そのカトラリーの本当の価値は、料理をひとさじすくって口に運んだ時に分かります。
いまや世界的に有名なカトラリーブランドの一つとなったクチポール。
同社の歴史やものづくりに対する誇りについて、
日本正規代理店の株式会社日曜社にお話を伺いました。
世界中の一流に愛されるブランド
黒い樹脂の持ち手に、光沢を抑えたステンレスのシルバー。そして無駄のないモダンなフォルム。一度目にすると忘れない独特の存在感でテーブルを彩るフォークやスプーンを、高級レストランなどで手に取ったことがある人も多いのではないでしょうか。このカトラリーブランドの名は「クチポール」。ポルトガル(po)のカトラリー(cut)の会社(L)という意味から名付けられたクチポールは、その名前が表す通りポルトガルを代表する世界的ブランドです。写真はGOA(ゴア)シリーズといい、アイコニックなモデルとして広く知られています。
世界ベストレストランのランキングのうち、トップテンの半数近くの店がクチポールのカトラリーを採用しているのだとか。日本でも多くのレストランで愛用され、近年はお店のホームページや個人のSNSなどで見かける機会が多くなりました。
洋食だけでなく、和食でも中華でも、さまざまなテーブルコーディネートに馴染むシンプルな美しさは説明するまでもないでしょう。軽い使い心地や重心にこだわった構造ゆえのバランスの良さ、指先に当たるカーブのフィット感などは、それを手に取り、料理を口に運ぶ時にこそ分かるもの。顧客に最高の食事体験を提供したいと考えるレストランが、料理の相棒としてクチポールを選ぶのもうなずけます。
耐久性やメンテナンス性においても、プロはもちろん一般のユーザーも満足させています。平均的な家庭での使用なら何十年と使えますし、食洗機の使用も可能です。美しさだけでなくタフさも備えていることが、クチポールが愛される大きな理由なのです。
人気のGOAブラックシルバーシリーズのラインナップ
ブランドの歴史と類いまれなデザイン
クチポールが誕生したのは、昔からカトラリーの生産地として栄えてきたポルトガル北西部のギマランイスという地域です。日本で例えるなら、金属加工品の産地として栄えた新潟・燕三条のような土地といえば分かりやすいでしょうか。この地域にはたくさんの川が流れ、水力を動力として機械を稼働できたため、工業が集積する町になったといわれています。
現在社長を務めるデイビッド・リベイロ氏の祖父に当たる人物が、ここで小さなカトラリー工場を操業したのが、同社の始まりでした。当時からドイツやフランスなどにも製品を納めていましたが、より広い海外展開を視野に入れて「クチポール」というブランド名を冠したのが1960年頃。二代目社長の時代です。
1980年代に入ると後に三代目社長となるデイビッド氏や兄のジュゼ氏が入社し、ブランドの運命が大きく動きます。幼少期から絵や工作が得意で建築にも興味をもっていたジュゼ氏は、インハウスデザイナーとして入社から現在まで活躍。装飾的なクラシックカトラリーとは一線を画す次の世紀のスタンダードを創りたいと、シンプルでモダンなデザインのカトラリーを生み出しました。
ジュゼ氏はまず、月の光をイメージしたスプーンが特徴的なオールステンレスのMOONシリーズをデザインしました。優雅でエレガントなフォルムが際立つモデルです。次に、樹脂とステンレスを組み合わせたGOAシリーズのデザインに着手しました。柄の部分を樹脂とするアイデアは、軽量化してより使い勝手を高めることが目的です。天然樹脂の選定や、接合部分をシームレスにするための研磨技術の確立には長い時間を要しました。こうして数年の開発期間を経て2004年に誕生したGOAシリーズは、他のカトラリーブランドが決して真似ることのできない稀有(けう)な存在となりました。今日ではテーブルを演出するさまざまなカラーが用意されています。
代表を務めるデイビッド・リベイロ氏(写真右から3番目)とその兄弟たち。プロダクトデザインのほか、財務や在庫管理、店舗経営など、それぞれの得意分野で会社を支えています
MOONシャンパンゴールドシリーズのディナーセット。土のぬくもりを感じる陶器の皿にコーディネートしても、しっくり馴染みます
誇り高き職人たちの技術
1本のカトラリーを手に取れば、遠いポルトガルの工場でそれを作った職人の誇りや手のぬくもりが伝わってくるように感じられるのではないでしょうか。クチポールのカトラリーは、すべてポルトガル・タイパスにある自社工場で、職人の手で一本一本丁寧に作られています。フォークの長い歯、スプーンのユニークな丸み、ナイフの繊細な刃先など、ジュゼ氏が人間工学に基づいて描く複雑なデザインを生かせるのは、手仕事の高い技術があるから。特に繊細な感性を必要とする研磨の工程は、経験を積んだ熟練の職人だけが担当できる仕事です。
受け継がれてきた職人の技術が、世界で愛されるカトラリーを生み出します
歴史あるカトラリーの産地ギマランイスには多くの職人が集まります。そうした土地柄においても、クチポールの工場に勤めることは職人にとって自慢であり、喜びであるといいます。三代続いて同社のものづくりを担う職人の家族もいるのだそうです。
ポルトガルの首都、リスボンにあるクチポール直営店の様子
品質こそがサステナビリティ
国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)が世の中に浸透するずっと前から、ヨーロッパでは自然にやさしいものづくりへの意識が定着しており、クチポールの工場も例外ではありません。工場の電力の7割を自社のソーラーパネルから供給し、残りの3割も水力や風力などのグリーンエネルギーから得るなど、原料の調達から製造まで、人と自然に配慮した環境が整えられています。
しかし、クチポールがサステナブルであるといえる理由はもう一つあります。その神髄は、いつまでも飽きのこない美しいデザインや、日々の使用に耐える強さと使いやすさ、そして愛着を持って経年変化さえも楽しめる品質です。長く使い続けられることは、捨てるものを減らせるということであり、環境負荷を抑えられるということに他なりません。クチポールがクチポールらしくあることこそが、サステナビリティなのです。
GOAシリーズはカラーバリエーションが豊富。料理や季節、テーブルコーディネートによって選ぶ楽しみがあります
子ども用のALICEシリーズは入学式や七五三のプレゼントなどに人気。5、6歳からの使用を想定していますが、もちろん他の製品と同様に高品質なつくりです
毎日触れる上質さが心の贅沢に
コロナ禍において、家での食事や集いの時間の大切さが見直されるのに伴って、クチポールを買い求める人が日本でも世界でも増えているのだとか。GOAブラックシルバーを愛用してきた人が、新しくアイボリーやパステルカラーなどの色違いを取り入れたり、華やかなゴールドのシリーズを加えたりして、より多様なテーブルコーディネートを楽しんでいるという話も聞かれます。結婚式を挙げなかったカップルがせめて祝い返しに上質なギフトをと考えるのか、ブライダル関係のギフトとしての需要も伸びているそうです。
和食器や洋食器など、幅広いテーブルウェアと合わせられるのがクチポールの良さ
毎日の暮らしに、美しさと優れた機能を備えたポルトガル生まれのカトラリーを取り入れてみませんか。「食べる」という日々の営みに小さな感動と発見が積み重なって、生活そのものを少し上質に変えてくれるはずです。そして、食卓を囲む家族の心に確かな豊かさをもたらしてくれるでしょう。
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2021年12月現在の情報となります。