and.y100号を振り返って
あなたと描くリブスタイルデザイン情報誌「and.y〈アンディ〉」は、2023年3月発行号で100号を迎えました。ご愛読いただいた読者の皆さま、取材・撮影させていただいたオーナーさまや取材先さまに深く感謝申し上げます。2014年の創刊以来、暮らしと住まいにまつわるさまざまなテーマを取り上げてきましたが、今後はさらに皆さまに役立つ情報をお届けしてまいります。
今回は創刊100号を記念し、誌面づくりに携わってきた大和ハウス工業(株)総合宣伝部の担当者、広告会社の(株)伸和エージェンシーの担当者、企画制作会社のスタッフの4名が集まり、これまでのand.yを振り返る座談会を行いました。100邸以上のお住まいを拝見した経験から見えた、良い住まいづくりのコツとは?それぞれのお気に入りの一邸もご紹介します。
座談会出席者
大和ハウス工業株式会社
総合宣伝部 O
株式会社伸和エージェンシー
K(制作)
株式会社WAVE
H(デザイナー)
株式会社WAVE
N(ライター)
アンディに歴史あり
- 制作 K創刊号は2014年4月ですから、約9年前になります。その間に変わっていないこともあれば、時代に合わせて見直してきたこともあるのではないでしょうか。
- 大和ハウス工業 O表紙は創刊号からずっと、当社住宅展示場の写真を使っています。
- デザイナー H表紙の展示場写真は、カメラマンやスタイリストと協力しながら、時間をかけてかなりこだわって撮影しています。「空間」を撮るのではなく、住まいの中の美しい一瞬を切り取るようなイメージです。レイアウトは2回ほど変わり、95号からはロゴもan.Dからand.yへリニューアルしました。
- ライター Nand.yとは、大和ハウス工業「と(and)」「お客さま(you)」を表現しているのですよね。お客さまに寄り添う姿勢がより表現されているのかなと思います。
- デザイナー Hダイワハウスが「リブスタイルデザイン」をコンセプトとして掲げたのに伴い、オーナーさま宅の撮影の仕方も変わりました。竣工写真のようにかっちりと空間を撮るだけでなく、そこに暮らす人の体温が伝わってくるような撮影を心がけています。
- 大和ハウス工業 O
- ライター N「Top Designer(トップデザイナー)」ですね。設計士の方が写真を上げて、ご自身の言葉で事例を説明されているのがとても興味深いです。
- 制作 Kハウジングマイスターの事例は過去のand.yでも多数紹介していますし、それぞれの人柄や設計理念が分かる動画がWebサイトでも公開されているので、ぜひご覧いただきたいですね。
- 大和ハウス工業 O最近大和ハウスグループが力を入れているリブネス事業の情報も毎号掲載するようになりました。建てる時だけではなく、賃貸や売却を考える時、相続が発生した時、介護が必要になった時など、お客さまをずっと支えていくための事業です。and.yを手に取ってくださるお客さまにはすぐには関係ないかもしれませんが、企業として何を行っているかを知っていただければうれしいです。
家のあり方、幸せの価値観が変わってきた
- 制作 K私がand.yの担当を拝命したのはコロナ禍が始まった頃なので比較できないのですが、コロナ以前と以後とでは住まいの在り方が変わってきたのを感じますか?
- 大和ハウス工業 Oそうですね、籠(こも)れるスペースが増えたように感じます。プライベートな自分だけの部屋として、広くなくても落ち着ける場所がよく見られるようになりました。
- デザイナー H昔から書斎やワークスペースに憧れる人は多かったと思いますが、贅沢だと諦めていたのではないでしょうか。それが、テレワークなどをきっかけに必要不可欠な空間になり、採用されやすくなったのでしょうね。
- 制作 K玄関から家の中に入ってすぐ手を洗えるように洗面を設ける家も増えましたね。
感染症の流行に関わらず必要な設備ですし、合理的な動線だと思います。 - 大和ハウス工業 Oキッチンを中心にした回遊動線の家も増えました。家事をするにも便利だし、小さいお子さんが家の中で走り回っているという話もよく聞きます。
- ライター N家の中でどう過ごしたいのか、よりオーナーさまのこだわりが強く感じられるようになってきましたね。
- 制作 K大和ハウス工業のCMコピーにあるように、帰る場所ではなく、「家は、生きる場所へ。」ということなのでしょうね。
- デザイナー H情報誌の制作を始めた当初と比較すると、「良い家」の概念が変わってきているように思います。リビングやダイニングが必ずしも中心でなくても、オーナーさまにとって「これがベスト」だという空間があれば、満足度の高い家になる。そうした部分を伝えられる編集を模索していきたいです。
- ライター Nそうですね。私は、いろんな幸せの形を紹介できればと思います。オーナーさま取材のページではご夫妻と子ども2人という平均的なご家族が登場することが多いのですが、今後はご夫婦二人の世帯や単身世帯、LGBTQのカップルのお住まいなど、いろんなオーナーさまのいろんな家をご紹介できればいいなと思います。
「施主力」を高めること
- 制作 Kたくさんのオーナーさまを取材する中で、良い家づくりのコツとして気づいたことはありますか。
- 大和ハウス工業 O営業担当者、設計士、インテリアコーディネーターたちを信頼してお任せになったオーナーさまのお住まいは、統一感のある良い空間になっていると感じます。間取りや帖数などを細かく指示するよりも、叶えたい暮らしのイメージを伝えていただくのが大事だと思います。信頼して任せること、言葉にするなら「施主力」とでも言うのでしょうか。
- ライター N暮らしのイメージを上手に伝える自信がないお客さまもいらっしゃると思いますが、良い設計士さんはカウンセラーのように聞き上手。しっかり意図をくみ取ってもらえると思います。
- 大和ハウス工業 Oその通りです。自分がどんな人間で、どんな性格なのか、スタッフに知ってもらうことですね。例えば片づけの苦手な人が、新居では急に得意になるわけではありませんから。ライフミーティング(ダイワハウスのスタッフがお客さまの現居を訪問し、現在困っている点や改善を希望する点を確認する)時にありのままの自分を見せてもらうのが良いと思います。
- 制作 Kその上で、片づけが苦手な性格の方なら、来客時にさっと隠せる収納や、動線上の収納を設けるなどの工夫ができますしね。
- デザイナー H理想の住まいを語るというより、素の自分を見せて暮らし方や性格を理解してもらう方がうまくいきそうですね。実際にお住まいを訪問すると、ダイワハウスのスタッフと良い関係を築いていらっしゃるオーナーさまは、総じて満足度が高いように感じます。
- ライター Nスタッフとの信頼関係や相性は大事ですね。その点で、たくさんのスタッフが在籍するダイワハウスでは、良いパートナーが見つかる可能性が高いと言えるかもしれません。
自分が家を建てるなら
- 制作 Kご自身が家を建てるならこうしたいという希望はありますか?
- 大和ハウス工業 O私は、窓の外の景色や環境がとても大切だと思っています。現在住んでいるマンションは湖に面しており、窓の向こうには美しい湖面が見えるんです。これが本当に気持ちよくて。住む空間の快適さも大事ですが、景色や環境は自分で変えようがありませんから、一戸建てを建てるなら、気持ちいい景色が見える土地を探すことから始めたいです。
- デザイナー H私はいまベランダで野菜を育てたり、家中に観葉植物を飾ったりして、緑のある暮らしを楽しんでいます。休日には鉢植えを全部ベランダに運んで日光を当てたりして大変なんですが、それがまた楽しい。家を建てるなら緑に親しめる家がいいですね。
- 制作 K私はオーク材が好きなので、オークを基調にしてブラックで引き締めるようなインテリアに憧れています。好きなものを選んでいくのは正直、難しいですが、これだけは嫌だなと思うものを削っていくのもアリかもしれません。
- ライター Nたくさん取材させていただく中で、必ずしも金額と家の良し悪しは比例しないと思いました。自分自身がブレないイメージをしっかり持てば、設計の力で良い家が建つんですよね。家を建てるということは、自分がどんな人間で、どんな生活をしたいのかをしっかり考える作業ですね。
- 制作 Kこれからもand.yを通じて素敵なオーナーさんに出会い、良い家をたくさん拝見したいですね。
- デザイナー H読者の方にたくさん参考にしていただけるような誌面を作っていきたいです。
- 大和ハウス工業 OオーナーさまとTeam xevoの関係と同様、情報誌の制作もチームワークが大切だと思います!これからも楽しみながら、素敵な情報誌をお届けしていきましょう。
各スタッフからひと言
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デザイナー H
私が選ぶ一邸
【62号の愛媛県Oさま邸】見た目の力強さが印象的な邸宅でした。まずはソリッドで無駄のない外観のたたずまい。取材時には葉がついていなかった植栽も、きっと今は葉がつき、外壁に素敵な影を落としていることと思います。
室内はウォールナットをベースに、アイアンの黒や、コンクリート調のグレーで構成されており、壁やソファの白がとても映えていました。余分な線が存在しない直線だけの空間といった印象で、時間が経ってから写真を見ても、気持ちの良いデザインだと感じます。
そして何よりも、オプショナルルーム。いろいろな用途で使えそうな小部屋は、ガラス越しに家族の気配も感じることができ、ちょうど良い個室感でした。少しノスタルジーを感じるリビングドア周りがとても魅力的でした。
大きな葉っぱの観葉植物がとても映えそうなリビングだなと感じた記憶が残っています。
特集で取材した方やお住まいのオーナーさま、それぞれの個性でこだわりを感じる方ばかりでした。撮影ディレクションやデザインをしていく中で、その個性や特徴をお伝えするのに、どんな写真が良くて、どんな表現が適しているのか考えながら臨んでいます。読者の皆さまのご感想から、少しはお役に立てているのかなと感じます。ありがたい限りです。
特集以外の情報ページでも、アンケート結果からは、その時の社会背景から、読者の方が何を敏感に感じているかを知ることもできました。住まいや生活はその時代その時代に合わせて、経年変化も含めて自分たちで作っていくものだと感じています。 -
ライター N
私が選ぶ一邸
【48号の愛知県Kさま邸】百年以上の歴史がある日本家屋を、庭や門塀を大切に残しながら建て替えられました。
先代から受け継いだ風格のある門や、オーナーさまご自身が丹精こめて手入れしてこられた日本庭園がそのまま生かされ、新しい建物と調和しています。自慢の庭をご新居の窓から存分に眺められる間取りに、設計士の思いやりが込められているように感じました。
数多くの植栽や門を傷つけないように保存しながら旧居を取り壊し、新居を建築する工程には大変なご苦労があったのではないかと思います。「建替え」という言葉には良くも悪くも全てが真っさらになるイメージがありますが、思い出を継承しつつ、より暮らしやすさを追求できる建て替えの形もあるのだと知り、とても印象に残っています。
そんなかけがえのない「作品」を、お客さまとともに作り上げるハウスメーカーのお仕事は、なんと素敵なお仕事なのだろうと思います。お客さまに向き合い、ご家族と一緒に未来を描いていくスタッフの方々の姿を、尊敬と憧れの思いで眺めることもあります。
そして、素晴らしい作品づくりの一端に触れられるライターの仕事にも誇りを感じます。100号を機に、より伝わる記事を作っていきたいと気持ちを新たにしています。 -
制作 K
私が選ぶ一邸
【96号の奈良県Yさま邸】家全体をブルー系の色味で統一していらっしゃいまして、ロースタイルリビングには特徴的なブロックのようなソファがあったのですが、このソファを置くとロースタイルの段差がつけられないということで段差を平行ではなく三角形にしています。一見不思議なのですが、これまた個性的なローテーブルとソファとすべてがパズルのピースのようにバランスがとれていて驚きました。仲の良いご夫妻各々のこだわりが調和する居心地のいいお家でした。
LiveStyle STORYに関しては、私たちスタッフはオーナーさま宅へ訪問する前にあらかじめTeam-xevo(チームジーヴォ)の皆さんに事前ヒアリングをさせていただきます。オーナーさまとの出会いやご要望、お人柄、家族構成、こだわり、趣味…先にお伺いできることはさせていただき、どの部屋、どの角度から撮影する、等をおおよそは前もって決めています。ですが、いざ伺ってみると建築時は考えていなかった部屋の使い方をしたり、今までアウトドア派だったが家の居心地がよくインドア派になったり…等、オーナーさまの生活スタイル・感性も日々変化し、つくづく家を建てるのがゴールではないのだなと感じます。家とオーナーさまが共に生きている日々のワンシーンに立ち合わせていただき、非常に勉強になります。今回はどんな方に、どんなお宅に出会えるのだろうとワクワクしながら、これからも沢山のお宅へお伺いさせていただけたらと思います。101号からもよろしくお願いいたします! -
大和ハウス工業 O
私が選ぶ一邸
【97号の山口県Hさま邸】どの家も素晴らしく選べませんが、あえて一邸だけ選ぶならHさま邸でしょうか。庭の景色の取り入れ方が非常に印象に残りました。
まず、満足のいく住まいづくりをするには「こだわりを持つこと」が大切だと思います。そのために、自分の好みやこだわりをはっきりさせ、設計士に伝える必要があります。InstagramやYouTubeなどで、家づくりの情報はたくさん公開されています。自分の好みを知るためにうまく活用するのがおすすめです。ダイワハウスでは、トップデザイナーのInstagramアカウントも開設しているので、ぜひご利用ください。
また、一方で、プロの設計士やコーディネーターに任せることも必要だと思います。
理想の暮らしを描くことも大事ですが、現在の暮らしの現実や苦手な家事などを設計士に伝えれば、暮らしの悩みを住まいによって改善してもらうことができます。「理想の住まい」ではなく「自分たちの暮らしにフィットする住まい」を建てると考えるのが良いのではないでしょうか。
「足し算」と「引き算」の考え方は住まいづくりにおいても大事です。一般に、庭は足し算、照明計画は引き算だと言われますが、住まい手としてのこだわりをはっきりさせることで、どこを「足し算」をするのが良いのか、どこを「引き算」をするのが良いのか、判断しやすくなると思います。
最後に、家は建てたら終わりではなく、「変化する暮らし」にフィットさせる創意工夫が大事ですね。今後の記事では、住まい手の創意工夫(暮らす力)も紹介していけたらいいなと思います。