古来より日本家屋には、縁側や障子など、家の中に居ても外の光と風、緑のある景色を感じられる仕組みが備わっていました。内と外の境界があいまいな空間では、開放感とともに、まるで自然と一体化しているような居心地の良さが得られます。このような空間づくりのポイントは、内部空間と外部空間とが入り混じった“中間領域”を設けること。室内の延長でもあり庭の延長でもあり、時間や四季の変化を身近に感じられる空間となります。
例えばリビングやダイニングに面したテラスは、ホームパーティーを開いたり、子どもたちやペットの遊び場になったりと、多様な使い方が可能。訪れる人とのコミュニケーションの場や、家族の憩いの場としても機能し、暮らしを豊かにしてくれることでしょう。庭との距離も近くなるので、ちょっとした手入れや作業も気軽に行えます。
テラスに設置する家具には一工夫を。室内用家具のように見えるガーデンテーブルやチェアを選ぶことで、より室内とテラスの雰囲気が近くなり、境界をあいまいにできます。
また、壁や床などの仕上げ材に室内外で同じ素材を使用すれば、より連続性を持たせられます。上の写真のように外壁の石張りや木の天井材を玄関ホールや室内、テラスまで引き込むと、家の中に誘うような雰囲気に。内と外が切り替わる場所の玄関も、中間領域として考えることができます。
ゆるやかなつながりを意識した住まいで、自然を感じながらお過ごしください。
“敷地” を設計する
建物の基礎部分を盛土や植栽で隠すと、家全体が地中に根を下ろしているように見え、まるで長年そこに建っていたかのような印象に。さらに室内の床レベルを下げることで、窓から外を眺めた時の目線が低くなり、自然と一体化したくつろぎの空間がつくれます。内と外のつながりを生むためには、建物と外構を切り離して考えるのではなく、同時に計画することが大切です。
右:目線が地面と近づくように建物と外構を合わせてデザイン
窓を額縁に見立てる
窓は採光や通風のために欠かせないものですが、外の風景を切り取り家の中に取り込む役割もあります。取り付ける位置や形にこだわり、自然の一部を印象的な「借景」として楽しんでみてください。環境によって腰高窓や小窓を使い分け、視界に周辺の建物が入らないようにしながら風景を切り取ることも可能です。
左:2階に腰高窓を設けると、抜けるような空が視界に飛び込みます
右:縦横比を1:1にしたピクチャーウインドウ。庭の緑を効果的に見せます
2016年8月現在の情報となります。