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コラム vol.401
  • 不動産市況を読み解く

2022年貸家着工戸数のV字復調の状況、年計10%を超える増はあるのか?

公開日:2022/05/31

新築住宅着工件数は、2021年3月以降1年以上にわたり前年同月比プラスが続いています(執筆時:5月初旬。最新データは2022年3月分)。各カテゴリー別で見れば、貸家は同期間ずっとプラスとなっており(他はマイナスの月もあります)、貸家新築着工件数が全体の増加を牽引する形となっています。 このような状況は今後も続くのか、検証します。

移動年計で見る2020年以降の貸家着工戸数

図:貸家着工戸数の推移(移動年計)

国土交通省「住宅着工統計」のデータをもとに加工

図は、2020年1月からの貸家着工戸数(移動年計)の推移を示しています(注:移動年計とは、その月を含めて過去12カ月の合計のことです)。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、月を追うごとに移動年計が減少していき、2021年1月の移動年計(2020年2月~21年1月合計)が底となりました。その後、実際の月単位での貸家着工戸数がプラスに転じる3月からは、右肩上がりに増加していることが分かります。特に、2022年1月以降は、1月プラス約17%(前年同月比)、2月プラス約5%(同)、3月プラス約19%(同)と大きく増えています。このことは図1のグラフからも分かります。貸家着工戸数は、コロナ禍前の水準にはまだ少し届いていませんが、かなり回復している状況だと言えるでしょう。

貸家着工戸数増加の背景

貸家着工戸数が2021年3月以降前年同月比プラスになっていたのは、2020年の落ち込みからの反動増が主な理由です。この間前年同月比プラスの幅は、約1%(2021年11月)~約19%(2022年3月)で、貸家着工戸数の月別の実数では、唯一2022年3月が3万戸を超え、3万2000戸台となっています。
また、反動増に加えて、2022年に入り金利上昇可能性が高くなってきたことによる、「今のうちに」との思いからの「金利上昇前の駆け込み」があったことも要因だと思われます。さらに、消費者物価指数(CPI)の前年同月比が高くなってきており(5月6日公表の東京都区部分では、前年同月比プラス1.9%)、インフレ懸念が高まっていることから、「インフレ連動資産」として不動産を所有しようと考える方が増えていること、また、「インフレヘッジ」のために不動産賃料収入を得ようとしている方が増えていることも背景にあると考えられます。何度か、本サイトのコラムでもお伝えしましたが、特に住宅家賃は消費者物価の項目の一つであり、インフレに連動する(遅効性がありますが)ことが知られています。

2022年貸家着工戸数の見込み

それでは、2022年の貸家着工戸数の見込みについて検討してみましょう。
貸家着工戸数の年計は2019年が約34.2万戸、2020年は約30.6万戸、2021年は約32.1万戸と推移してきました。
大きく落ち込んだ2年を経て、2022年3月時点での移動年計は約33万戸まで回復してきました。2022年に入り1~3月の前年同月比の平均は約13%でしたので、このままの流れが続くとすれば、約36万戸にまで回復することになります。仮に年間合計10%を超える増加になるとすれば、消費増税前後(2014年)以来の大きな増加となります。

「さすがに10%を超える増加はないだろう」という声も聞こえてきます。その理由として、インフレがより鮮明になると、金利上昇の可能性が高まり、そうなれば今の勢いに水を差すことになり、ブレーキがかかるかもしれないという懸念です。しかし、2022年4月末の日銀金融政策決定会合で黒田総裁は、「金融緩和を止める状況にない」と明言し、「政策金利はしばらく上げない」と発言しました。
今後は、多少の借り入れ金利の上昇はあるかもしれませんが、米国のような急激な上昇は考えられませんから、少なくとも2022年は超低金利が続くものと思われます。

このような状況から考えると、2022年の貸家着工戸数は少なくとも35万戸前後(プラス10%)まで回復すると考えられます。

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