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コラム vol.458
  • 土地活用税務コラム

争族ではなく爽続・創続に

公開日:2023/08/31

パートナー選びはとても重要

不動産をどう活用するか。いろいろな方策がある中で、私は専門家に相談し、お願いすべきだと考えています。一番多くの情報を持っているのはやはり専門家です。私たち税理士には、入口の段階でお客様からの情報が入ってきますが、実際の不動産活用の部分においては専門家に依頼しています。もちろん、どのような活用方法にするか、どのパートナーにお願いするかを最終的に決定するのはお客様ですが、税理士の立場でのパートナー選びは非常に重要です。過去の事例や条件がまったく同じという不動産はありません。よってそれぞれのケースにふさわしい提案ができるパートナーを選ぶ必要があります。ハウスメーカーや建設会社はさまざまです。不利益になるような提案を行う会社からお客様を護ることも、私たちが行うべき資産防衛業務のひとつです。
コストに対しても注意が必要です。初期費用だけを考え、建設費用の安いパートナーを選ぶ方もいらっしゃいますが、何年か経過すると品質に問題が発生し、予想以上に修繕費用がかかり、最終的にはむしろコスト高になってしまうケースは少なくありません。信頼できる会社であれば、たとえ初期費用が高くても、品質の高さやサポート、フォローを考慮すれば、結果的にコストパフォーマンスがよくなります。ご入居者の立場から見ても、建物の品質が良ければ住み続けたい、と思うでしょう。
また、同じような立地であれば、建物のブランド力で入居状況は変わってきます。「どこで建てるか」が大きなポイントとなります。グループ会社内に管理会社やリフォーム会社があれば、市場データや過去の実績等を参考にしながら臨機応変な対応が可能となります。後のフォローまで含めた長いお付き合いもできるでしょう。支援する者としては、このような総合力が高く、ブランド力をもつ会社と連携を図ることが重要となります。

NPO法人 相続支援協会を設立

私たち会計事務所だけで、すべての問題を解決することはできません。そこで、相続でお困りの方々のために、「NPO法人相続支援協会」を立ち上げました。相続で悩む方が気軽に専門家に相談できるよう、茨城県内の弁護士、税理士、司法書士、行政書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士など、相続に関係する専門家とのネットワークを構築しました。さまざまな専門家と連携し、専門分野以外はその道の専門家に依頼したほうが安心です。餅は餅屋です。相談者からは、ワンストップで専門家に相談できる、と大変お喜びいただいております。
特に相続財産に不動産が多く含まれる場合には、さまざまな専門家が必要になります。今後、相続を控えている土地オーナーの方は、公正・中立な立場の専門家の意見を聞いたうえで課題の解決を図ることをお勧めします。ここ数年、セカンドオピニオンとして税理士の立場でアドバイスを求められることが増えてきました。計画の内容を解説したり、あまりにも楽観的な計画に対してはリスクを指摘したりします。また入口から一緒に計画を作成することもあります。相続対策という観点から相続税の試算を行い、そして一番大切な「争族」回避のためにどのような対策を打つべきかを一緒に考えます。これによりお客様の理解が深まり納得感が高まります。

賃貸住宅を建てるだけでは相続税対策にならない

相続税対策で賃貸住宅の建設を検討されている方も多いと思いますが、その際、「賃貸割合」に十分気をつけなければなりません。貸家建付地の相続では、賃貸割合によって相続税が軽減される割合が変わります。満室であれば問題ありませんが、入居者が少ないと賃貸割合は下がります。よって土地の評価が下がらないので相続税対策にはならないのです。
以前、繁華街に賃貸住宅を建てた方が亡くなり、相続人である娘さんから相続税申告の依頼を受けました。亡くなったお父様が相続税対策のために賃貸住宅を建て、当初は満室でしたが、相続時点で入居者はゼロでした。建てた時には賃貸割合の計算はなく、賃貸住宅を建てれば評価の引下げになりました。しかしその後、賃貸割合が定められたため、相続時点での賃貸割合は0%。結果的に土地の評価額は下がらず相続税対策にはなりませんでした。このように相続税対策として建てたにもかかわらず、入居率が悪ければ対策効果は薄れてしまいます。建てた後に満室経営を続ける必要があるのです。

争族ではなく爽族・創族に

相続において、税金は一回きりのことですが、人のご縁は一生です。相続をきっかけに、兄弟喧嘩や親子喧嘩になってしまうのは不幸です。相続対策には二つの対策があります。まずは、家族が争ってしまう「争族」を回避するために揉めない対策を、次に税金を納めるための対策が必要となります。
相続対策では、「争族」になるかもしれないという危機感を持ちながら、爽やかな相続の「爽族」、新たな価値を創造する相続の「創族」を目指します。危機感ばかりでは気が滅入ってしまうので、幸せな未来を考えることが大切です。皆が幸せになるためには、土地の処分や社会経済の変化に沿った活用法を検討する必要があります。将来に思いを馳せると多くの課題が見えてきます。
関与先様の最も身近な相談相手である私たちには、関与先様と一緒に考え、実現に向けた伴走支援がますます求められるでしょう。人が亡くなって爽やかになることはありませんが、それをきっかけに家族間の絆が深まり、新たな価値が作られる。そんな「爽族」と「創族」の実現支援を心がけたいと思います。

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