[福井県]Tさま邸
雑誌やSNSなどで見かける、トータルにコーディネートされたインテリア。
完成された美しさがあって憧れますよね。
一体、どこをどう工夫すればこんな空間が作れるの?
と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は美しさの裏には、プロのコーディネーターやインテリア上級者だけが
知っているセオリーやアイデアがあるのです。
このシリーズでは、さまざまなテイストのインテリアコーディネートのポイントを、
ダイワハウスのインテリアコーディネーターが解説します。
Interior Coordinator
大和ハウス工業株式会社 福井支店 住宅設計課
インテリアプランナー・インテリアコーディネーター・キッチンスペシャリスト
長谷川 友理子
窓からの風景をインテリアの一部に取り込んだ、四季を楽しむ住まい
窓から見える美景は、最大のインテリアアイテムの一つです。こちらのお宅では遠くにのぞむ山の景色を楽しむことを念頭に置いてインテリア計画がなされています。木目や自然石風の素材を用いた自然の力強さと癒やしを感じる空間に、ガラスや布、アイアンなどの異素材をミックスさせバランスをとっています。部屋全体が落ち着きのあるトーンでまとった、シックな雰囲気のお住まいです。
左)リビングの一角にあるスタディコーナー。四季折々の山の景色が目を楽しませてくれます
右)キッチンの背面には収納ではなく窓を設け、外の景色と開放感を味わえるよう工夫
存在感ある暖炉をフォーカルポイントに
暖炉や自然石風のタイルにより、落ち着きのあるリビング空間に
お部屋づくりのテクニックとして、フォーカルポイント(視線が最も集まる見せ場となる部分)にラグジュアリーなアイテムを用いることで、空間全体の印象を格上げすることができます。このリビングの場合は電気暖炉。火を使わず、オレンジのLEDと水蒸気で炎のように揺らめく暖炉が目を引きます。暖炉のある壁には風趣に富んだ自然石風のタイル。凹凸やサイズ感もランダムなタイルが、自然の力強さを演出しています。
テレビボード背面の壁はベースの白いクロスよりもトーンを落としたダークグレー。 下がり天井は暗めのグレーで、暖炉の光の反射を低減
暖炉に対して90度の角度、掃き出し窓の正面に位置するテレビボード背面の壁は、ダークグレーのクロスでトーンを落とし、下がり天井はさらに暗めのグレーに。暖炉の光の反射を低減して、炎がより雰囲気よく見えるよう工夫されています。また、火をつけない夏場は、なるべく周囲の壁に暖炉を同化させることで存在感をあいまいにし、クールな印象を与えます。
開けても閉めても絵になるウッドブラインド
落ち着いた雰囲気を醸し出すため、LDKのフローリングはあえて木目を強く出したウォルナットを選択。濃い色味の木目が力強さと重厚感を生み出します。床の主張に合わせて窓にはウッドブラインドを採用。窓枠内側の天面に取り付けることですっきりと収めています。閉じた状態では木目の風合いを楽しむことができ、開けた時には外の風景を邪魔せず、お部屋に奥行きと開放感を与えてくれます。開閉による光と影の変化や、昼夜で変わる雰囲気をも楽しめるのがウッドブラインドの魅力でしょう。
ウッドブラインドは閉じた状態でも羽根を水平にすると風景が見えるのが特徴。プライバシーを守りながら美しい自然光を取り入れることができます
すべて開放した状態。天面に沿ってすっきり収まるので風景の邪魔をしません
異素材ミックスで重厚さの中に抜け感を演出
線の細いアイアン製の脚がお部屋に軽やかさを生み出します
濃い色の床材を使用しているため、床に合わせた木目の家具ばかりを配置すると重い印象になってしまいます。そこで、ガラスやアイアンなどの異素材を使った家具をところどころに取り入れ、軽やかさを生み出すことに成功しています。リビングテーブルとテレビボードは、ブラックガラスの面材や細いアイアン製の脚を使ったデザインをセレクト。重厚感の中に透明感や軽やかさが生まれ、バランスの取れた空間にまとまります。
ファブリックや小物使いで遊び心を
色と柄でアクセントを差し込むのが、シンプルモダンを格上げするテクニック
スクエアなフォルムが美しいソファは、部屋に溶け込むブラックのファブリックでシックにまとめています。ラグは毛足の長いグレーの色味でラグジュアリー感を演出。全体をグレイッシュなトーンで統一しているため、クッションの鮮やかなイエローや柄で遊び心をプラスしています。
床やタイル、クロスなど、なかなか変えられない部分の色はトーンを合わせるとまとまりが良いですが、それだけではベーシック過ぎて寂しい印象になってしまいます。クッションなど気分によって変更できるファブリックや小物で色柄を差し込み、変化をつけるのもインテリアを楽しむコツです。
ライフステージに寄り添うライティング計画
LDKは間接照明で柔らかな明るさを確保しつつ、ダウンライトを多めに配灯。これはライフステージの変化への配慮で、点灯するライトの数を調整できるようになっています。くつろぐときはライトの数を減らしてリラックス。将来子育てが始まれば明るさが必要になりますし、高齢になればより強い明るさが必要になってくるでしょう。ライフスタイルやライフステージに合わせたライティングで、長く快適に過ごすことができます。
ダウンライトや間接照明を多数配置。暮らしに合わせて調整ができます
雑然としがちなキッチンを美しくデザイン
間取りはLDKの真ん中にキッチンを配置する思い切ったレイアウト。キッチン横の壁には床の色に合わせたブラウンベースのモザイクタイルを敷き詰め、きらきらとしたアクセントに。ペンダントライトにも木目がのぞき、自然素材を生かした表情ある空間に仕上げています。ダイニングテーブルやチェアは床材に合わせてウォルナットで統一感をもたせつつ、やや明るめのグレーを選んでなじみすぎないようにコーディネート。雑然としがちなキッチンが美しくまとまり、LDKのアクセントになっています。
左)4つ並んだペンダントライトがダイニング・キッチンのアクセント
右)モザイクタイルのきらきら感で、お料理をする人の心も弾みそう
左)繊細なフォルムのダイニングテーブルで空間を美しく
右)洗面台にもキッチンと同じブラウンのモザイクタイルを敷き詰めて
床の間はアートな和紙で演出する
「おもてなし空間」である1階の和室は、床の間に書画のようなアート風の和紙クロスを張り、華美に飾らずとも格別な雰囲気を演出しています。忙しくて日常的に床の間飾りができないという方におすすめのアレンジです。床柱の背面に埋め込んだ間接照明も、和紙クロスの柄を一層引き立たせます。
一般的には銘木を使用する床柱は、外壁と色を合わせたブラックのタイルでスタイリッシュに。内と外のタイルの色を連動させて、自然と窓の外の景色へと視線を誘導します。
また、和室は床に座ってくつろぐ部屋なので、あえて天井を低く感じさせる方が落ち着くこともあります。こちらのお宅では、濃色の網代天井風クロスにすることで落ち着きある「おこもり空間」に仕上げています。
左)躍動感のある和紙クロス。床柱のタイルはタテに張り、和の雰囲気と調和させています
右)内と外のタイル色を合わせることで、自然に窓外へ視線を誘導
窓には和紙を使ったプリーツスクリーン。優しい光が差し込み、リラックスできる空間に仕上げています
木目とガラスで外観にもアクセントを
黒を基調に白いタイルを効かせた、シャープな印象の外観。木目調のガレージシャッターやガラスのスクリーンバルコニーを採用し、シンプルな中にアクセントをつけて個性を表現しています。外壁のタイル、木、ガラスと異なる素材を組み合わせることで、存在感ある外観に仕上がっています。
木目のシャッターが個性的なビルトインガレージ。軒天も木目でコーディネート
室内から見える景色を邪魔しないガラスのスクリーンバルコニー
Pick Up Item
Opti-myst(Dimplex)
世界の電気暖房器具分野で最大規模のシェアを誇るイギリスのメーカー・Dimplex(ディンプレックス)の電気暖炉。個人向けから店舗向けまでさまざまな電気暖炉を展開しています。Opti-myst Proは、独自の技術「オプティミスト」によって、ミストと光で三次元のリアルな炎を創り出します。火気を使用せず、やけどや火災の心配、排煙設備なども不要。コストをかけずに揺らめく炎を楽しむことができます。
炎の美しさもさることながら、リアルに再現された薪のはぜる音も醍醐味でしょう
※掲載の情報は2019年6月現在のものです。
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