった」とびっくりしてしまうことが多いのです。特に子猫や子犬は好奇心が旺盛で、ものを噛みたい(犬)、狩りをしたい(猫)という欲求が強いため、たとえ十分に食事を与えていても興味を持ったものを口に入れて飲み込んでしまうのです。
異物誤飲はリビング、ダイニング、キッチン、洗面所、和室など、家中のどこででも起こります。床に落ちているもの、ごみ箱の中のもの、テーブルの上に置いてある日用品、料理中に落とした食材など、やんちゃな猫や犬の気持ちになって見渡せば、興味を引かれるものばかりだと思いませんか?
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異物誤飲を防ぐための住まいの工夫
一度ペットの異物誤飲を経験した飼い主さんは、苦しむ愛猫や愛犬の姿にショックを受け、それ以降は猫や犬の手や口が届くところに危険なものを置かないように気をつける方が多いです。できれば異物誤飲が起こる前に、飼育環境を整えて配慮してあげたいですね。
異物誤飲を防ぐポイントは3つあります。
1. 片付ける
普段の生活で、ものを出しっぱなしにしたり、床に置きっぱなしにしたりしないように心がけましょう。
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2. 届かない所に置く
猫や犬が届かない場所に収納を設けたり、勝手に開閉できない収納扉を付けたりすると良いでしょう。
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3. ガードする
食べると危険な食品や小物が存在する場所には、そもそもペットが立ち入れないようにすることもお勧めです。特にキッチンには、猫や犬が入れないよう扉を付けたり、犬が飛び越えられない高さのフェンスを付けるのがお勧めです。
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キッチンの入り口にペットゲートを設置すれば、犬の立ち入りを制限できます。
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光を通すライトスルースクリーンなら、閉塞感がなく必要に応じて開閉できます。
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キッチンのごみ箱は蓋付きがお勧め。さらにごみ箱置き場に扉を付ければ、ごみを食べてしまう事故を二重に防げます。
異物誤飲が起こってしまったら
もしペットが異物を飲み込んでしまったことに気づいたら、慌てず状況を正確に把握し、すぐに動物病院に連れて行くか、電話で獣医師に判断を仰ぎましょう。飲み込んでから数日たって症状が現れることもあるので、自己判断はとても危険です。応急処置がインターネットなどに記載されていることもありますが、かえって事態を悪化させる可能性があり大変危険です。
動物病院では、薬剤で嘔吐させる、内視鏡を用いた手術を行う、開腹手術を行うなどの治療法がとられます。異物の種類にもよりますが、飲み込んでからの時間が短ければ短いほど、体への負担が少ない方法を選択できる可能性があります。
まとめ
飼い主さんが十分注意し、飼育環境に配慮することで防げる「骨折」と「異物誤飲」。起こってしまってから対策するのではなく、飼い始める前に猫や犬にやさしい環境を整えてあげたいですね。
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