最前線で働く方は、市況をどう見ているのか?不動産市況DI調査を読み解く
公開日:2022/04/28
POINT!
・第24回「不動産市況DI調査」では、土地価格のDI指数が10.8ポイントとなり、回復基調が見られた
・エリア別に見ると、もっとも高いのは関東地区で18.2ポイント
・中古戸建・新築戸建て価格が大幅に上昇し、中古マンションの取引価格も4回連続プラスとなった
・居住用賃貸物件の賃料の動向については、全国的に横ばいの状況が見られた
2022年3月に第24回「不動産市況DI調査」が公表されました。
「不動産市況DI調査」は昨年も取り上げましたが、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が年4回公表しているものです。
この第24回不動産市況DI調査(注:調査時点2022年1月中旬、公表2月14日。不動産関連企業むけのアンケート調査で有効回答数は204)をもとに、このところの不動産市況や賃貸住宅市況について見てみましょう。
不動産市況DI調査
DI(Diff usion Index)は、景気の拡大や市況感を見る際に、分かりやすく指数化したものとして、様々な調査で用いられる手法です。内閣府の景気ウォッチャー調査や日銀短観などのDIは、メディアも大きく報じるので、ご存知の方も多いと思います。
この調査はアンケートを行うというシンプルな調査方法ですが、最前線の現場で働く関係者にダイレクトに聞く手法ですので、実態が見えやすいともいえ、現状が把握しやすいと思います。
この不動産市況DI調査の算出方法については、「土地価格動向・賃貸住宅市況を業界関係者はどう見ているか?」をご覧ください。この調査はアンケートを行うというシンプルな調査方法ですが、最前線の現場で働く関係者にダイレクトに聞く手法ですので、これは実態が見えやすいともいえ、現状が把握しやすいと思います。
土地価格の動向
はじめに、地価(本調査では土地価格)について見てみましょう。
3月下旬に公示地価が発表されましたが、公示地価は地価公示法に基づき、2人の不動産鑑定士が基準地点の鑑定を行う形式です。鑑定での地価の変化と「肌感覚」に近いアンケート調査に大きな違いがあるのでしょうか。
全国の土地価格の動向については、DI指数は+10.8ポイントとなり、前回調査に比べ+5.2ポイント上昇、4回連続プラスとなりました。2020年4月・7月・11月、2021年1月の調査ではマイナスでしたが、4回連続のプラスとなりました。2020年年初までの勢いはなく完全回復とは言い難いものの、だいぶ回復基調になっているという状況でしょう。公示地価(全国・全用途平均)でも2021年(令和3年)のマイナスからプラスになっていました。
図:土地価格動向DI値の推移
公益財団法人 全国宅地建物取引業連合会「第24回不動産市況DI調査結果公表」より作成
図1は、第1回目からのDI値の推移です。
第24回分のDIをエリア別に見れば、もっともDI指数が高いのが関東地区でプラス18.2ポイント、次に九州・沖縄地区がプラス11.1ポイントとなっています。
逆に、中部地域では、前回に続きマイナスとなりました。DI指数はマイナス2.0ポイント、ほとんどの回答が「横ばい」でしたが、わずかに「やや下落」が「やや上昇」を上回り、マイナスとなりました。また、この先3か月後の予測の項目を見ると、全国平均ではプラス5.6ポイントで、プラスが大きいのは近畿地区プラス8.8ポイント、九州・沖縄地区8.3ポイント、関東地区7.1ポイントでした。逆に、中国・四国地区はマイナス7.1となりました。
土地価格DIでは、ここ数回にわたり、中部地区や中国四国地区でネガティブな数字となっています。ただし、地価公示との比較では、中部地区(地価公示では、名古屋圏)の他の3大都市圏と同様に前年比はプラスでしたので、鑑定での地価と肌感覚に多少の差があるようです。
中古住宅価格について
土地活用とはあまり関係ありませんが、市況を見るには重要だと思いますので、「中古戸建」、「中古マンション」についても軽く触れておきます。
中古戸建価格は、全国ではプラス8.2ポイント(前回調査比プラス2.2ポイント)、新築戸建て価格はプラス21.9ポイント(前回調査比プラス2.8ポイント)と、いずれも前々回と前回調査対比よりも大幅に上昇しました。上昇幅が大きくなっているという状況です。
また、中古マンションの取引価格はプラス17.0ポイント(前回調査比プラス8.5ポイント)と、4回連続プラスとなりました。
賃貸住宅賃料の動向
次に「居住用賃貸物件の賃料の動向」を見てみます。全国的に居住用賃貸住宅賃料は横ばいの状況のようです。
2022年1月1日と3カ月前(2021年10月1日)、3カ月(2022年4月1日)を比較した取引件数について、全国では、回答の77.8%が「横ばい」、5.0%が「やや上昇」、16.7%が「やや下落」、0.6%が「大きく下落」と回答しています。ちなみに「大きく下落」と回答したのは関東地区のみで、ごくわずか(1.4%)です。
関東エリアでは、7.2%が「やや上昇」と回答、また、北海道・東北・甲信越地区、中部地区、中国・四国地区では「大きく上昇」「やや上昇」の回答はゼロでした。九州・沖縄地区を除けば、どの地域もおおむね8割の回答が「横ばい」で、13~25%が「やや下落」と回答しています。
九州・沖縄地区は、「やや上昇」の回答割合が全エリアの中でもっとも多かった一方で、「やや下落」の回答割合ももっとも多く、バラツキがある状況といえます。
また、3か月後の予測は、全国では82.1%の回答が「横ばい」で、九州・沖縄地区を除けば、80~90%程度の回答が「横ばい」となっています。ここでも、九州・沖縄地区ではバラツキの多い回答となっています。
現場の最前線の方へのアンケート調査の信頼性には是非がありますが、色々なデータを複合的に見ることで、市況をより深く知ることができます。
参考にしてください。