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コラム vol.539
  • 日本社会のこれから

「土地基本方針」の変更を閣議決定サステナブルな土地の利用及び管理の実現へ

公開日:2025/02/28

土地基本法に基づく「土地基本方針」について、国土審議会(土地政策分科会企画部会)で議論を重ね、令和6年(2024年)6月に、新たな施策等を盛り込んだ変更が閣議決定されました。土地基本方針とは、国が土地の使い方や管理、取引の方針を決めるためのルールで、関係する省庁が協力して時代の変化に対応できるように、土地に関する政策の方向性がまとめられたものです。

現在、日本では人口減少や少子高齢化が進み、世帯数が減少しています。地方では過疎化が進む一方で、東京など都市部への人口集中が続き、地域による人口の偏りが深刻化しています。働き方や住まいの選択が多様化に加え、DXやGX(グリーンランスフォーメーション)の進展等によって、社会や経済の構造が大きく変わろうとしています。
また、気候変動の影響による異常気象の増加、豪雨や猛暑、台風、地震などの自然災害がより深刻化・頻発化しており、安全で持続可能な社会の構築に向けた防災・減災対策の強化が急務となっています。
こうした現状を踏まえて、新しい方針では、これまでの宅地化を前提とした政策から軸足を移し、「サステナブルな土地の利用・管理」の実現を全体目標としました。この方針により、限られた土地を地域の実情に応じて利用転換し、それを適正管理、円滑な不動産流通・取引の確保を図るため、既存施策の拡充や新たな施策が導入されることになります。
ここでは、「土地基本方針」(国土交通省)の中から、空き家や空き地、未利用地の問題の解決や、地域の土地を有効活用するための、「土地の利用・管理」に関する方針の一部を紹介します。

(1)低未利用土地、所有者不明土地等への対応に関する措置

空き地や空き家が増え、その管理が不十分になっていることで、災害も含めた地域への悪影響が深刻な問題となっています。空き地・空き家の発生を抑え、管理不全による悪影響を防ぐとともに、土地の適切な活用や需要とのマッチングが求められています。

  • ・国、地方公共団体、民間事業者、NPOなどが協力し、非宅地化を含む土地利用の転換と継続的な管理の仕組みを構築する。
  • ・空き店舗や低未利用地の活用に当たっては、店舗立地の新陳代謝を促進し、消費者のニーズにあったサービスの提供につなげる観点から、不動産の所有と利用の分離、リノベーションやマッチングへの支援等を推進する。
  • ・低未利用土地への投資の活性化のために、不動産特定共同事業の活用促進、同事業に係る税制特例措置、セキュリティトークン(デジタル証券)やクラウドファンディングに対応した環境整備等を通じて、低未利用の土地・不動産の取引・利用を促進する。クラウドファンディングなどの「志ある資金」等を活用し、地域の土地・不動産を再生する事業に対する円滑な資金調達を促進する。
  • ・空家法に基づいて、市区町村による特定空家や管理不全空家への指導・勧告の実施、除却等を支援する。
  • ・所有者不明土地対策と空き家対策について、対策計画の一体的作成や相談窓口の一元化を行う。
  • ・所有者不明土地の公共的利用や、不動産登記簿の表題部所有者欄が正常に記録されていない登記の解消を推進する。

(2)土地の状況に応じた土地の有効利用及び適正管理に関する措置

土地利用の在り方は、災害時の被害軽減や、気候変動・資源循環・安全保障にも影響を及ぼします。これらの課題解決に貢献する土地の利用・管理を計画的に進めるための措置が検討されました。

  • ・水災害リスクの高い地域への居住を避けるため、「多段階の浸水想定図」や「水害リスクマップ」を作成し、浸水範囲や深さを明確化。さらに、洪水・内水・高潮の浸水想定区域や浸水被害防止区域の指定を推進。
  • ・災害リスクの高いエリアの新規立地を抑え、移転を促進。災害発生に備えた平時からの復興事前準備の必要性を自治体に周知し、地震や津波を含む大規模災害を想定した事前復興まちづくり計画の策定等を促進する。
  • ・環境との共生を志向する土地の利用及び管理施策として、環境保全や持続可能なまちづくりを推進し、グリーンインフラを導入。低未利用土地の活用、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の支援を強化する。
  • ・工場跡地、廃墟等相当期間未利用となっている土地について、新たな産業等の用地への有効利用や管理不全防止等を図る観点から、長期的な視点に立った対応を検討する。
  • ・重要施設等の機能を守るため、注視区域及び特別注視区域における土地利用状況等の調査を着実に実施する。

(3)地域の特性に応じた適正な土地の利用及び管理に関する措置

都市地域、農業地域、森林地域等の地域区分ごとに、人口や産業等の将来予測、社会経済活動の動向を反映した計画を策定し、適正な土地利用・管理を行うための誘導・規制の計画的な実施が方針として示されました。

  • ・都市再生を進め、オフィスや宿泊施設の高度利用を促進するとともに、歩きやすい都市空間やエリアマネジメントを強化。「まちづくりGX」による都市緑地やエネルギーの面的利用、生産緑地制度や市民緑地認定制度等の活用をさらに推進する。
  • ・区分所有法制の見直しを進める。
  • ・適切な土壌汚染対策として、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染に関する調査等を推進する。
  • ・食料の安定供給を確保するため、農用地の面積目標の達成に向けて措置を強化。農地中間管理機構を活用した担い手への農地集積・集約化を進める。
  • ・地方都市における産業の立地を促進するため、第六次国土利用計画(全国計画)における令和15年までに工業用地を1万ha増加させるという目標設定も踏まえ、土地の利用転換の迅速化を図る。
  • ・地方公共団体が所有・取得する空き家等の身近な遊休不動産(廃校等の現在使われていない施設、住民から寄付を受けた古民家等)について、民間の創意工夫を最大限に生かした小規模なPPP/PFI事業を行うことにより、地域課題の解決やエリア価値の向上につなげるスモールコンセッションの推進を図る。

国の発展には、貴重な土地の有効活用が欠かせません。これらの方針を受けた施策が効率的に実行され、1日でも早い効果をもたらすことができるように、官民連携した取り組みが求められています。

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