たくさんある絵本の中から、子どもに最適なものを
どのように選べばいいのでしょう。
読み聞かせの専門家、絵本作家として活躍中の、聞かせ屋。
けいたろうさんにお話を伺いました。
絵本は子どもが読んで欲しがるものを、その時に読んであげるのがベスト。対象年齢が記載されている絵本もありますが、これはあくまで目安です。子どもが楽しいと感じるお話は、発達の段階により自然に移り変わります。同じ絵本でも年齢によって受け取り方が変化することもあるので、昔読んだ本も繰り返し読み聞かせてあげると良いでしょう。また、まだ十分理解ができないのに、高年齢向けの絵本にチャレンジするなど、背伸びをする必要もありません。
一般的には、各年齢で次のような好みの傾向があります。3歳頃は、同じパターンを繰り返す構成を好みます。例えば、寒がりの動物たちが手袋の中に続々と集まって来る『※てぶくろ』など、繰り返し同じような出来事が生じるのが面白いようです。4歳頃になり徐々に集中力が身に付いてくると、ストーリー展開を理解できるようになります。5歳頃ともなると、楽しめる物語の長さはかなりのものに。ある程度の理解力や思考力が求められる言葉遊び絵本も読めるようになります。
年齢を問わず楽しみたいなら、歌絵本がお勧め。『しあわせならてをたたこう』など、誰もが知っている歌を題材にしたお話を読み、家族で歌ってみませんか。
※『てぶくろ』ウクライナの昔話
書店には実に多くの絵本が売られていて、どれを購入すれば良いか迷ってしまいませんか。図書館ではさまざまな絵本を借りることができるので、読んでみて気に入ったものを購入すれば失敗がありません。また、保育園や幼稚園で読み聞かせてもらった絵本から、子どもが好きな一冊を買うのも良いでしょう。好みの作品があるなら、同じ作家さんの別の物語を選んでみると、新しいお気に入りが見つかるかもしれません。
書店員さんや幼稚園の先生など、絵本をよく知っている人にアドバイスを求めるのも一つの手。また、市販されている絵本のガイドブックには、厳選された名作絵本がまとめられています。ぜひ参考にしてみてください。
絵本を選ぶとき、せっかくなら教育に良いものを選びたいと思われるかもしれません。確かに絵本には、想像力や語彙力を育むといった教育効果があると言われています。しかし、まず大切なのは絵本が面白くて楽しいものだと、子どもが感じることです。散歩やおままごとなど、我が子の発達を促す方法は絵本以外にもたくさんあります。教育効果ばかりに気を取られることなく、読み聞かせながら大人も一緒に楽しめるものを探しましょう。
また、たくさんの絵本を用意する方が良いということでもありません。お気に入りの一冊を読んでもらうと、子どもは安心します。何度も読んだ絵本は長く心に残り、成長してからふと思い出し懐かしく感じることもあるでしょう。愛着のある一冊を作ることは、子どもへの“懐かしさのプレゼント”になるのです。
「どうぶつしんちょうそくてい」聞かせ屋。けいたろう文、高畠 純絵(アリス館)
ワニやコアラ、カンガルーなど、身長の測り方がそれぞれ違ってユーモラス。繰り返しの展開で、3歳頃からお勧めです。
「どんないろがすき」100%ORANGE絵(フレーベル館)
世代を超えて愛される童謡を絵本化。色の美しさ、歌う楽しみを味わえます。どんな年齢の子にも楽しんでもらえるでしょう。
「ぼくひこうき」ひがし ちから文、絵(ゴブリン書房)
紙飛行機を飛ばすときのわくわく感が伝わってくる一冊。伸びやかな絵で、大人も一緒に楽しめます。4歳頃から。
「はやくちこぶた」早川 純子文、絵(瑞雲舎)
おなじみの早口言葉のオンパレード。口ずさむうちにどんどんストーリーが進んで引き込まれます。5歳頃から楽しめる言葉遊びの絵本。
アドバイス
聞かせ屋。けいたろうさん
子どもから大人まで幅広い世代に絵本の魅力を伝える、聞かせ屋。日本全国で読み聞かせ、絵本講座、保育者研修会の講師を担当。元保育士で絵本作家としても活躍。一児の父。著書に『どうぶつしんちょうそくてい』(アリス館)、『たっちだいすき』(アリス館)など。
2019年1月現在の情報となります。