集合住宅リノベーションと税務効果-2
公開日:2018/02/28
1. リフォームの税務効果
リフォームの税務効果の概要は、「集合住宅 リノベーションと税務効果-1」で述べたように個人でも法人でも支払った金額や発生した借入金の利息は何らかの形で経費等になるということです。
では、個人の場合の具体例を見てみましょう。
「税務効果の検証例」
4世帯の賃貸住宅を1棟持っているケース
- ●家賃1室・・・・・6万円/月
- ●リフォーム代・・・150万円/1室
- ●リフォームをしたことで、1室あたりの家賃を0.5万円値上げできたと仮定。
「現状のまま」
所得計算
- 収入・・・6万円×12ヵ月×4世帯=288万円
- 経費・・・100万円(その他、金利、固定資産税等)
- 不動産所得=288万円-100万円=188万円
「リフォームをした場合の効果」
所得計算
- 収入・・・6.5万円×12ヵ月×4世帯=312万円
- 経費・・・100万円(その他、金利、固定資産税等)150万円×4室=600万円(リフォーム代)
合計 700万円 - 不動産所得=312万円-700万円=マイナス388万円
※ 収入は24万円増えても所得はマイナスとなります。マイナス分はその年の他の所得と損益通算ができます。
リフォーム代は修繕費として計上できるため、不動産所得が大きくマイナスとなり、他の所得の事業所得や給与所得と相殺することができます。
他の所得が大きく出る年などは、損益通算を行うことにより所得税の負担が少なくなる可能性があります。
2. リノベーションの税務効果
リノベーションについては、リフォームの場合とは取り扱いが少し変わります。
リフォームは、支払った金額が原則としてその年に一度に経費として計上できるのに対し、リノベーションの場合は支払った年に一度に計上することはできません。
これはリノベーションの性格によるもので、性質や品質及び機能の向上や間取りの変更といった内容のため、その支出の効果が数年にわたって表れるとの考えに基づいています。その結果税務上では、修繕費ではなく「資本的支出」として取り扱われ、減価償却の対象となります。
資本的支出となった場合は、支払った金額は原則としてその工事等を行った建物の耐用年数に応じて減価償却計算を行い各年通じて償却費を経費として計上します。
では、個人の場合の具体例を見てみましょう。
「現状のまま」...(1)のリフォームと同じ
所得計算
- 収入・・・6万円×12ヵ月×4世帯=288万円
- 経費・・・100万円(その他、金利、固定資産税等)
- 不動産所得=288万円-100万円=188万円
「リノベーションをした場合の効果」
所得計算
- 収入・・・8.5万円(※1)×12ヵ月×4世帯=408万円
- 経費・・・100万円(その他、金利、固定資産税等)、23.85万円(※2)×4室=95.4万円(減価償却費)
合計195.4万円 - 不動産所得=408万円-195.4万円=212.6万円
※1 リノベーションをしたことで、1室あたりの家賃が2.5万円値上げできたと仮定
※2 耐用年数19年のアパートの耐用年数に応じた1年間の減価償却費の額
3. 相続税の計算上の注意点
相続税の計算上、リノベーションをした部分の金額は、相続財産として評価対象となる可能性があります。建物の評価額は通常、固定資産税評価額となりますが、このリノベーション部分は固定資産税の評価額に考慮されないケースが大半です。
相続開始前に行うリノベーションについては、この点を考慮する必要がありますのでご注意ください。