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コラム vol.472-5
  • 土地活用税務コラム

相続税・贈与税の基本(5)小規模宅地等の特例の活用条件と注意すべきポイント

公開日:2024/02/29

被相続人の所有土地の評価額から最大400m2について80%(貸付事業用宅地は50%)評価減される相続税の「小規模宅地等の特例」という制度があります。居住用だけではなく、事業用の土地にも適用され、非常に大きな評価減の制度ですから、積極的に活用したいものです。

特例の適用面積

特定居住用宅地等については330m2を上限に、その評価額の80%が減額されます。賃貸事業に供されている貸付事業用宅地等については200m2を上限に、その評価額の50%が減額されます。これらを「小規模宅地等の特例」といいます。
小規模宅地等の特例が適用される宅地は4つに分類され、特定居住用宅地等は個人の住居の敷地に対するもの、特定事業用宅地等は個人事業の敷地に対するもの、特定同族会社事業用宅地等は会社の事業敷地に対するもの、貸付事業用宅地等は貸付事業に供している敷地に対するものです。

表1:小規模宅地等の特例(用途別)

  限度面積 減額割合
居住用 特定居住用宅地等 330m2 80%
事業用 特定事業用宅地等 400m2 80%
特定同族会社事業用宅地等 400m2 80%
貸付事業用宅地等 200m2 50%

小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用した場合としない場合の比較

ここで、小規模宅地等の特例を適用した場合としない場合を比較してみましょう。
次の例のように、被相続人の財産総額2億円(自宅敷地を含む)、配偶者が先に死亡しており子である相続人が2人、自宅が330m2で評価額1億円の敷地を同居していた相続人が相続で取得した場合の相続税額は、小規模宅地等の特例を適用すると、1,160万円になります。
ところが、相続人が誰も被相続人と同居しておらず、自己所有のマンションに居住していた相続人が取得した場合には、特定居住用宅地等の適用対象にならず、相続税額はなんと3,340万円にもなります。
小規模宅地等の特例の適用を受けることができるか否かで大変な相続税負担の差になるわけです。この場合、相続人が相続開始までにマンションを売却し、被相続人と同居し、相続税の申告期限まで居住を継続していれば特例を適用できることになります。

図1:小規模宅地等の特例の適用がある場合

図2:小規模宅地等の特例の適用がない場合

小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)において注意すべきポイント

配偶者の特例適用の有利不利

被相続人が居住していた家屋の敷地を配偶者が相続した場合には、原則として相続税の申告期限までにその敷地を譲渡しても、居住の用に供さなくとも特定居住用宅地等となり、特例の適用ができます。
配偶者については、法定相続分又は1億6,000万円のいずれか多いほうまで相続税がかかりません。
よって、2次相続税のことを考えると配偶者は小規模宅地等の特例を受けない方がよい場合もあります。

同居していない相続人等が小規模宅地等の特例の適用を受けるには

相続人が被相続人と同居している例が少なくなってきています。同居していない相続人等が小規模宅地等の特例の適用を受けるには、被相続人の配偶者がすでにおらず、被相続人が一人暮らしをしていた場合に限られ、かつ、自己又はその配偶者、その者の3親等内の親族、一定の法人が所有する自宅に住んでいないことが条件です。 結局のところ、子が小規模宅地等の特例の適用を受けるには、同居するか、配偶者がすでにおらず被相続人が一人暮らしをしており、子が3年以上借家に住んでいるか、生計一で被相続人所有宅地の上の家に住んでいることが必要です。
同居していない相続人等が小規模宅地等の特例の適用を受けるには、これらの条件を満たすように対応するか、配偶者が相続して2次相続対策を別途考える必要があります。

敷地が660m2以上ある場合、1次相続・2次相続で適用を受けることが可能

敷地が660m2以上ある場合に、1次相続で2分の1ずつ配偶者と同居の相続人とが相続したとします。小規模宅地等の特例を配偶者は適用せず、同居の相続人が特例の適用を受けます。その後、2次相続で同居の相続人が配偶者から取得した2分の1の敷地部分について、特例の適用を受ければ全体の敷地で減額を受けることができます。

図3:1次相続・2次相続の小規模宅地等の特例

特定事業用等宅地等の適用

特定事業用等宅地等として400m2まで80%減額される対象は、被相続人の事業用又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業用の宅地等と特定同族会社の事業用の宅地等がありますが、次のような条件があります。

  • ・被相続人がその宅地等の上で営んでいた事業について、相続税の申告期限までにその事業を継承し、かつ、その申告期限までその事業を営んでいるという事業承継要件を満たさなければなりません。もちろん、相続した宅地等を相続税の申告期限まで保有し続ける保有継続要件を満たすことも必要です。
  • ・被相続人が所有していた宅地等の上で、被相続人と生計をひとつにしていた親族が事業を行っていた場合には、その親族が相続開始前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営み、相続したその宅地等を相続税の申告期限まで保有していれば特定事業用宅地等として特例適用対象となります。

表2:特定事業用宅地等の要件

区分 特例の適用要件
被相続人の事業の用に供されていた宅地等 事業承継要件 その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等 事業継続要件 相続開始前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

事業のうち、以下のものは貸付事業用宅地等(50%減額)の対象となりますが、特定事業用宅地等(80%減額)の対象にはなりません。

  • ・建物などの賃貸事業(事業的規模でない場合も含む)
  • ・駐車場業
  • ・自転車駐車場業

貸付事業用宅地等の適用要件

被相続人又は被相続人と生計がひとつの親族の貸付事業の用に供されていた宅地等を相続等により取得し、一定の条件を満たした場合には、貸付事業用宅地等として200m2まで50%減額されます。
その際の条件は以下のとおりです。

  • ・被相続人の親族が、相続開始時から相続税の申告期限までの間にその宅地等にかかる被相続人の貸付事業を継承し、その貸付事業を承継した親族が、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その貸付事業の用に供している場合
  • ・被相続人と生計を一にする親族が、被相続人から相続又は遺贈により貸付事業用宅地等を取得し、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供し、かつ、所有している場合

小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)において注意すべきポイント

相続開始前3年以内に貸付けを開始した宅地等については、小規模宅地等の特例の対象から除外されます。ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模の貸付事業を行っている者がその貸付事業の用に供しているものは、特例を適用することができます。

図4

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