子どもの心をまっすぐに、健やかに育みたい。
きっとすべての親が願う理想をかなえるために、
住まいができる工夫には、どのようなことがあるのでしょうか。
子育てと住まいの専門家にお話を伺いました。
明るく、素直な子どもに育ってほしい。親がそう願うのは当然のこと。引きこもりや非行のニュースをテレビなどで目にすると、心配になってしまいますね。
パパ・ママに、子育てやしつけについての関心事を尋ねたアンケートによれば、その第一位は「ほめ方・しかり方」(※71.0%)でした。うまくできないと感じている方が、多いという事実の裏返しかもしれません。
時に反抗期を挟みながらも、本質的な部分ではつながっていて離れることはない、という親子関係を育むポイントは、コミュニケーションにあります。自然と親子の触れ合いが生まれるような住まいに憧れるという声もよく耳にします。「おはよう」「ただいま」「おやすみ」といった何げないあいさつでも、幼少期から習慣づけておけば、顔色や声の調子などの変化に気づきやすくなり、より深いコミュニケーションの糸口になります。
自分の部屋で過ごしがちな中高生になる前、つまり幼少期のうちに密な関係を築いておくことが大切です。そのためにおすすめしたいのが、親と子の絆を育むための間取りの工夫です。
※データ出典:ミキハウス子育て総研調査(2008年5月/有効回答数323名。複数回答可)
家族のコミュニケーションの場となるのは、暮らしの中心になるリビング。自然にあいさつを交わすためには、玄関からリビングを通って子ども部屋へ入る動線を計画するのが良いでしょう。「ただいま」の声もなく自室へ直行したり、帰宅したのかどうかも分からないといったことは避けたいものです。
また、子どもにとって家族の気配を感じられる居場所があることも大切。勉強中も遊んでいるときも、常に気配を感じることで、子どもは安心して、居心地の良さを感じるものです。何かあればお互いにすぐに声をかけてコミュニケーションをとれる場所が理想的。例えば、リビング・ダイニングの一画にタタミコーナーを設けるのはいかがでしょうか。幼少期は遊び場に、小学校に入れば勉強スペースに。子どもがいないときは、洗濯物を畳んだり、アイロンをかけたり、ユーティリティスペースとして重宝します。
楽しい時間を共有できるスペースをつくることも、コミュニケーションにつながります。例えば、花壇や家庭菜園などはいかがでしょうか。親子一緒になって花や野菜のお手入れをしたり、開花や収穫を楽しむ時間は、コミュニケーションだけでなく、暮らしにかけがえのない豊かさを生み出してくれるでしょう。また、絵画やアートを飾るのも、会話のきっかけづくりになります。五感への刺激は、感性を育む情操教育にもつながるため、子育てには多くのメリットがあると言えるでしょう。
日々コミュニケーションを重ねることで、家族の絆は育まれていきます。住まいそのものに手を加えなくても、例えばキッチンの前に踏み台を置くだけで、子どもと一緒にお料理を楽しめるようになります。子どもの目の高さに降りて小さな工夫を考えてみることも、親子の絆を深めるきっかけになると思います。
親の会話を聞きながら眠りにつけたり、夜中に目を覚ましても親の温もりを感じられたりすることが、安心と信頼の感情につながります。
一緒に育てる楽しみを体験できるだけでなく、収穫した野菜を使って料理を作れば、味わう時間を共有でき、食育にもつながります。
作家のものも良いですが、子どもたち自身の作品を飾れば楽しさが膨らみます。コルクボードなどを使うのも良いでしょう。
藤田 洋さん
ミキハウス子育て総研株式会社代表取締役社長。2006年、民間企業としては日本初の「子育てにやさしい住まいと環境」認定事業を立ち上げるなど、子育てと住まい、居住空間を考えるスペシャリスト。関連著書も多数。プライベートでは3人の娘を育て、今は孫が2人。
2016年3月現在の情報となります。