良質な睡眠は、充実した毎日を送るために欠かせません。ぐっすりと眠るために重要になるのが、環境づくり。
意外と知らない寝室と寝具の整え方について、西川リビング株式会社・睡眠環境科学研究所の藤田貢さんにアドバイスをいただきました。
睡眠には疲れた体を休める以外にもさまざまな役割があることが、近年の研究で判明しています。脳や神経の回復、ストレス緩和など心の疲れを癒やす効果もあるのです。では、「良い眠り」を迎えるにはどんな準備が必要なのでしょうか。
そもそも「良い眠り」とは、寝つきが早く、途中で起きることなく朝すっきりと目覚められること。そして、眠りの質は「人・環境・もの」に左右されます。「人」とは体の状態のことで、生活リズムを整えるのが基本です。今回は「環境」と「もの」、つまり寝室の環境の整え方や寝具の選び方をご説明します。
寝室に求められる条件は、安心できて心の落ち着く場所であること。何よりも、自分の好みに合った環境を整えることが快眠への近道です。具体的に、眠りの質に特に影響するのは3つの要素。「光」「音」そして「温度・湿度」です。
まずは「光」について。明るい光は眠りの妨げになりますが、実は真っ暗にしても、不安感をかき立ててしまい眠りづらくなることがあります。薄暗くて、ものの形がうっすらとわかる程度(10ルクス程度)の明るさがおすすめです。眠る前に避けたいのは、スマートフォンやPCのブルーライト。朝方の光に似ており、覚醒効果があるのです。ちなみに、夕方以降、部屋の照明を赤っぽいものにするとスムーズに入眠しやすくなります。
次は「音」について。光と同様で、全くの無音は不安感をもたらし、かえって眠りにくくなります。図書館の中やそよ風に揺らぐ木の葉の音のように、静かな中にも少し音があると、気持ち良く眠りやすくなります(30~40dB)。
最後に「温度・湿度」についてですが、室温は、夏には24~28°C、冬には13~21°Cが良いとされています。湿度は、季節によらず50%ほどが適していると考えられています。ただ、個人差もあるので、乾燥せずジメジメしない程度に保つことで快適に眠れるでしょう。
寝室の環境とともに気をつけたいのが、布団の中の環境(寝床内環境)。快眠のコツは、寝室は涼しく、寝床内はあたたかく保つことです。寝床内の温度は33℃ほどが最適。寝床内環境には掛け寝具が大きく影響するため、季節ごとの使い分けが大切です。冬には保温性の高いものを、夏には吸湿性のある寝具を選ぶと良いでしょう。また、安心して眠るためには肌触りも大切ですし、寝返りを妨げないよう軽い寝具が好ましいといえます。
敷き寝具や枕は、自分に合ったものを選びましょう。疲れが取れやすくなるだけではなく、右のグラフが示すように、日中の活動で疲れにくくもなるのです。敷き寝具は体型や体重に合わせた硬さのものを選ぶことで、体と寝具の接地面にかかる圧力を抑えられます。立ち姿をそのまま横にした形で眠れるのが理想的です。また、枕の高さにも気をつけましょう。高すぎるといびきや肩こりの原因になり、低くても首や肩に負担がかかります。
※西川リビング調べ
現代の子どもたちは、就寝時刻が遅くなり、睡眠時間が短くなってきています。しかし、良質な睡眠は子どもの脳の発達に良い影響があることが近年わかってきました。10~14歳の子どもにとって理想的な睡眠時間は9時間以上。十分な睡眠で健やかな成長を促しましょう。さらに、小さい子どもの睡眠には安全面の注意が必要です。ベビー寝具は窒息の危険を防ぐため、沈み込まない硬さのものを選び、シーツはピンと張るものを選んでください。
西川リビング株式会社 睡眠環境科学研究所 藤田 貢さん
品質保証部・品質管理室次長。同社の営業部門を経て、現在は社内研究機関「睡眠環境科学研究所」に所属。寝具の性能・機能の評価や、人の眠りと寝具の関係についての研究を行う。
西川リビング株式会社は1566(永禄9)年に創業し、昨年で450周年。高機能寝具のほか、インテリアや生活用品など快適な暮らしに関わる商品を開発・提案している。
2017年9月現在の情報となります。