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コラム No.20-7

PREコラム

「官民連携による地域活性化への取組を探る」(7)伝統工芸品のブランド化による地域再生プラン

公開日:2017/06/20

地域再生には、特徴ある文化や商品・サービスが必要なのは当然ですが、本質的には、その地域にある、長年独自の技術・技法を守っている伝統的な工芸品に着目すべきです。国や自治体も、様々な形で支援しています。
伝統的な工芸品と言っても、地域によって様々な伝統技術がありますので、ここでは経済産業大臣が「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づいて指定した工芸品(伝統的工芸品、または伝産品)や、地方自治体が指定した工芸品(伝統工芸品)を総称して「伝統工芸品」とします。
伝統工芸品とは、(1)日常生活で使用する工芸品で、(2)重要な工程が手作業であり、(3)概ね100年以上に渡って原材料や伝統的な技術・技法が継承されており、(4)事業者がある程度の規模を保って地域産業として成立していることとされており、平成29年1月現在で225品目が国の指定を受けています。これ以外にも、各地方自治体が指定した伝統工芸品を含めると、1200品目以上あると言われています。工芸品の分野としては、織物、染色品、陶磁器、漆器、木工品、竹工品、金工品、仏壇・仏具、和紙、文具(筆、墨、硯、そろばん等)、石工品、貴石細工、人形・こけし、郷土玩具、扇子、団扇、和傘、提灯、和楽器、神祇調度、慶弔用品、工芸用具、工芸材料などがあります。
日本各地に伝統工芸品がありますが、皆さんも感じているように、この伝統の灯が消えようとしている地域も少なくありません。

伝統工芸品を取り巻く環境

伝統的工芸品は、単なる美術品ではありません。日常生活のさまざまな場面で使用される“道具”であるからこそ、長年、産業として地域に根差し、技術や技法が伝承されてきました。したがって、当然、景気や大衆消費者の購買行動に左右されます。
経済産業省製造産業局伝統的工芸品産業室や(一財)伝統的工芸品産業振興協会の公表資料によれば、バブル経済期の1990年に5,000億円を超えていた伝統的工芸品の生産額は、2012年には約1,000億円と5分の1にまで落ち込み、企業数も半減の1,300事業者あまり、従業員に至っては7,000人を切っており、この傾向は現在も続いています。この数値から、年商1億円、従業員10人に満たない小規模事業者が懸命に伝統を守っている姿が想像されます。
バブル経済期以前においても、伝統的工芸品の産業規模は縮小傾向ではありました。その主な原因は、消費者の生活様式の変化、原材料の伝統的な技術・技法の担い手不足と高齢化、生産規模縮小による産業基盤の崩壊(道具や原材料の入手困難)などがあげられます。国や自治体も前述の「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」などによって補助金制度を整備するなど対応を進めているところですが、バブル経済期以降の急激な衰退傾向をみると、事業者単独では、なかなか回復が難しい状況ではないでしょうか。

海外で再認識される日本の伝統工芸品

バブル経済期を境に起こった急激な変化とは何でしょう。一つは、国内消費の冷え込み。もう一つは、為替の変動による輸入の拡大。そしてもう一つは、新興国の勃興による競争の激化にあると思います。伝統工芸品産業に限らず、ある事業者は廃業に追い込まれ、また、ある事業者は資本を統合したり、より需要のある商品の生産に業態を変えたりしました。伝統工芸品を継承してきた事業者の中にも、このような状況が起こったのではないでしょうか。
しかし、伝統工芸品産業が衰退している一番の要因は、我々日本人の生活様式の変化であると思います。半世紀前の日本の生活を考えると、ほとんどの家が畳敷きで、頑丈で重厚な箪笥や和式机があり、木製塗物のお盆や茶托、お椀などを使っていました。これらのほとんどが伝統工芸品だと考えると、現在の生活の中にどのくらい残っているでしょうか。その大部分は安価な合板や合成樹脂に機械塗装したものではありませんか。もっと深刻なことは、若い世代が伝統工芸品の価値に対して認識すら持たなくなるのではないかということです。
ところが最近、海外で、伝統工芸品がメイドインジャパンへの信頼感と細工の緻密さから、再認識されつつあります。轆轤木地挽物(ろくろきじひきもの)や樺細工の茶筒、南部鉄器の急須などが欧州で人気を博したり、漆塗の調度品がアジアで好調な売れ行きを見せたりしています。日本人が洋風なティーポッドで緑茶を入れて楽しんでいる時に、漆塗のテーブルを前に南部鉄瓶で紅茶を愛でている外国人の姿を想像すると、「やっぱり日本の伝統工芸品を絶やしてはいけない」という気持ちになるはずです。

現代の生活様式にあった商品づくりへの挑戦

伝統工芸品の産地の多くは、地域の名所や観光地に隣接しています。その昔、そこに集まる人々の日用品や調度品、お土産として供されることで、産業集積が進んだと考えられます。そのため、伝統工芸品の趨勢と地域の活性状況とは、表裏一体の関係になっていることが多いようです。そのことから、伝統工芸品を地域の名産品としてブランド化できれば、地域の活性化にも繋がる可能性があります。
最近、伝統工芸品を制作する事業者を訪ねると、若い後継者が案外と多いことに気づきます。先祖代々受け継がれてきた伝統的な技術や技法、それを守っている職人を見て育った彼らからは、一様に、職人をリスペクトし、伝統技術を後世に引き継ごうとの気持ちが強く伝わってきます。また、伝統技術を育んできた地域への愛着も強く感じます。
そんな若い経営者たちが取り組んでいるのは、伝統技術を使い現代の生活様式に溶け込む、デザイナーズ工芸品の制作です。さらに、ネット世代でもある彼らは、ネットによる広報や販売、市場ニーズへの柔軟な対応、国内外への販路の拡大など、新しいアプローチに挑戦しています。
しかし一方で、販売を拡大しようにも、手工品である以上、大量生産が難しいというジレンマもあるようです。そのため、一部の商品に漆の代わりにポリエチレン加工やオイル加工を採用して工程の短縮とコストの削減を図るなど、経営の維持と伝統の承継という課題に日々取り組んでいます。

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