地震や火災、侵入犯などから家族を守るためのポイントとは?
3年の構想期間を費やして、安心して暮らせる自宅を建築した危機管理アドバイザーの国崎信江さんにお話を伺いました。
災害に対する強さは住まいに大切な要素ですが、防災への備えとデザイン性、快適性の両立は難しく感じられるかもしれません。ここでは、普段は快適に暮らしながら、いざという時に防災・防犯に強い家づくりをご紹介したいと思います。
まず重要なのが土地選びです。できるだけ地盤がしっかりした土地を選ぶこと。いくら頑丈な家でも、それを支える地盤が軟弱では、地震などで傾いたり沈んだりする危険性があるからです。地盤の強さは土地の履歴からある程度予測できます。田や埋め立てた土地や、盛り土をして造成した土地は要注意。地盤の強度が不足している場合は地盤改良をすることになりますが、その分コストがかかります。
自然災害による被害を予測し、その被害範囲を示したハザードマップを調べておくことも大切。巨大地震の際に予想される震度の分布や液状化現象が起こると考えられるエリア、津波による浸水被害の予測エリアなどを知ることができます。ハザードマップは市町村のホームページなどで公開されています。
わが家ではリスクを楽観視せず、「地震は必ず起きる」「家庭内事故は必ず起きる」「侵入者は必ずやってくる」と考えています。その上で、天災や人災の被害を最小限にとどめる工夫をしています。
間取りを決める際に重視したのは、すべての部屋を2方向避難可能にすること。一方の出口が塞がっても、もう一方から逃げられるようにするためです。浴室などどうしても2方向に経路がとりにくい箇所には水や食料などを備蓄し、そこで救助を待てるようにしています。
2方向に経路をつくった間取りは、家の中をぐるっと一周できるので生活動線が短く、暮らしやすいという利点もあります。廊下が少なく効率的に敷地を使える上、家族がコミュニケーションを取りやすくなるのでお勧めです。
どの部屋にいても避難しやすいように配慮。2階は寝室とサンルーム、洗面室、浴室などをつなげています。子ども室は細かく区切らず、大きな一室として使用。必要に応じて引き戸で仕切ります。2方向経路がとれないトイレはドアの一部をスライドさせて開けられるようにしています。
居室を広くとるために階段の面積は削られがちですが、大人2人が同時に安定した姿勢で昇降できる幅を確保しました。高さの違う手すりを左右に設け、子どもや高齢者でもつかみやすいよう工夫したほか、LED照明で夜間の安全性を高めました。踏み面は滑りにくいコルク仕様です。
2階で就寝している時に1階から侵入されたり、1階から火の手が上がった場合、2階から直接外へ脱出する経路が必要になります。わが家では、バルコニーにつながる外階段を設けました。逆に外からの侵入経路にならないよう、内側からしか解錠できないゲートでガードしています。
避難の際、玄関などの出口まで最短距離で動けるように、動きをさまたげる場所に家具を配置しないことが大切。また、置き家具を使う場合は専用の固定器具で壁に固定します。一戸建てや集合住宅の低層階なら、家具と床の間に挟み込むジェルタイプのマットなどで固定することもできます。
2016年4月現在の情報となります。