土地活用に必須なデータの読み解き方 第1回 人口動態から賃貸住宅需要の読み解き方
公開日:2016/10/28
これから6回にわたり、土地活用に必要なデータを取り上げて、事例などを交えながら、データの読み解き方、使い方、収集方法などを解説していきます。
取り上げるすべてのデータは、一般公開されている(インターネットがあれば誰でも入手できる)ものです。本コラムの中では、それらを分析してグラフや表にしていますが、読者の方も興味があればアクセスして、その元データを見ることができます。
第一回目は、賃貸住宅における重要な指標である人口動態について考えます。賃貸住宅経営における最も重要な指標は世帯数です。報道などでもそうですが、住宅市場において人口減少の影響が大きいと思われていますが、より正確に言うと世帯数の動向が影響します。
まずは、47都道府県別の世帯数について考えてみましょう。
図1は、2015年を100として、2030年の世帯数を指数化したものです。
図1:都道府県別 2030年における世帯数比較(2015年=100)
出典:国立社会保障人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』
世帯数は、大都市ではしばらくの間増えていきます。しかし、2030年を過ぎたあたりから徐々に減少していきますが、2015年と2030年対比でも概ね100という状況です。
地方都市では、徐々に減少していきます。人口数ではマイナス15%を超える地域でも世帯数はそれよりも少ない減少幅という状況です。全国で見ると、2015年対2030年で96.8%、最も世帯数が帯びる沖縄県で107、2030年までに最も減る秋田県では86となっています。
次に、単独世帯に限った数字を見ていきましょう。単独世帯の動向は、賃貸住宅需要を予測する上でとても重要な指標となります。というのも、単独世帯(1人暮らし)の方の多くが賃貸住宅という実態があるからです。大都市では単独世帯の70%~75%、地方都市でも60%~65%の方が賃貸住宅に住んでいます。全国平均では約63%となっています。※1
※1…総務省統計局『H25年住宅・土地統計調査』より
図2:都道府県別 2030年における単独世帯数比較(2015年=100)
出典:国立社会保障人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』
2015年と2030年の対比でみると、全国平均は106で、47都道府県中46の都道府県で100を超えます。唯一高知県のみが97となっています。高齢化による夫婦の死別時期の違い、晩婚化、離婚数の増加などが要因とされています。この数字は、地方都市でも、賃貸需要が底堅いことを示していると言えるでしょう。
ちなみに、世帯数は4番目に多く伸びる東京ですが、すでに単独世帯が多いためか、2015年対2030年においては、102となっており35番目に位置しています。
最後に、ひとり親とこどもからなる世帯の数を見てみましょう。
図3:2030年におけるひとり親と子からなる世帯数比較(2015年=100)
出典:国立社会保障人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』
いわゆるシングルマザーや離婚数の増加の影響で、47都道府県中44の都道府県で100を超えます。全国では113、最も増えるのは東京都で対比では126、最も伸びが少ない秋田県でも97となっています。こちらも単独世帯と同様に賃貸住宅に暮らす方々が多いとされています。
これからの日本は人口減少社会が進展します。しかし、世帯数については減少が緩やかで、また賃貸住宅需要では大きな割合を占める単独世帯やひとり親とこどもからなる世帯は、ほとんどの都道府県で増加します。このようなことから、賃貸住宅需要のこれからを判断するといいでしょう。
世帯数は総務省が5年に1度調査する国勢調査を見るのが一般的ですが、都道府県・市町村も、たいてい月単位で発表していますので、賃貸住宅を建てる方はそれぞれのHPをご覧ください。また、今後の予測については、国立社会保障・人口問題研究所がデータを提供しています。