住まいに無垢材(むくざい)を活用することは
サステナビリティにもつながるとご存じでしょうか?
今回は無垢材メーカー・マルホンに無垢材のさまざまな魅力や
環境に対する取り組みについてお話を伺いました。
自然を守り、暮らしを高める無垢材と人間のいい関係
天然の木から取れる一枚の板、無垢材。合板や集成材とは異なり、厚み方向に木材の貼り合わせが無いものを無垢材と呼びます。
無垢の木など贅沢品であり、木を切るのは環境に悪いと考える方もいるかもしれません。しかし、森の木を計画的に育成して利用することは、実は環境保護につながります。定期的に間引くことで地表まで日光が届いて草木が育ち、土の流出を防ぐため土砂崩れが起きにくくなります。つまり、木材の適度な利用が森や動物を守り、人間の生活を守るのです。
一方、過剰伐採による生態系の破壊や先住民族の権利侵害、違法取引などの問題も存在します。そうした環境や社会経済に関わる問題をクリアした木材を積極的に利用することが大切です。
持続可能な木材資源の保持に取り組む無垢材メーカーであるマルホンは、FSC※をはじめとする環境保全関連の国際認証を取得。1934年に創業した歴史ある企業として、近年は世界的な環境意識の高まりに応えて人や自然に優しい木材調達を行っています。2016年には扱うすべての木材の合法性を確認し、担保できない木材は売り上げ上位の樹種であっても販売を中止する決断をしました。美しい地球を守り、次世代に受け継ぐために、メーカーとしての責任を強く意識しています。
※FSC®認証・・・持続可能な森林活用・保全を目的に誕生した「適切な森林管理」を認証する国際的な制度
森林の持続可能性に配慮した製品にのみ証されるFSC®認証マーク
本物を知れば分かる無垢材がもつ癒やしの力
無垢材にはさまざまなリラックス効果があり、住まいに取り入れることで暮らしの快適性が高まります。例えば、人間が心地良く感じる「1/fゆらぎ」のリズム。炎の揺らめきや波の音などがよく知られていますが、木の年輪の間隔にも現れます。また、木が放出するフィトンチッドという天然成分の香りは、人の睡眠の質や免疫力向上に効果があるともいわれています。
室内の湿度をコントロールすることで快適な環境を保つ調湿作用もあります。さらに、木材は比較的熱伝導率が低いため、夏は足裏に不快なペタペタ感がなく、冬はあたたかい触り心地に。無垢材が〝天然のエアコン〞と呼ばれる所以です。
生きている本物の木だからこそ、経年によって色が変わり、艶が生まれて、美しさや味わいになっていきます。木と共に生きる。家族の歴史を刻む。これこそが無垢材の魅力なのです。
約300種類のサンプルに圧倒されるマルホン 福岡ショールーム。木の香りに包まれながら、心ゆくまで木材選びができます
樹種、加工、塗装…広がる無垢材の可能性
無垢材には多様な樹種があり、木目や色、堅さや香りなどにさまざまな個性があります。また、なぐり加工(表面加工)や塗装によっても表情は大きく変化します。
なぐり加工は日本の伝統的な工法の一つで、板の表面に道具の痕跡を味わいとして残す技法。古くから使われる工法ですが、現代においても意匠性の高いデザインとして人気です。
塗装方法は汚れや傷のつきにくさ、修復性や仕上がりの質感などから選べます。機能や質感を損なわずに表面を保護する浸透性塗料や、汚れや水に強くするコーティング系塗料などがあります。
また、フローリングの板幅によっても空間のイメージは変わります。太幅が主流ですが、近年マルホンがリリースした細幅の板は製造時の廃材が少なく、サステナビリティの観点からも注目されています。
日本の伝統的な技、「なぐり」で表面を加工した木材
自分の好みの木に出会い、長く付き合う喜び
無垢材は手入れが大変で扱いづらいというイメージをもたれがちですが、定期的なメンテナンスは基本的に年一度が目安。頻繁に使い、塗装がはげ落ちてしまう部分のみ塗り直すだけでも十分です。意外と知られていませんが、汚れや傷・へこみも日常のお手入れの延長で、簡単に補修することができます(「実物に学ぶ」参照)。
自らの手でメンテナンスしながら使い続ける中で、木への愛着が湧いていくのでしょう。リフォームや増改築の際に、同じ樹種をもう一度オーダーする人も多いそうです。
ライフスタイルやご家族それぞれの好みに合わせて選べる唯一無二の無垢材インテリア。良いものを選び、手入れをしながら長く使い続ける生活は、自然環境を守ることにつながっていきます。木に寄り添い、木と共に生きる暮らしは、サステナビリティを楽しむ暮らしでもあるのです。
さまざまな表面加工や塗装により、同じ樹種でも異なる表情に。写真はいずれもオーク材
空間を多様に彩る無垢材
無垢材はフローリングだけでなく、壁や天井などさまざまな部位に使えます。
- 階段材
- 10年、20年と使い込むうちに、より踏み心地良く変化するのも魅力
- 天 井
- 濃淡の違いで、豊かな表情を見せてくれます
- カウンター
- 毎日使う場所こそ無垢材で。
インテリアのアクセントにも
- 格 子
- 無垢材を1本1本組み合わせてつくります
マルホン 福岡ショールーム
無垢材の本当の良さは、実際に触れてみないと分かりません。マルホンのショールームでは豊富なサンプルを比較検討したり、知識の豊富な専門のスタッフからレクチャーを受けたりしながら、自分に合った無垢材を見つけることができます。
建物全体でFSC®プロジェクト全体認証を受けた福岡ショールーム。外壁には天竜スギが使われています
無垢フローリングの踏み心地を素足で体感。無垢材ならではの踏み応えの良さや、ほんのりとしたあたたかみを感じることができます
経年により色や触り心地が変化し、風合いが増していきます。色が濃くなる樹種もあれば、明るくなる樹種もあります
樹種によって木目や色、堅さや香りなどに個性があります。サンプルを持ち帰ることもできるので、キッチンや家具などとの色合わせにも使えます
軽度の汚れなら、紙やすりで表面を削って上から塗装を施せば、ほぼ元通りになります(浸透性塗料の場合)
表面がへこんでしまった場合は、水分を含ませたタオルの上からアイロンを当てることで、目立たなくなります
汚れや擦り傷の
修繕方法
子どもの落書きや家具が擦れてついてしまった傷など、生活をする中でフローリングの汚れや傷は避けられません。共に時を過ごした証として残すのも一つですが、無垢材であれば簡単に修繕することもできます。
【用意するもの】
- サンドペーパー(粗いものから180番、240番、320番)
- サンドペーパーブロック(サンドペーパーを固定する四角いもの)
- 現在お使いのフローリングの仕上げと同一の塗料
- ウエス(Tシャツやシーツのはぎれなど)
まず、目の粗い180番のサンドペーパーで、汚れや傷のついた箇所を木目に沿って削ります。この時にサンドペーパーブロックを使用すれば、削りやすくなります。
次に、目の細かい240番、320番でサンディングして表面を整えます。サンドペーパーの番手を徐々に細かくしていくときれいに仕上がります。
最後に、削った箇所に仕上げと同じ塗料を塗ります。ウエスの先に少量の塗料をつけて、木目と同じ方向に薄く擦り込むように塗ってください。塗り終わったら表面に残った余分な塗料をから拭きしてから、自然乾燥させましょう。
完全に乾けば修繕は完了です。
- ※浸透性塗料を使用している場合の修繕方法です。
- ※塗料の使用中や使用後は匂いが残るので、十分に喚起を行ってください。
- ※使用したウエスはまれに自然発火をする恐れがあるため、水に濡らして処分してください。
へこみ傷の修繕方法
物を落としてついてしまったへこみ傷も、生きている木材だからこそ直すことができます。
【用意するもの】
- 濡れた布
- アイロン
- サンドペーパー(320番)
- 現在お使いのフローリングの仕上げと同じ塗料
へこんでしまった部分に、水で濡らした布を置いてください。
その上からアイロンを当ててください。この作業を、へこみがある程度元に戻るまで繰り返し行います。
ある程度元に戻ったら、木を乾燥させた後に、320番のサンドペーパーで表面を削り、最後に仕上げと同じ塗料で再塗装してください。
地域の自然や人とつながること
家具づくりを通した「フェアウッド」の普及
伐採地の自然環境や地域社会に配慮した木材をフェアウッドと呼びます。マルホンのグループ会社である株式会社ワイス・ワイスは、フェアウッドを用いた家具づくりに取り組んでおり、特に国産材の利活用に力を注いでいます。
昨今、安価な輸入木材の流通や後継者不足によって林業が衰退し、日本国内に手入れの行き届かない森が増えていることが大きな問題になっています。
ワイス・ワイスは全国各地の林業家、森林組合、製材所、家具工場を巡り、現地の自然や人と出会いつながりを築くことを大切にしてきました。その木がどこで育ち伐られ、どこで作られているのかを明確にするトレーサビリティにこだわり、日本の林業に光を当てる家具づくりを行っています。
取材協力
株式会社マルホン
https://www.mokuzai.com
SHOW ROOM 情報
[浜松本社ショールーム]
〒434-0013 静岡県浜松市浜北区永島1295
TEL/053-587-0711
開館時間/9:00~17:00
休館日/隔週日曜・祝日
棚卸・夏季・GW・年末年始休館日あり
[大阪ショールーム]
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-1
グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル3F
TEL/06-4300-7177
開館時間/10:00~18:30
休館日/水曜日(祝日を除く) 夏季・年末年始休館日あり
[東京ショールーム]
〒163-1006 東京都新宿区西新宿3-7-1
新宿パークタワー内リビングデザインセンターOZONE6F
TEL/03-5326-7411
開館時間/10:30~18:30
休館日/水曜日(祝日を除く) 夏季・年末年始休館日あり
[福岡ショールーム]
〒810-0028 福岡県福岡市中央区浄水通5-1
MARUHON FUKUOKA
TEL/092-406-9236
開館時間/10:00~18:30
休館日/水曜日(祝日を除く) 夏季・年末年始休館日あり
2022年4月現在の情報となります。