大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

メニュー
コラム vol.408
  • 不動産市況を読み解く

いよいよ概要が見えた不動産IDのルールについて

公開日:2022/06/30

POINT!

・「不動産ID」とは、不動産登記番号(13ケタ)に特定コード(4ケタ)を足した、計17ケタの番号

・ルールの検討において、個人情報保護法との関係を整理することが課題となっている

・不動産IDにはさまざまなメリットがあり、広く浸透すればより発展的な利用が期待できる

我が国の不動産については、土地・建物いずれも、共通で用いられる番号や記号(=ID)が存在せず、利用者の住所・地番の表記ゆれなどが起こると、土地や建物を明確に指定できない場合もありました。不動産関連情報の連携・貯蓄・活用という観点からすれば、大きな課題でした。
2021年にはデジタル関連改革法が制定され、現在官民あげて様々なデジタル化の取り組みが進められています。このような背景から、国土交通省を主体として検討されているのが、不動産にIDを付与して運用するルール作りです。

不動産IDルール検討会

この不動産IDのルール検討会は、2021年9月24日に第1回が開催され、その後第2回目は同年11月10日、第3回目が2022年1月28日、第4回目同年3月17日とこれまで4回行われ、3月24日にここまでの「中間とりまとめ」を発表、そして2022年3月末日に「不動産ID」のガイドラインが公表されました。このガイドラインを元にさらに議論を行い、施行されることになります。ここからは、「中間とりまとめ」の内容を解説しつつ、今後の展開を考察します。

不動産IDの概要

不動産を一意に(=同一であること)特定することができることを目的とする「不動産ID」は、すでに存在している不動産登記簿の不動産登記番号(13ケタ)を基礎として構成され、それに特定コード(4ケタ)を付け足し、計17ケタの番号を不動産IDとして使用することになります。これまでの不動産番号だけで対象を特定できる場合(例えば、土地、戸建、区分所有建物の専有部など)は、4ケタの特定コードを0000とし、特定できなかった対象(例えば賃貸住宅の各部屋やオフィスの各フロア)は、新たにルールを作ることで対象が明確となります。

新たなルールの概要は、以下のとおりです。

商業用(オフィス・店舗など)のフロアごと 不動産番号(13ケタ)+階層コード(2ケタ)+階数(2ケタ)
居住用非区分マンション(賃貸住宅など)の部屋ごと 不動産番号(13ケタ)+階層コード(2ケタ)+階数(2ケタ)
例えば、203号室ならば、不動産番号+0203
区分所有建物全体 不動産番号(13ケタ)+建物を表す符号(4ケタ)
区分所有建物部屋ごと 不動産番号(13ケタ)+建物を表す符号(4ケタ)

詳細のすべてをここでは記載しませんが、既存の建物や部屋、オフィスや店舗の区画の現状を踏まえ、細かいルールが決められています。ただし、正確に入力・登録されないと「一意に対象を特定する」という大義に至らないため、ルールは入力する者に分かりやすいルールを目指しています。
また、不動産IDは、それ単体では所有者や利用者の個人(法人)を特定することはできないものの、不動産登記簿との連携から特定することが不可能ではないため、とくに個人情報保護法との関係を整理することが、この先の検討課題に挙げられています。

不動産ID運用スタートで期待できること

中間とりまとめ資料によれば、不動産IDを利用するメリットとして以下の9つがあげられています。

  • (1)自社データベース内や、自社データベースと外部から取得したデータの連携の際の、物件情報の名寄せ・紐付けが容易化
  • (2)不動産情報サイトにおける、同一物件であることが分かりにくい形の重複掲載、おとり物件の排除
  • (3)過去の取引時データの再利用による各種入力負担軽減
  • (4)成約価格の推移の把握による価格査定の精度向上
  • (5)住宅履歴情報との連携によるリフォーム履歴等の把握
  • (6)電気・ガス・水道等の生活インフラ情報に関する、事業者間や自治体等との情報提供・交換の効率化および各種情報の統合管理
  • (7)(行政の保有するデータへの紐付けが行われた場合)行政保有情報の照会の容易化・効率化
  • (8)(最新の都市計画・ハザードマップ情報等がオープンデータ化され、公的図面として扱われるような環境が整備された場合)都市計画情報・ハザードマップ等との連携による、調査負担の軽減や重要事項説明書の作成負担等の軽減
  • (9)高精度のAI査定など、多様なエリア情報等のビッグデータの活用による新たな不動産関連サービスの創出

以上9つは、ルール施行後早期に期待できる事ですが、不動産IDが広く浸透すれば、もっと発展的なことに利用できそうです。

今後の展開

不動産IDのルール施行には、もう少し時間がかかるようですが、「不動産IDルールのガイドライン」ができたことで、大枠が決まりました。この先、各省庁間の調整、周辺法律との関係整理、また議論を重ねていく中で出てくる課題を揉みながら、施行に向かうものと思われます。期待して待ちたいと思います。
不動産IDルールのガイドラインの全体を知りたい方は、以下の資料をご覧ください。

「不動産 ID ルールガイドライン」(令和4年3月31日 国土交通省 不動産・建設経済局)

メルマガ
会員登録

注目
ランキング

注目ランキング