2050年の人口動態と賃貸住宅需要について
公開日:2022/10/31
POINT!
・2050年の日本は、増加する高齢者に対して、15歳未満の若年層の増加は見込まれず、人口構成は逆ピラミッド型になる
・高齢者人口は東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏で顕著に増加。これら地域では、住む場所の変化、住居のあり方にも変化が見られる
・住居のあり方、住宅のニーズは、世帯類型の変化に左右されるため、先を見越した需要をしっかりと認識して、賃貸住宅経営を行うことが重要
人口動態や世帯動態の今後の展望については、「土地活用ラボ」内で幾度かお伝えしてきました。ここでは、もう少しスパンを長くとって2050年に向けての人口動態と賃貸住宅について考えてみたいと思います。
超高齢化社会の2050年の日本
日本の人口は2008年の12808万人をピークに減少を続けています。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2017年推計)」によれば、2050年の我が国の人口は1億192万になると推計されています。この約1億人という人口は1970年とほぼ同数(1970年=1億372万人)ですが、年齢構成は大きく異なるようです。
総務省統計局によれば、2020年時点の65歳以上の高齢者は28.8%(3618万人)でした。さかのぼって高度成長期の1970年時は、高齢者人口は7.1%(733万人)でしたが、2050年には37.7%(3841万人)となる見込みです(「日本の将来推計人口」による)。ちなみに、2050年の平均寿命は男性84.02歳、女性90.40歳と、現在よりも3歳程度伸びると推計されています。
また、2050年の日本は、増加する高齢者に対して、15歳未満の若年層の増加は見込まれず、約1割(10.6%)の構成となる見込みです。このため人口のボリュームゾーンは65歳以上、人口構成は逆ピラミッド型になります。1970年と比較すると、かなり異なる人口ピラミッドになりそうです。
図:年代別人口数
1970年分は総務省(国勢調査)、2050年分は国立社会保障・人口問題研究所(平成29 年推計)より作成
全国の出生率は、2005年以降多少波はありますが少しずつ上昇して、近年は1.4前後で推移しており、仮にもう少し上昇すれば、少子高齢化の進行は遅らせることができるでしょう。
高齢者が増加する地域と住まい方の変化
それでは、高齢者人口が増加するのはどのエリアでしょうか?
我が国では1960年代から高度経済成長期に都市化が進み、地方から都市部への人口流入が増え、その傾向は80年代まで続きました。この頃の労働者世代(若者世代)は、すでに高齢者層となっています。こうした背景から、高齢者人口は他地域に比べ三大都市圏で顕著に増加します。これら地域では、住む場所の変化が起きています。郊外から利便性の高い中心部へ移動、車中心移動地域から公共交通機関移動中心地域への移動が進んでいます。
また住む場所の変化に伴い、住居のあり方にも変化が見られます。一般的に2階建てで階段移動のある戸建住宅から平面移動の集合住宅(賃貸住宅や分譲マンション)への転居は、すでに表れている傾向です。これは、賃貸住宅需要の下支え要因のひとつといえるでしょう。また、高度経済成長期に建設された大規模ニュータウンの中には、急激な高齢化と人口減少に直面しているところも少なくないようです。
この移動傾向が続けば、国土交通省国土政策局の推計(平成27年国勢調査に基づく平成30年推計)によれば、2050年までに全国全市区町村558のうち、約3割が2015年人口比で人口半数未満となることが予測されています。
世帯類型の変化
国立社会保障・人口問題研究所による世帯数の将来推計は現在のところ2040年までしか公表されていませんが、これによれば、2040年の世帯類型は現在も見られる兆候がより顕著となるようです。
具体的には(ここでは、2015年国勢調査に基づく同研究所の2018年時点推計)、2015年時点で26.9%を占めていた「夫婦と子どもから成る世帯」は大きく減少し、2040年には23.3%になります。その一方で、34.6%だった単独世帯は39.3%にまで増えます。特に高齢者単独世帯は2015年の11.2%から2040年には17.7%にまで増加します。逆に、高齢者を除く一人暮らし世帯は少し減少します。2040年の我が国では、一人暮らしの高齢者が多く見られるようになるでしょう。
ちなみに、夫婦二人暮らし世帯は1072万世帯(20.1%)から1071万世帯(21.1%)とそれほど大きな変化はありません。
求められる住宅の変化
単独世帯の多くは賃貸住宅に住むことが知られています。都市部では約70%、地方でも約60%弱、全国では65%弱の単独世帯が賃貸住宅に暮らしています。
単身で住む高齢者の方は、日々の生活のことを考えて、シニア向け賃貸住宅に住む方も多く、今後もますますシニア向け賃貸住宅のニーズは高まると思われます。
また、昨今の持ち家志向の低下や住居のあり方の変化を考えると、賃貸住宅需要は根強いものと思われます。
住居のあり方、住宅のニーズは、世帯類型の変化に左右されます。先を見越した需要をしっかりと認識して、賃貸住宅経営を行ってください。