家づくりを考えるとき、建物を優先して、
エクステリアは後回し…という方は意外と多いかもしれません。
しかし、内(建物)と外(エクステリア)のつながりにこそ、
快適な住まいづくりのポイントが隠れているのです。
この連載では、ダイワハウスの設計士が「ここちよいエクステリアの作り方」を、
フロントガーデン、メインガーデン、植栽計画といったテーマ別にご紹介します。
連載の後半では、おうちでのキャンプやアウトドア気分でのテレワークを叶えるエクステリア、
非日常を感じさせるリゾート風ガーデンの作り方といった実例もたっぷりご紹介します。
第3回目のテーマは「メインガーデン」です。
居室の居心地の良さを高め、生活に楽しみをもたらしてくれるメインガーデンの作り方を、
大和ハウス工業の設計士、高田雅子が解説します。
Profile
大和ハウス工業 本社 住宅事業本部 西日本住宅設計室一課 主任
一級造園施工管理技士 一級エクステリアプランナー 二級建築士
高田 雅子
風のそよぐ音、草木の香り、空に浮かぶ雲の移ろい。自然を生活に取り入れることで、驚くほど暮らしが豊かに彩られます。そのためにもできるだけ自然の素材を取り入れ、周囲の風景にしっくりとなじむ景色となるように心がけています。また同時に、そこに住まう人々の生き方を映し、年を重ねるほどに味わいと愛着がわいてくるような、心地よい居場所をデザインの力を借りて実現します。
庭を「眺めて」「使って」おうち時間を楽しもう
古くから日本の家屋では、濡れ縁や縁側のような内と外の「中間領域」があり、縁側に座って外の景色を眺めながらお茶を飲んだり、庭の畑で獲れた野菜を軒下で処理したりと、外部に触れる生活に親しんできました。庭は建物の内外から「鑑賞する」対象として憩いやくつろぎの対象となり、また「使う」場所としても生活を豊かにしてくれます。
今回ご紹介するのはメインガーデンの作り方です。メインガーデンは家族がくつろいだり家事をしたりなど、プライベートな時間を過ごす場所。リビングやダイニングの目の前にある「メインとなる庭」だけに限らず、住まいの「横」や「後ろ」などの小さなスペースも併せて計画しておけば、便利で心地よい空間にすることができますよ。
大切なのは「お庭でどんな過ごし方をしたいのか」を具体的にイメージしておくことです。「リビングに通じたウッドデッキで子どもたちを遊ばせたい」「愛犬が走り回れるような広々とした芝生の庭が欲しい」「吹き抜けのコートヤードでくつろぎたい」「テラスで食事を楽しみたい」「キッチンからサッと出て野菜やハーブを収穫したい」「趣味の自転車のメンテナンスができる屋外スペースが欲しい」などなど……。思い描くライフスタイルやご家族構成、ご趣味、こだわりポイントなども細かくヒアリングしながら、メインガーデンを構成する6つの要素を組み合わせてプランニングしていきます。
メインガーデンを構成する6つの構成要素とは?
心地よい庭には6つの構成要素があります。
床
6つの構成要素の中でも優先順位が高いのが床です。室内に通じる段差のないタイルテラスやウッドデッキを作っておけば、「内」と「外」の隔たりを意識せず室内の延長として使えます。室内外の床の色味を合わせると空間の広がりが感じられるのでおすすめです。また、ペットやお子さまのいらっしゃる方には、クッション性の高い芝生も利用価値が高い床素材の一つです。
家具・小物
いまや屋外空間に欠かせない家具や小物。さまざまなアイテムがあるので、室内のインテリアと同様にシーンに合わせて設置しましょう。室内のカーテンやクッションなどに採用したアクセントカラーを、外のアイテムにも取り入れると統一感が生まれます。
壁
居心地のいい空間を作るには、塀や生け垣、フェンスなどで周囲からの視線が気にならないようにすることがポイント。ただし、隣家の窓の位置によって視線がそれほど気にならない場合や借景を活かせる場合などは、高い塀で囲わない方がいい場合も。低い塀+植栽を組み合わせることでも落ち着いた雰囲気は作れるので、総合的に判断しましょう。また、お住まいの地区に条例などの決まりごとがある場合は、使用可能な素材・色・高さなどの確認が必要です。
照明
屋外照明で庭をライトアップするお客様も増えています。夜にウッドデッキでお酒を楽しんだり、室内から幻想的な庭を眺めたりと、昼間とは違った庭の楽しみができます。特に共働きなどで昼間に不在の方は、ぜひナイトガーデンを楽しんでいただきたいです。内からも外からもきれいに見えるよう、室内の明かりとのバランスをとりましょう。
植物
一年中緑を楽しめるよう、常緑樹と落葉樹をバランスよく配置しましょう。植える場所に合わせて樹種や高さを選ぶことも大切。浴室の窓の外など目線を遮りたい場所には、窓の高さに合わせた常緑樹を植えましょう。家族が長い時間を過ごすリビングの窓から美しい風景が見えるようにするなど、建物の間取りと併せて植栽計画を立てましょう。
屋根
外で過ごす時間の快適性を左右するのが屋根の存在。建物の軒やパラソル、パーゴラ、植栽などで日差しを遮れば、日焼けや熱中症を心配することなく快適に過ごせます。あらかじめテラスの軒の出を深くしておくなど、建物とエクステリアの計画をセットで行うと快適性がアップ。軒天(軒の天井部分)を室内のフローリングと合わせた木目調にすると一体感が生まれます。
これら6つの要素は必須ではありませんが、建物との関係や設置場所に合わせて、必要な要素を組み合わせていくといいでしょう。次から、メインガーデンの3つの活用例とポイントを、シーン別にご紹介します。
活用例① 屋外のリビングでくつろぐ ~Relax style~
ウッドデッキやタイルテラスで「内」と「外」をゆるやかにつないでおけば、気軽に屋外に出てくつろぐことができます。庭の木々を眺めながら読書を楽しむ、デッキにラグを敷いて子どもを遊ばせる、脱衣所につながるテラスで湯上がりに涼むなど、リラックスできる場所を屋外にも作りましょう。
POINT
室内外の一体感を作るのがポイント。室内のインテリアのテイストを外部にもつなげ、内外フロアの高さを揃えます。低い位置に座る場所をしつらえるとリラックス度がアップ。座ったときの目線の先の景色(植栽や風景など)も考えておきます。夜間にライティングをすれば昼間とは違う魅力的な空間に。樹木を照らすアッパーライトが不快なまぶしさにならないよう、照明の当たる高さや向きも考えておきましょう。
コートヤードを眺めながらくつろげるウッドデッキ。
床に近い位置に高さの異なるベンチを設え、大人も子どももくつろげる空間に。
室内からのつながりを感じる照明計画。
活用例②普段の生活を外でも楽しむ ~Work&Dine style~
アウトドアスペースはダイニングエリアとして楽しめるだけでなく、テレワークや子どもたちの勉強スペースにもなります。普段は室内ですることを屋外でもできれば、気分がリフレッシュして集中することができ、日常の生活に楽しみが生まれます。それぞれのシーンに適した家具や設備を用意しましょう。
POINT
屋外用コンセント、水栓、屋外シンクなどが必要であればあらかじめ計画しておきましょう。食事スペースとして使う機会が多いなら、キッチンから近い場所に作ると便利です。テレワークや勉強をする場合は、疲れにくい高さの椅子とテーブルを用意し、サイドに書類が広げられるようなスペースがあると重宝します。パーゴラや可動式のオーニングなど、日差しを遮る屋根を用意すると快適性がアップします。
ダイニングから続くウッドデッキ。バーベキュー炉を置いて天気のいい日は気軽にお外ご飯が楽しめる。
ウォールテラスは周囲の視線を気にせずにくつろげる。
ピザ窯やバーベキュー炉を設置して、ゲストを呼べる屋外キッチンに。
活用例③プレイスペースでのびのびと遊ぶ ~Play style~
自宅で過ごすことが多くなり、大人も子どももちょっとストレスがたまりがち。目の前の庭を公園やキャンプ場のようなしつらえにしておくと、おうち時間を楽しめます。日差しを遮るシェードなどを設置し、クッション性のある芝を敷けば、テントを張っておうちキャンプを楽しむこともできます。子どもやペットの様子を見守れるように、椅子やベンチを設置しておくのもおすすめです。
POINT
シェードなどで日差しを防ぐとともに、天然芝や人工芝で床をしつらえれば子どもやペットが走り回っても安全で汚れにくくなります。人工芝ならお手入れも簡単です。ハンモックをつるす木やポールの設置、テントやタープの固定に必要なペグが打てる地面を残すことも検討しておきましょう。ペットの足を洗う水栓も便利な設備です。サッカーやバスケットボールのミニゴールを庭の一角に作りたいというご要望もありますが、駐車スペースなどを利用すれば、限られたガーデンスペースでも設置することができますよ。
子どもやペットが走り回れる芝生マウンド。起伏がある場所には天然の芝が適している。
芝生の上でおうちキャンプ
スペースが限られた場所の活用例。回遊性を持たせたウッドデッキはベンチのようにも使え、子どもたちにとっては絶好の遊び場に。
庭でたっぷり遊んだ後は足洗い場へ。お湯が使えると冬でも快適。
建物の「横」や「後ろ」はシンプルかつ機能的に計画を
主に家事動線を担う、建物の「横」や「後ろ」の部分もしっかり計画しておくと、使いやすい屋外スペースになります。キッチンの勝手口から出て建物の横を通ってゴミ出しをしたり、家事スペースに隣接した場所にバックヤードを作って洗濯物を干したりと、毎日の家事動線に不便さを感じないように計画しておきましょう。
掃除がしやすい素材で舗装する、雑草が生えにくい砂利を敷いて飛び石を設ける、侵入者を知らせる防犯砂利を敷くなど、建物の「横」や「後ろ」は、見た目よりも機能性を優先します。蓄電池やエネファーム、エコキュートなどの機器類やゴミ置き場、物置などを設置する場所でもあるので、ゆとりをもってスペースを確保しましょう。
設計士からのアドバイス
「メインガーデンのスタイルはお客様の数だけ存在します。どんな過ごし方をしたいのか、生活シーンを想像しながら間取りとセットで考えていくと、使いやすく日常が楽しくなるようなメインガーデンになりますよ。おうち時間が長くなり、家は“帰る場所”から“生きる場所”へと変化しました。屋外空間も間取りの一部として上手に活用して、是非おうち時間を充実させていただきたいと思います」
画像提供:(株)オンリーワンクラブ
※掲載されている実例写真の外観や仕様等につきましては、敷地、周辺環境等の諸条件や地域の条例、その他諸事情により、採用できない場合もございます。