共働きによるライフスタイルの変化に加え、
新型コロナウイルス対策としての外出自粛やテレワークの開始……。
かつてないほど急速に人々の働き方、生き方が変わってきています。
「ニューノーマル」とも呼ばれる新しい生活習慣の中、
「子育て世帯が本当に暮らしやすい家」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
ダイワハウスの設計を担当した村上が、自身が手掛けた展示場を例として、
快適かつ楽しく暮らすための住まいのアイディアをご紹介します。
Profile
大和ハウス工業 住宅事業本部 西日本住宅設計室一課
一級建築士 インテリアプランナー
一級造園施工管理技士
村上 かをり
1994年大和ハウス工業入社。
四季の移ろいを感じ、風を感じ、光を感じる。家にいるだけで幸せになれる。そんな家の設計を心がけています。仕事大好き人間ですが、小学生から大学生までの3兄弟の母親としても、日々奮闘しています。
はじめにニューノーマルな暮らしを楽しむための住まいとは?
新型コロナウイルスを拡散させないための「新しい生活習慣」は、人々の価値観・人生観、そして暮らし方にも大きな変化をもたらしました。
私はWithコロナ、もしくはAfterコロナ時代において、家は単なる「住まう場所」としてだけでなく、「仕事場」「子育ての場」「運動・趣味・食などを楽しむ場」など、今まで以上に多様な役割が求められるようになっていくと考えています。
そこで今回は、「夫婦が共に集中しやすいテレワークスペース」「共働き夫婦が家事の負担を軽減できる家」「心地よいつながりが感じられる家」をキーワードに、ニューノーマルな暮らしを快適にしつつ、もっと楽しみながら住まうためのアイディアをご紹介していきます。
夫婦が共に集中しやすいテレワークスペースとは?
新型コロナウイルスの影響で、ご夫婦が二人共テレワークになった、というご家庭も少なくないかと思います。それぞれが集中して仕事を行える作業スペースの確保が必要ですよね。
ではどのような作業スペースが良いのでしょうか。2つパターンをご紹介します。
防音性の高いクローズ型のスペース
まず1つ目は、web会議や電話業務が多い方におすすめの、扉がついたクローズ型のワークスペース。防音性の高い壁と、窓に防音ガラス戸「サウンド・シャット・スクリーン」を活用すれば、web会議などの音声が外部に漏れにくく、外部からの生活音もほとんど聞こえません。
防音ガラス戸は音を遮断する一方で、外部とのつながりも生みだします。家族の様子が感じられたり、陽の光を取り入れることで、明るさや開放感を損なわずに仕事に取り組むことができますよ。
また、こちらのスペースは仕事用だけでなく趣味での利用も想定しています。作業用の間接照明を消して映画を見たり、ゆっくりお酒を飲んだりしても素敵。用途を限定せず、状況に応じて柔軟に家族で住居空間を共有することも、おうち時間が長くなった生活を楽しく過ごすコツです。
家族の様子がわかるセミクローズ型作業スペース
独立した部屋ではなく、もっと家族の様子を把握しておきたいという方には、セミクローズ型スペースがおすすめです。
写真の例では、1階の階段下に設けており、玄関ホール・キッチン・洗面スペースなど家族の生活動線に隣接しています。
セミクローズ型のメリットは、家族の様子がよくわかること。デスクの上には小窓があり、作業中でも視線を上げれば玄関ホールが見えるので、お子さんが学校から帰宅した時など、声掛けがしやすく安心です。
私自身、小学生の息子がいて、テレワークで仕事をしています。子どもが学校に行っている午前中はweb会議などの時間に充て、子どもが帰宅してからはセミクローズスペースでパソコン作業をしています。個室に籠もるよりも、子どもが今なにをしているかを把握できる方が、仕事に集中しやすいと感じています。
セミクローズスペースは、仮に将来テレワークで利用しなくなった際、生活動線の中心にあることを生かして食品庫や収納スペースとしてマルチに再活用することもできます。
web会議をする時や、一人で籠もって作業をしたい場合はクローズ型スペースで。リラックスしたい時や、家族の様子を知りたい時にはセミクローズ型スペースで。仕事内容や時間帯、またはその日の気分によって使い分けができれば、仕事や生活の効率が上がりそうですね。
共働き夫婦が家事の負担を軽減できる家とは?
テレワークで家に居る時間が長くなったとはいえ、共働き家庭の場合、両親ともに日中は仕事中です。常に子どもに目を配り、全てを手助けするわけにいきませんよね。そんなとき、「子どもたちの自立を促す」「親がいなくても行動できる」ような家であったならどんなにいいでしょう!
収納システムや生活動線の工夫によって、子ども自身が考え、自分のことを自分でできるようになってくれていれば、親の負担も軽減されると同時に子どもも成長できて一石二鳥です。そんな住まいの仕組みやつくり方を、具体的にご紹介していきます。
自立を促す収納システムと生活動線とは?
ダイワハウスでは数年前から「家事シェアハウス」という考え方を推進しています。
【関連記事】自分のことは自分でするのが家事シェアの第一歩。
例えば玄関からLDKへの動線に「自分専用カタヅケロッカー」や「ファミリーユーティリティ」というスペースをつくります。外から帰ってきたらすぐ鞄やコートなどをしまえる空間を用意しておけば、LDKにモノが散らからず、スッキリした部屋でニコニコ過ごせそうですよね。
また、家族が外から居室内にウイルスを持ち込みにくくするためには、玄関から洗面スペースへ直行できる動線も整えておきたいですね。帰宅後まず手を洗い、部屋着に着替えたい人は、着替えてからリビングに入ります。脱いだ服や靴下などの洗濯物はそのまま洗面スペースの洗濯カゴの中へ入れられます。
写真の洗面スペースでは、外遊びで汚れて帰ってきたお子さんが、掃き出し窓から直接入ってきて手洗いや着替えができる動線も想定してデザインしています。
お子さんの年齢によっては親が手伝うシーンがまだ多いかもしれません。適度な見守りとサポートをしながら、お子さんの自立へと繋げていければ良いですね。
心地よいつながりが感じられる家に
テレワークや自粛の生活が続くと、外出の機会が減って、運動不足を感じていませんか。外出や趣味が制限され、気分がふさぎがちになっている方も多いかと思います。そこでご提案したいのが、光や風、四季の自然など外の世界との心地よいつながりを感じられる家です。
第二のダイニングのように使えるウッドデッキ
「家での外ごはん」を楽しむのに適した、第二のダイニングのように使えるウッドデッキをご紹介します。
こちらのウッドデッキは、腰掛けるのにちょうどよい高さ。真ん中にテーブルを置いてみんなで囲めば、食事をするのにも語らうのにも、ムードがあって盛り上がりそうです。すぐ隣のキッチンから好きな食材や飲み物を運び込み、アウトドア風のクッキングに挑戦するのも楽しそう。
リビングダイニングの大きな窓は開放的で、外のウッドデッキで遊んでいる子どもの様子もよくわかります。
アクティブなスポーツを楽しむための玄関ホール収納
こちらは玄関ホール内にある、大型のアウトドア・スポーツ用品を収納するスペースです。
アウトドア・スポーツ用品の泥や汚れが気になっても、お部屋の中でのお手入れは難しいもの。玄関からつながる土間のスペースなら汚れを気にせずにメンテナンスが行えます。ベンチに座ってお子さんも一緒に道具のお手入れをすると、家族とのつながりが感じられるくつろぎのひと時になるでしょう。
屋外に設けたシャワープレイスでは、水遊びの後にお子さんがシャワーをしたり、ワンちゃんを洗ったり、SUPボード(スタンドアップパドルボード)のような家には持ち込めない大型のスポーツ用具を洗うのに便利です。メンテナンス用の場所と設備をしっかり整えることでアウトドア・スポーツがより一層身近になります。家族みんなで一緒に楽しめると、気分が明るくなりそうですね。
部屋の中にいても外とのつながりを感じられる大開口や吹き抜け
寝室の掃き出し窓からベランダのグリーンを眺めたり、1Fリビングにはトップライトから青空を見上げるためのハンモックを設置したり。
家の中にいながら外とのつながりを感じられる空間にすることで、風や温度、自然の気配や気候など、日々の変化を感じながら気持ちよく暮らせる家ができあがります。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、社会は大きく変化しました。おうちで過ごす時間が増えたニューノーマルな時代だからこそ、家は大切な場所であることを再確認された方も多いのではないでしょうか。家を快適にすることによって、人生はもっと豊かになります。「家こそが一番幸せな場所」と感じられる家づくりができると良いですね。