企業の不動産投資とCRE戦略(1)
中小オーナー企業の不動産戦略 ~税の優遇について~
公開日:2019/06/28
オーナー企業と不動産
日本の大企業では近年、ファミリー企業は少なくなりましたが、欧米の大企業では、現在でも多く見られる企業経営のスタイルです。日本(特に地方都市の)では、中小企業の大半は同族を中心とした、いわゆるオーナー企業(ファミリー企業)です。
また、日本のファミリー企業で、一族(創業家)の名前を付ける例は、近年少なくなっていますが、海外企業では多く見られます。金融ではJPモルガン、ホテルチェーンのヒルトン、アパレルブランドの大半、外食チェーンのマクドナルド、P&G(Procter & Gamble)、、、そうそうたる企業の企業名は、創業者関連の名前になっています。ちなみに、Amazon(ベゾス)やfacebook(ザッカーバーグ)などは、自分の名前をつけていません。
さて、話を日本の中小オーナー企業にもどします。
中小オーナー企業の場合、その企業が事業に使っている不動産を経営者(あるいは経営者一族)が所有している例が多く見られます。また、企業が銀行などから資金調達する際、経営者の所有する(企業とは関係のない)不動産を担保にしたり、経営者が個人保証を付けたりする例が多く見られます。経営者の個人保証を付ければ、その借り入れは経営者個人の借り入れと同じということになります。
運転資金が必要な場合はしかたがないにせよ、新規事業を立ち上げるような事業融資の場合でも、銀行などの金融機関は、経営者に関与する担保、保証を求めることが一般的です。
このような状況下では、「企業の不動産=経営者の不動産」という図式になります。そのため、中小オーナー企業のCRE戦略においては、法人所有の不動産と経営者(個人)所有の不動産を区別して考える必要があります。
中小オーナー企業の事業承継と不動産
中小オーナー企業の事業承継において、個人の財産とともに現預金、企業として使っている店舗・工場といった事業用資産、また企業として投資購入している不動産などの資産や負債も相続の対象となります。
こうした相続財産は、企業として使っているものと個人として使っているもののいずれの場合でも、現金や株式等で保有するよりも不動産として保有する方が相続税も低くなる可能性が高くなります。
一般的に、不動産の相続税評価額は実際に取引される価格より20%~30%程度低くなることが一般的です(場所により異なります。特に都心や地方都市などではだいぶ異なります)。
また、賃貸住宅経営を行っている不動産であれば、建物は「貸家」、土地は「貸家建付地」として相続対象評価がなされ、相続税評価額が一段と下がります。
加えて、一定の条件を満たす不動産の相続では評価額を減額する「小規模宅地等の特例」が認められています。具体的には、大和ハウス工業が作成している冊子「土地活用BOOK 税金篇」をご参照ください。
この冊子を読めば、事業承継においてもオーナー企業が所有する土地の有効活用としての賃貸住宅経営が有効な手段であることがわかると思います。
中小オーナー企業の不動産戦略においては、税務の理解は不可欠といえます。大和ハウス工業の担当者、また専門の税理士等に相談し、適切な対応をとられるとよいでしょう。