子どもの頃の食体験は、その後の人生に大きな影響を与えます。
食べることの大切さを子どもたち自身が理解し、
正しい食生活を身につける方法について、
株式会社食文化の萩原章史さんにお話を伺いました。
安価な加工食品や外食があふれる現代において、子どもの食生活は昔に比べて大きく様変わりしています。核家族化などの影響により、一人で食事をする「孤食」が増加していることからも、食育の重要性が高まっていると言えるでしょう。
小さい頃から正しい食の知識や習慣を身につけるための第一歩は、「人間の体は食べたものでつくられる」という基本をしっかり教えることです。日々口にするものが体内で消化・吸収されて細胞や組織を形成するため、食事がおろそかになれば体に影響が出てくるのは当然のこと。さらに、意外と忘れられがちですが、体の中で最もエネルギーを消費する脳の健康状態にも、食事が大きく関係しています。
単に「体にいいから食べなさい」と言っても、子どもはなかなか言うことを聞きません。しかし、「なぜこの食べ物が体にいいのか」「この栄養素が不足するとどんなことが起こるか」をしっかりと教えると、食べることの重要性を頭で理解します。つまり、大切なのは具体例を挙げて論理的に伝えること。そのためにはまず親の側が、食と体に関する科学的な知識を持つことが必要なのです。
日々の食事で健康な体をつくるためには、良い食材を選ぶことから始めましょう。食材の質が良ければ味付けが薄くても十分おいしく、子どもは薄味に慣れると味が濃いものは食べなくなります。好き嫌いがある子どもも、自然に近い野菜や魚であれば「おいしい」と感じるのではないでしょうか。
また、市販の加工品などは、加熱や加圧、殺菌する過程でおいしさや栄養分が失われ、余計な添加物が付加されます。加工品や外食に頼らず高品質な食材を選ぶことは、食の安全・安心とも関わってくるのです。
良い食材を見極める方法は、産地から食卓に届くまでの流通経路を重視し、価格で選ぶのではなく、産地や生産者が確かなものを選ぶこと。しっかりと手をかけてつくられたものを選びましょう。
栄養バランスの良い食生活が大切であることは分かっていても、よく言われる「一日30品目」といった指標は、普段の生活の中でなかなか達成できるものではありません。一週間、一か月、さらには一年といった長いスパンで、無理せずバランス良く栄養を取っていけば良いでしょう。季節ごとの旬の食材を意識して食べるようにすると、自然と一年を通してさまざまな栄養分を取ることができるためお勧めです。
また、最近は加工された食材の姿しか知らない子どもが増えていますが、旬の食材を知ることは、魚や野菜、果物そのものの姿を知ることでもあります。どこで捕れた何という魚なのか、現物を見せて子どもに教えると、魚の姿や種類を覚えます。さらに「今の時期がおいしいのは魚の餌になるプランクトンが多いから」など、「なぜおいしいのか」を親も理解した上で、理由を伝えれば食に対する興味が芽生えるでしょう。
子どもと一緒に料理をつくる
料理とは、五感を使って複雑な段取りをこなす作業。小さい頃からキッチンに立つ経験を積むことは、子どもの成長につながります。包丁を持つ、火を使うことを危ないからといって避けるのではなく、正しい使い方を教えましょう。
バーベキューや
ホームパーティを楽しむ
家族や友達と一緒に楽しみながら食べる体験は、とても大切なものです。ポイントは、「食材を買う」「火を起こす」「肉を切る」など、子どもの役割を決めること。準備段階から参加することで、責任感や社会性が育まれます。
萩原章史先生（株式会社食文化）
会社勤務を経て、2001年に株式会社食文化を創業。「食で日本人を元気にする」ことをミッションに掲げ、生産者を支援するためのインターネット販売システムを構築。「うまいもんドットコム」ほか多数のサイトを運営する。
2018年1月現在の情報となります。
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