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コラム vol.501
  • 不動産市況を読み解く

2024年4月からスタート。「相続登記義務化」と「省エネ性能ラベル表示」

公開日:2024/04/26

毎年のように不動産関連の制度が施行されますが、2024年4月からも「土地活用」に関連するいくつかの制度が始まります。その中でも「義務化」あるいは「努力義務化」されることについては、知っておきたいものです。ここでは、2024年4月1日から始動する「相続登記の義務化」と「省エネ性能ラベル表示」について解説します。

相続登記義務化

2024年(令和6年)4月1日より「相続登記」が義務化されました。所轄省庁である法務省によれば、義務化の内容は以下のようになります。
不動産を取得した相続人は、相続により不動産(土地・建物)を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請することが義務となります。正当な理由がなくこれを怠ると(登記漏れの場合)と、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。また、遺産分割協議の成立(相続人の間での話し合い)により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないことになります。例えば「亡くなった父親が不動産を所有していたことを知らなかった」場合等では、「知った日から」3年以内にすればよいということになります。

この制度によって、所有者不明土地が増える大きな要因とされていた「相続時未登記」に対して、登記を義務化することで改善が見込まれています。順調に進めば、不動産流通(民間取引)や公的整備(公共工事など)の妨げになっていた問題解決の一助になりそうです。

施行以前の相続も対象に

この義務化は2024年4月1日から施行されましたが、4月1日より前に相続した不動産についても、相続登記がされていないものは、義務化の対象となりますので注意してください。施行以前の相続登記がされていない不動産については、3年の猶予が与えられ27年3月31日までに相続登記する必要がありますが、これを過ぎれば上記と同様に過料が課せられる可能性があります。

難易度の高い相続の場合

併せて「相続人申告登記制度」が創設されます。これは、大規模な相続や、遺産分割協議がまとまらないような「難易度の高い」相続の場合、協議がまとまっていなくても、この制度を利用すれば、相続登記の義務を果たしたとみなす制度です。ただし、あくまで一時的に「所有者不明土地」を防ぐための制度で、権利関係を示す(登記する)ものではありませんので、最終的(協議がまとまれば)には、遺産分割が成立した時から3年以内に相続登記を行う必要があります。

なぜ相続登記の義務化が必要なのか

所有者不明土地は、「不動産流通の妨げや、公共工事の際の土地収用などがスムーズにいかない」など、以前から大きな問題とされてきました。「登記簿では所有者が分からない土地」や全体の約2割(国土交通省平成28年調査)で、そのうちの3分の2が「相続時の所有権移転登記がされていないこと」が原因となっていたようです。移転登記がされないままだと、登記簿上は亡くなった人が所有者ということになります。また、そのまま2代3代と放置が続けば相続人は膨大な数となり、例えば、その場所に道路が通ることになれば、収用時に大変な労力となります。
相続未登記状態は地方都市だけでなく都市部でも見られます。こうした「相続起因による所有者不明土地」は、何度かの相続により相続人が多数になっていることや、相続人間の関係が希薄になっていること、また相続人の一部の所在が相続人の中でも不明となっていることなどが背景にあるようです。こうした問題の解決のために、国土交通省や法務省など複数の関係省庁、地方自治体が対応策に乗り出しており、そのひとつが、「相続登記の義務化」ということです。

相続登記義務化で変わる土地活用

相続登記の義務化により、土地活用においても変化がありそうです。都市部においては、相続した不動産を利活用するか、売却して現金化する人が大半です。しかし、子息が都市部におり、相続する不動産が地方の場合は、そのまま放置されている例もあるようです。義務化されると「相続人が使用しない場合」は、「放置」という選択肢がなくなりますし、登記だけをしても登録免許税や固定資産税がかかるだけですから、「何とかしよう」という意思が働くようになるかもしれません。そうなれば、地方においても、有効な「土地活用」を行うことを検討する人が増える可能性があります。

省エネ性能表示制度

2024年4月から「住宅性能表示制度」がスタートします。これにより、4月1日以降に建築確認が降下した賃貸住宅において、入居者募集の際に「省エネ性能ラベル」を表示することが、事業者の努力義務となります。
下図は、ラベルのイメージサンプルです。(国土交通省ホームページより) ラベルには、エネルギー消費性能と断熱性能が★マークや数字で表示されます。建物の種類(住宅(住戸/住棟)、非住宅、複合建築物)および、評価方法(自己評価、第三者評価)、再エネ設備のあり/なし、によりラベルの種類が異なるようです。

図:ラベルの種類

引用元:国土交通省
※住戸ラベルの目安光熱費の表示のあり・なしは、自己評価・第三者評価いずれの場合も選択可能です。

省エネ性能表示の目的

住宅性能表示制度は、販売・賃貸事業者が建築物の省エネ性能を広告等に表示することで、消費者等が建築物を購入・賃借する際に、省エネ性能の把握や比較ができるようにする制度です。
この制度は、国土交通省によれば、「住まいやオフィス等の買い手・借り手の省エネ性能への関心を高めることで、省エネ性能が高い住宅・建築物の供給が促進される市場づくり」が目的とのことです。
これにより、2024年4月以降、事業者は新築建築物の販売・賃貸の広告等において、省エネ性能の表示ラベルを表示することが必要となります。

  • ※紙面広告については、ラベルを掲載するスペースの制約がある場合(A4サイズ相当以下)は、必ずしもラベルを掲載する必要はありません。

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