防災備蓄とは、万が一のときにライフラインが止まっても、自宅で最低3日、できれば1週間、家族が生きていくための物を備えておくこと。「高価な非常用の備蓄セットを購入する必要はありません。普段食べ慣れている食品や水を余分に購入することから始めてみましょう」と三原さん。そして、ライフラインが止まったときの暮らしをイメージしてみます。「食品は、ガスや電気が使えない状態での調理方法などを考えて備えましょう。また、水を使わない洗剤やトイレ用凝固剤など水の使用を減らす工夫も考えておきたいですね」
「物が散乱していると、いざというときにケガをしたり、逃げ遅れたりすることにもなりかねません。また、せっかく備蓄していても、その前に家具が転倒していたら、取り出せません」。まずは、収納を見直し、住まいの安全を確保。そして物の指定席を決め、不要な物を処分すれば、空いたスペースを備蓄収納に活用することができます。「すっきりと片付けると同時に、今ある物もストックとして災害時に生かすことも考えてみましょう」
災害時用の非常食は賞味期限が長く、安心していると気付かないうちに切れていることもあります。「一度に買いそろえると、賞味期限が同じになってしまうので、時期をずらして購入し、消費しながら補充するローリングストックがおすすめです。また、災害時に口に合わない物を我慢して食べるのはつらいですね。備蓄する食品は、必ず試食しておきましょう」
家族構成やライフスタイルによって必要な物は異なります。日常の暮らしの視点から考える防災備蓄を、わが家にも取り入れてみませんか。
使いながら補充する
ローリングストック
消費しながら、買い足して備蓄する、ローリングストック。常にストック量が確認でき、管理しやすい。食品だけでなく、電池やトイレットペーパー、ラップ類など日用品にも応用。
何日分の備蓄が必要?
水や食料は最低でも3日分、できれば7日分。水は1日1人3リットル、食料は1日の献立を決めてストック。体調を崩したときのことも想定し、おかゆなども備えておくと安心。
家族それぞれに必要な物を
常用薬は普段から1週間分は多めにストック。赤ちゃんや小さな子どものためには、おむつやミルク、離乳食などを。そして、ペットのための備蓄も忘れずに。
被災時の暮らしを想定
食品なら常温でそのまま食べられる物のほか、カセットコンロを使って調理できる物、比較的早く復旧する電気で調理できる物など、ライフラインが止まったときの暮らしをイメージして備える。割れない食器、カトラリー類も用意。
災害に備えて、三原さんの家では家族4人×7日分を備蓄しています。
備蓄収納の方法と、普段の生活に取り入れている防災術をご紹介いただきました。
「備蓄は自宅が無事だった場合、避難所や救援物資には頼らず生活するためのもの。家具などの障害物がない場所に収納するといいですね。また、そこが万が一取り出せない場合のことも考えて、別の場所にも分散しておくと安心です」。三原さんのお宅では、家具を置いていない和室の押し入れをメイン収納に、キッチンにも食品を分散して収納しています。「まとまったスペースが取れない場合は、家族それぞれの寝室のクローゼット等に分散し、各自の非常持ち出し袋と一緒に収納しておくのも一案です」
置き場所と備蓄する物を決めたら、種類ごとに分類して、取り出しやすい収納を工夫しましょう。「わが家では、押し入れに棚を設置し、重い物は下、軽い物は上に収納。種類ごとに分類して、ケースに入れています」と三原さん。食事の1食分の献立を考えながら、主食、おかず、汁物などに分類しておけば、買い足しが必要かどうかも一目で分かります。「棚には飛び出し防止のためにネットを掛け、普段はふすまを閉めています」
「食品は賞味期限が1年以内のものと、1年以上先の物は別に分け、移動させながらストックしているので賞味期限の管理もラクです」と三原さん。ライフスタイルの変化に応じて必要な物は異なってくるので、半年に1度は見直すことが大切です。「いつものスーパーで便利な食品や非常時に役立ちそうな物がないか探したり、友人と情報交換をするなど、普段から意識的に、防災備蓄に取り組めるようになるといいですね」
メインの備蓄収納
押し入れに設けた棚に、長期保存が可能な食品、水や飲料、生活用品などを収納。重いものは下に、食品や日用品は取り出しやすい位置にケースで分類。
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カセットボンベ、副菜となる缶詰類、スープや味噌汁、お菓子など。
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主食となるアルファ米やレトルトのおかゆ、パンやおかずなどの缶詰類。
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野菜ジュースなどの飲料と、持ち出し用のティッシュ、雨具、マスク、簡易トイレ、軍手、カイロなどの生活用品。
分散収納
すっきりと片付いた三原さんのキッチン。床やカウンターに物を出さないようにし、落下物が心配な吊り戸棚は撤去。
賞味期限が1年以内の食品は、表示が一目で分かるように並べてキッチンの引き出しにストック。カセットコンロやラップ、割り箸などのカトラリー類もまとめて収納。
いろいろな場所に配置されたLEDキャンドルは、インテリアとして楽しみながら、非常時の明かりとしても役立つ。
非常用携帯ポーチ
「外出先での被災に備え、非常用グッズをポーチにまとめ普段から持ち歩いています」と三原さん。携帯充電器、ホイッスル、マスク、防寒用アルミシート、歯ブラシ、筆記用具、連絡先を記入したカードなどを中身が見えるポーチにコンパクトにまとめています。
三原麻弓さん
防災備蓄収納マスタープランナー、整理収納アドバイザー。家事代行会社のスタッフとして、個人宅の整理収納や防災備蓄に特化したお片付けサービスを行うほか、セミナー講師としても活躍。兵庫県芦屋市在住。
2018年7月現在の情報となります。