大和ハウス工業株式会社

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土地活用ラボ for Biz

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コラム No.20-5

PREコラム

「官民連携による地域活性化への取組を探る」(5)中小企業の取組が地域コミュニティを活性化させる

公開日:2017/04/28

POINT!

  • ・多彩なツアーでリピーターを獲得する旅行代理店
  • ・地域コミュニティーの空間を創造する建築家
  • ・女性目線のビジネスで高齢化に対応するミニスーパー

中小企業は、地域特有のニーズに細かく対応することで事業が成り立っていることが多く、その経済活動自体が地域コミュニティーの活性化に繋がっているように思えます。
大企業のCSR活動としての地域貢献はメディアでよく取り上げられますが、中小企業の取り組みに関しては、地域内では知られていても、全国に紹介されることが少ないのではないでしょうか。
そこで、これまで地域メディアなどに取り上げられた中小企業の取り組みの中から、思わず応援したくなるような事例を集めてご紹介します。そうすることで、中小企業が地域の活性化に果たしている役割を、多少なりとも実感していただけるかと思います。

若者の枠を超えたチャレンジ精神が新しい市場をつくる

大手旅行代理店とは一線を画し、地元への着地型、体験型、参加型ツアーを地元で企画し、地域コミュニティーとの交流を介して地域の活性化イベントなどを企画する青森県弘前市の「たびすけ」。いわゆる地域の名所旧跡を案内するだけではなく、リンゴ農家の作業を体験したり、地域特有のノウハウや地域の言い伝えを聞いたりと、地元ではさして珍しくもない日常的な暮らしを観光資源として発掘しています。
多様なツアーを提供することでリピーター(ファン)が増え、交流人口が増加すれば、ひいては移住・定住へと結びついていくのではないでしょうか。地方における人口減少への対応策のひとつかもしれません。

出雲市駅前の廃業した旅館を活用したゲストハウスを経営し、さらに、リビング代わりに隣接する商店街の空き店舗を活用して、宿泊客と地元住民とが集うコミュニティースペースを開設した島根県出雲市の「出雲ゲストハウスいとあん」。「場所を共有するだけではなく、年齢や職業を超えて住民同士の知恵をシェアすることで豊かになれる」。オーナーが神戸で暮らしたシェアハウスでの、そんな経験が経営に生きています。ここには、管理スタッフやアルバイトなどはいません。宿泊代や食事代を無料にする代わりに、店番や大工仕事などを手伝ってくれる人が何となく集まって来るそうです。「お金を頂いて商品やサービスを提供する」だけではなく、お互いに必要とする「物事」を提供し合う(シェアする)ことができる場所なのです。コミュニティーの原点は、そんなところにあるのでしょう。

「建築と地域の暮らしの融和」を追い求め、日向灘に面した小高い丘の上に「大きな屋根とガレージのある家」を建て、地域コミュニティーの空間を提供する宮崎県高鍋町の「Bridge the blue border」。建築家である創業者が、多様な人々が集うことで、自然な形で地域コミュニティーを醸成させることを目的としたレンタルハウス事業を始めました。下校時間に子どもたちが遊べる場。近所の農家が野菜を持ち寄る場。コーヒー好きが腕前を振るう場。アーティストやミュージシャンが出展・出演する場。この建物をステージにして、様々なイベントが繰り広げられ、そこに地域の人々が寄り集まることで、緩やかなコミュニティーが生まれ育っていくのです。この小さな地域活性化の取り組みコンセプトは、2015年度グッドデザイン賞を受賞しました。

女性目線のビジネス感覚は地域コミュニティーに幸せを運ぶ

両親の介護がきっかけで、実家の武家屋敷を改装し、手作り料理でもてなし、ゆったりした時間を満喫することで幸せを感じさせる鹿児島県日置市の「ひる膳多宝庵」。古民家を改装したお昼限定のこのレストランは、いつも満員です。子育てを終えた店主が、自分が行きたい店をイメージして作ったそうです。地元産の食材と食器を使い、何種類もの小鉢で供される食事は、年配の女性を中心に好評です。来客者は美味しい食事と落ち着いた建物空間の中で、何時間でもお喋りに興じて、都会では味わえない時間の流れを感じます。この地域には、小さな武家屋敷が点在し、このような古民家を再活用した店舗が各所に出現しており、地域の新しい産業資源として注目されています。

地域で唯一だったお店の閉店で地域住民の生活が不便になることを見かねて、たった一人でストアーを継承し営業を続け、地域の高齢者を見守っている高知県土佐清水市の「ゆみちゃんストア」。住民とのコミュニケーションを通じて地域のニーズを知り、季節ごとに地域で必要な商品を揃えています。また、高齢者宅への宅配サービスもこなします。無料だと高齢者の方々が遠慮するので、少量の宅配のみ有料にしたそうです。さらに、高齢者の方が注文しやすいようにと、店の電話番号を分かりやすく表示したプレートを配布、裏には「見守りカード」としてかかりつけ病院の連絡先や緊急連絡先が書けるように工夫されています。人口減少と高齢化の波は止められませんが、「ゆみちゃんストア」は“縁の下のミニスーパー”として地元に愛され、売上も上々だそうです。

ここで取り上げた事例は、ほんの一部に過ぎませんが、地域における中小企業の目線は、常に地域のニーズやシーズに向けられ、そして地域コミュニティーが中小企業を育てている様子がうかがえると思います。地域全体が新ビジネスを生み出す“ゆりかご”のようにも感じます。
少しだけ心が空腹になったら、地方へ行って地域の皆さんと話をしてみてください。きっと幸せな満腹感を味わうこと請け合いです。そして、これまで気付かなかった何かが発見できると思います。地方には、そういった資源がまだまだ豊富にあるのです。

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