現在の賃貸住宅や分譲住宅は、現代的なデザインの物件が多くなっていますが、
和のテイストを取り入れ、快適に暮らしたい方には、
日本家屋の良さを生かした「和モダン」な注文住宅がおすすめです。
そこで、昔ながらの日本家屋のメリット・デメリットなど、
和モダンな家づくりの参考になるポイントを解説。
日本家屋の良さを生かしつつ、
最新の技術を駆使して建てられる大和ハウスの和モダンな家もご紹介します。
Part1日本家屋のメリットは?
日本家屋といっても、地域により家屋の形状にはさまざまな違いが見られます。その中でも共通の特徴といえるのは、なるべく自然の素材を使い、その土地の気候に合った造り方をしている点です。
日本家屋とは
年間を通して高温多湿な地域は風通しを重視し、冬に積雪が多い地域は雪の重みに耐える構造にするなど、昔ながらの日本家屋は地域ごとの気候を反映した造りが見られます。しかし、一般的に日本家屋に共通する特徴としては
- 木や紙や土などの自然素材を多く利用している
- 釘をなるべく使わず、木材同士を組み合わせる伝統的な工法で建てられている
などが挙げられます。また、瓦を使った屋根、長く伸びた軒(のき)、部屋の外側に設けられた縁側(えんがわ)など、外見上も洋風建築とは異なる部分が多く見られます。
日本家屋の特徴的な空間や設備
外観
●軒の出が長い
住宅の屋根で外壁より外側にせり出した部分を軒と呼び、それが長く伸びていることを「軒の出が長い」、または「軒が深い」と呼び、日本家屋の特徴の一つになっています。
深い軒で日差しや外からの視線を程よくカットした大和ハウスの戸建住宅
●瓦でふかれた屋根
屋根瓦は中国が発祥ともいわれ、日本には飛鳥時代に朝鮮半島経由で伝わってきたとされます。以来、国内で独自の進化を遂げ、瓦の屋根は日本家屋らしい外観のイメージに一役買っています。一般的に瓦は耐久性が高く、断熱性・防音性に優れているとされ、日本家屋の耐久性を高めるのにも役立っています。また、現在は瓦ではなく「スレート」を使うケースも増えています。
屋根瓦が特徴的な大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』
●縁側
部屋の外側に設けられた板張りの部分を縁側と呼び、日本家屋に多く見られる特徴の一つです。一般的に部屋と同じ高さで造られる縁側は、部屋と外の庭との間にそのどちらでもない空間を生み出し、部屋から部屋に移動する廊下としても使われてきました。
ゆったりした縁側(和のグランリビング)が特徴的な大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』
内観
●畳を敷いた部屋
日本家屋の室内は、台所などを除いて畳が敷かれた部屋が多いのも特徴です。畳の内部はクッション性を持つ材料で作られ、畳表と呼ばれる表面は「い草」を主な材料としています。このため、板張りの部屋に比べて弾力があり、い草の香りが独特の癒やし効果をもたらしてくれます。
●部屋を仕切るふすまや障子(しょうじ)
部屋を仕切るために、壁だけでなくふすまや障子も使われます。ふすまは木の枠組みに両面から紙を貼ったもので、表面の紙は「表紙(おもてがみ)」と呼ばれ、和紙などが使われます。表紙を好みのデザインに貼り替えることもできます。障子は主に格子状の木の枠に障子紙と呼ばれる和紙などを貼ったもの。光を通し、部屋の明かり取りの役目も果たします。ふすまや障子を開け閉めすることで、部屋を仕切ったり、複数の部屋をつなげたりと空間の利用用途を変えることができます。
●土間
床材を使わず、土足で歩ける屋内空間で、昔の日本家屋では台所や玄関に土がむき出しの土間が使われていました。
近年は、ウチとソトの中間領域としてさまざまな活用が提案され、多目的なスペースとして土間を設けることが多く、自転車やベビーカー、キャンプ用品、子どものスポーツ用具の置き場などにも利用されています。土ではなくタイルやコンクリートなどを敷いた床になり、掃除もしやすくなっています。
●地窓
床に近い位置に設けられた小さな窓のことで、主に和室に設けられてきました。低い位置にあるため外からの視線をあまり気にする必要がなく、換気や部分的な採光に役立ちます。
●塗り壁
壁面の下地にペースト状の材料を幾層にも塗り重ねて作る壁のことで、左官職人による高度な技術を必要とします。表面に使う材料として土、砂のほか、高い調湿機能が期待できる漆喰や珪藻土などがあります。なお、昔の日本家屋では竹や木材で組んだ下地でしたが、現在は石膏ボードなどの下地が主流になっています。
●床の間(とこのま)
主に和室の客間などの壁側に設けられ、畳の床より一段高くなった板張りの空間のこと。掛け軸や花瓶などの美術品、生け花などを飾ることが多く、来客をもてなす意味もあるとされています。
●書院
床の間と直角に接する形で設けられる空間で、一般的に障子窓と小さな棚で構成されています。もともとは光が入る外部に接し、文章を書いたり書物を読んだりする造り付けの文机があった場所で、現在は採光や装飾が主な目的になっています。
Part2日本家屋によく使われる素材
日本家屋でよく用いられる木や紙や土などの自然素材の特徴について、代表的なものをいくつか紹介します。
漆喰・珪藻土
どちらも塗り壁の表面に使われる材料で、漆喰は消石灰に麻などの繊維、海藻など粘り気のある膠着材を水で混ぜ合わせたもの、珪藻土は珪藻という植物プランクトンの一種が堆積したものです。どちらも断熱性や防火性が高く、優れた調湿機能を持つなど湿度の高い日本の気候に向いた材料といえます。
和紙
コウゾ、ミツマタなどを原料に、手や機械を使って漉いた紙のこと。一般的な洋紙よりも強度や耐久性が高いとされ、調湿機能も持っています。日本家屋では、ふすまや障子、天井、壁紙など各所で利用されています。
木材
さまざまな建築物で使われる木材ですが、釘をなるべく使わず木材の組み合わせで建てていく日本家屋では特に重要な材料といえます。日本にある多種多様な広葉樹・針葉樹の中から、適した木材を適した部分に用いる方法は「適材適所」の語源になったとされるほどです。性質だけでなく、木目や色味、足触りなども木の種類によって違い、見た目の印象も変わってきます。また、上質な木材を丁寧に加工した床は滑らかで、素足で歩くと心地よさが感じられます。
Part3日本家屋のメリットは?
日本家屋にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なメリットをご紹介します。
屋根瓦が特徴的な大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』の外観
採光・通風に優れている
日本家屋に多いとされる廊下が少ない田の字型の間取りは、外に面している部屋が多くなるため、各部屋で光や風が取り込みやすくなります。
部屋と屋外がつながり開放感が増す
縁側は室内と屋外の中間エリアといえ、部屋と庭を緩やかにつなぎ、開放感をもたらす役割も担っています。室内でも屋外でもない場所は、親しい人とコミュニケーションする開けた場として活用されることもあるでしょう。近所の方や友人たちと気軽に過ごせる場所としても多く利用されています。
畳の部屋でリラックスできる
日本家屋にある畳の部屋は、畳の上に直接座ったり寝転んだりとリラックスしやすいのも魅力。ゆったり過ごせる場所を家のあちこちに設けやすくなります。
間仕切りで空間の広さを変えやすい
障子やふすまなどで部屋を仕切ることで、空間を分けることができ、逆に開け放して広い空間も生み出せます。暮らし方や使い方に応じて部屋の広さを変えやすいのもメリットです。また、障子は屋外の光を和らげながら部屋の中に通すことができ、調光にも活用できます。また、ふすまを閉じることで空間の空調効率を高める効果が期待できます。
引き戸で空間にゆとりが生まれる
ドアの場合はドアを開くスペースが必要なので、狭い空間の場合は開いたドアが邪魔になることも。その点、日本家屋の特長のひとつである引き戸なら、狭い空間の開け閉めでも邪魔になることがなく、空間にゆとりが生まれそうです。
Part4昔ながらの日本家屋のデメリット
現在の日本家屋では解消されている点がほとんどですが、昔ながらの日本家屋にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
断熱性が低い
豪雪地帯などを除いて、従来の日本家屋は高温多湿の夏を前提に建てられていました。夏を過ごしやすくするため風通しの良い造りとなり、外部に面した部屋が多いことは、外気の冷たさを感じやすいというデメリットにもなります。
セキュリティ面に不安がある
日本家屋に限らず、どんな住まいでもセキュリティ面で完璧ということはありません。ただ、窓からの侵入窃盗のうち、縁側やベランダからの侵入も多い※ため、縁側がある日本家屋の場合、セキュリティ面で不安を感じる方もいるでしょう。
※警視庁発表「東京の犯罪(令和3年版)」より
プライバシーが確保しにくい
従来の日本家屋は隣接した部屋が多く、その仕切りは可動式の障子やふすまであることがほとんど。そのため部屋ごとのプライバシーの確保が難しくなります。
洋風のインテリアや家具が合わない場合もある
これまで使っていたインテリアや家具の大半が洋風のデザインという方も多く、室内が和風になると雰囲気がマッチしない場合もあります。
このほか、従来の日本家屋は木造建築が中心のため、耐震性の低さをデメリットと考える方もいるかもしれません。ただ、1950年に制定された建築基準法にも、「震度5程度の中規模の地震で大きな損傷を受けないこと」という耐震基準(旧耐震基準)が定められていました。
さらに1981年に施行された新耐震基準では、震度6強~7といった大地震でも建物が倒壊しないよう定められ、2000年には「建築基準法施行令」の改正で、阪神・淡路大震災での被害をもとに木造住宅の耐震対策が明確化※されています。こうした基準に基づく新築の木造建築なら、一概に耐震性が低いとはいえないでしょう。
※林野庁「木造住宅の耐震性について」
Part5日本家屋の良さを取り入れた和モダンな暮らし
昔ながらの日本家屋の弱点を補い、新たな機能やデザインを加えた和モダンの家なら、より快適に和の雰囲気を大切にした暮らしを楽しむことができます。
屋根瓦が特徴的な大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』の外観
現代の技術やデザインに和のテイストをプラス
ハウスメーカーの技術で建てられる現代の注文住宅に、和のテイストを加えると、どのような暮らしができるのでしょうか。
例えば、従来デメリットといわれてきた断熱性の低さについても、現代の技術を取り入れた和モダンデザインの家なら、壁に高機能の断熱材を使用したり、窓の気密性・断熱性を高めたりするなどで大きく改善されています。このため大きな窓や外部に接した部屋が多く、外光を存分に取り入れる造りの日本家屋の特長とあわせて、寒い季節でも暖かな日差しを室内で感じながら快適に過ごすことができます。
日本家屋らしい空間デザインと、ロースタイルングなどのモダンなデザインを融合させた、大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』の内観
また、リビングと隣接する和室の障子やふすまを取り外せば、空間の一体感や広がりを演出することができます。さらに、リビングの床を数十cm低く掘り下げると、「おこもり感」があって落ち着く空間にすることもできます。上の画像のようなロースタイルリビングは空間に広がりと変化を持たせ、腰掛けとしても利用できるなど、部屋の楽しみ方をさらに広げてくれるでしょう。
こうした機能やデザインの工夫は、ご自身や家族の理想から生まれるものです。和モダンなデザインの注文住宅を得意とするハウスメーカーに、自分たちの要望を伝え、どんな工夫ができるのかを相談してみてはどうでしょうか。
Part6大開口だけど断熱性や耐震性も高い。
大和ハウスのxevoΣ 和暮らしし
日本家屋の魅力をさらに引き出した和モダンな家が、大和ハウスの注文住宅『xevoΣ 和暮らし』です。
深い軒や縁側、大開口など、日本家屋の特徴を取り入れ、高断熱サッシなどの現代の住宅設備で快適さをさらに高めた大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』
最大7m10cmの大開口※!「和のグランリビング」で広がりのある空間に
『xevoΣ 和暮らし』の特長のひとつは、建物の構造体の強さにより幅3m45cmの窓を2枚連続で配置※し、最大7m10cmの大開口の設計を可能にしたことです(※中間に柱が入ります)。 室内に窓の外の景色を取り込み、深い軒の下には広い縁側を設けることで、室内から庭へと緩やかにつながる空間を持つ「和のグランリビング」が完成。このリビングから四季の移ろいを楽しむこともできます。天気の良い日には外に出て、のんびりしたり本を読んだりするのも気持ち良さそうです。すぐに出られる庭があることで、ガーデニングなどもより一層楽しくなるでしょう。
また、天井と鴨居の間、つまり障子の上部には、一般的に欄間(らんま)と呼ばれる開口部があり、透かし彫りなどを使って採光や通気の役割を持たせています。
『xevoΣ 和暮らし』では、この欄間の設置箇所に何も設けない「オープン欄間付障子」を採用。障子を閉じているときは上部空間や障子を通して柔らかな光を室内に届け、開けたり外したりしたときには、天井から床まで一つの大きな空間を生み出すことができます。さらに、「オープン欄間付障子」であれば、障子で仕切られた別々の空間にいる家族の気配も、より一層感じることができそうです。
開放的な空間を実現できる大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』の内観
心地よい肌触りの無垢床材も取り入れられる
『xevoΣ 和暮らし』の魅力のひとつが、木・紙・土などの和の素材感を感じられるところです。その香りや心地よい肌触りも、長い時間を過ごすマイホームでは大事な要素ではないでしょうか。
例えば、床に無垢材を取り入れてみることで、より一層心地よさが期待できます。無垢床材は、天然木が持つ温かみが感じられるだけでなく、木の香りによって心と体をリラックスさせる癒やしの効果、睡眠の質の改善なども期待できます。また、肌触りが良く熱伝導率も低いため、冬でも暖かさを感じ、家の中では素足で過ごしたくなるかもしれません。
さらに、経年により色や触り心地が変化し、風合いが増すのも無垢材の大きな魅力のひとつです。家族と一緒に美しく年を重ねてくれる自然素材によって、わが家への愛着はより一層増すでしょう。
断熱性や耐震性も高い日本家屋に
広々とした空間や大きな窓が特長の『xevoΣ 和暮らし』ですが、断熱性も高いため、冬は暖かく夏は涼しく、快適に暮らせます。これは、分厚い三層の断熱材で構造体を外側から包み、柱や梁まで断熱する「外張り断熱通気外壁」(写真1)によるもの。
(写真1)全国の気候に応じて3つのグレードの断熱仕様で提供される「外張り断熱通気外壁」
また、繰り返し起きる大きな地震への耐震性も備えています。独自の「エネルギー吸収型耐力壁D-NΣQST[ディーネクスト]」(写真2)は、建物自体の重さなど縦方向の重さを支える柱と梁に加え、地震エネルギーを吸収する「Σ形デバイス」の効果で、大地震に耐える粘り強さはもちろん、外壁や構造体の損傷を最小限に抑えてくれます。
(写真2)重さを支える柱と梁、横方向の力を吸収する「Σ形デバイス」で高い耐震性を実現
昔ながらの日本家屋の魅力をさらに高めながら、デメリットの部分は現代のテクノロジーを駆使し安心をつくる。大和ハウスの『xevoΣ 和暮らし』は、和のテイストを生かして快適な暮らしを楽しみたい方にはうれしい商品といえるでしょう。
お話を伺った方
田中直輝(たなか なおき)さん
住生活ジャーナリスト。早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てはもちろん、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。