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コラム No.130-5

CREコラム

不動産DX入門(5)業務効率化

公開日:2022/08/31

DX(デジタルトランスフォーメーション)で最も関心が高いのは、業務の効率化です。デジタルの力で経営革新するといっても、個別具体的にはITによる業務改善を図り生産性向上を推進するのがDXにとって「はじめの一歩」。今回は不動産業務の効率化について考えます。

契約の電子化に着手する

不動産業務の効率化といえば、契約書類の電子化がまず挙げられるでしょう。2022年5月に宅地建物取引業法(宅建業法)の改正法が施行されました。デジタル改革関連法整備の一環として改正されました。これにより不動産取引における重要事項説明書の作成およびその説明や賃貸契約、売買契約など契約書類の電子化や押印の廃止が認められたことで、ペーパーレス化が一気に進むことになりました。

不動産は貸主と借主、売主と買主など各種の取引態様において多くの取り決めや手続きを踏んだうえで契約成立に至ることから、契約書類は他の産業にも増して複雑かつ多種類にわたっています。このため業務の性格上紙の書類が多くなり、書類の保管も重要な仕事になります。こうした一連の契約書関連業務で電子化が認められたことで、不動産業務の効率化は加速しています。

契約の電子化は、電子契約システムの導入が近道です。しかし市販のソフトを購入して稼働させるにしても、手作業で行ってきた従来の事務処理の手順の見直しをすることが不可欠です。賃貸契約の場合、入居希望者とオンラインで記載できるように申込書などの書類を電子化します。重要事項説明書は既存の書類をPDF化し「IT重説」を作成します。「IT重説」の説明は相手と会話しながら対応することになるので、ビデオ通話ツールなどを使って口頭で説明できるよう必要な機器を準備します。

業務ルールの設定は企業ごとに作り込む必要があります。賃貸契約書の内容を複数部署でチェックする場合、どの部署にどんな順番で行うのか。またファイル化された電子契約書のアクセス権とその範囲(アクセスできる社員の範囲)を決めておきます。また押印に代わり電子署名を採用します。

契約書類の電子化は相手がいることですので、紙ベースの契約方法を残しておくことも必要でしょう。通信環境の不具合など不測の事態に備えておきます。システム化によって顧客を失うのは本末転倒ですから、デジタルは決して万能ではないことを覚えておかなければなりません。

デジタル営業支援ツールの活用

売買物件は高額物件だけに、契約が成立するまで一定の時間を要します。一般に売買仲介では、問い合わせは購入の意思がある人が多いので成約率は高いといわれています。それだけに見込み客に対して長く接点を持つことが重要になってきます。こうした見込み客のことを追客(ついきゃく)と呼びますが、成約するまでの追客営業の支援をシステム化すれば、業務効率は向上するでしょう。

一方賃貸物件においては契約前、契約後ともに顧客の管理は重要な業務です。契約前には見込み客へのアプローチと問い合わせ対応、さらに内見などの業務が発生します。契約後は家賃管理、物件の維持管理も含めれば実に多種多様な業務が発生します。不動産業務は売買または賃貸(入居希望)の見込み客に対する営業アプローチから契約後の賃貸管理まで多種多様ですから、企業規模に応じてシステム化の範囲をあらかじめ決めて対応することが肝心です。

不動産の営業支援(顧客管理)システムは、「物件」「顧客」「契約」の3つの業務管理で構成されます。「契約」は前述しましたので、ここでは物件と顧客について考えます。まず、保有する不動産の物件を自社サイトに登録し、既存データを画像と共に取り込み不動産ポータルサイトと連動させます。次に各サイトからの反響を集計・分析し営業の現状を全体把握します。賃貸業向けでは最近、数多くの不動産ポータルサイトにおける自社物件の反響を一括して自動で取り込むクラウドサービスも登場しています。

しかしサイト管理だけで成約にこぎつける保証はありません。ビデオ通話ツールを使ったオンラインでの接客も検討します。画面上に物件の映像や資料を表示したうえで会話をやり取りすることで顧客との親近感が生まれ、成約率の向上に結び付く可能性があります。このツールは社内のビデオ会議としても運用できるので、導入する価値は高いと思われます。

SNSでの営業支援も重要です。近年はインターネットツールといえばスマートフォンが圧倒的です。パソコンのメールチェックはしなくてもLINEは開封するという人が増えており、顧客とのレスポンス(反応)を高めるにはLINEなどSNSとの連携は不可欠でしょう。SMS(ショートメッセージ)との連携も同様です。

スマートフォンを手放さない若い世代は、不動産業界にとって将来における大きな「追客」です。スマートフォンを介して必要なときにコミュニケーションをとることが可能です。自社の会員として登録してもらえば、「マイページ」に検索や過去に提案した物件の履歴などの情報が残ります。またチャットによる会話機能を導入すれば、迅速な返信や業務効率の改善にも繋がると思われます。

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