最近よく耳にする「生前整理」。
自分にはまだ早い、必要ないと思っていませんか。
年齢に関係なく、身の回りを整理することで
今の暮らしをより快適にすることが目的です。
掃除·片付けのプロ、山崎由香さんに「生前整理」について伺いました。
生前整理とは?
前向きに生きることを前提に「物と心と情報」を整理するのが、生前整理。残された家族のためや、幸せなエンディングを迎えるために、という終活的な要素もありますが「これからの暮らしを楽しむために」というのが、一番の目的です。物を片付けるだけではなく、過去の自分を振り返ったり、人間関係や資産などをエンディングノートに書くなど、思い出や情報の整理も含まれます。
物を整理すれば心もすっきり
年齢を重ねると、体が思うように動かない、慣れた環境を変えたくないなどの、さまざまな不安から物をため込みやすくなります。また、家事や仕事が忙しいなど心にゆとりがなくなると部屋が乱れていきます。このように「物と心の状態」は、つながっています。部屋の環境が整うと、心にも余裕ができて今後のことを考える前向きな気持ちにもなれます。また、人間関係や思い出などの情報を整理し、家族と共有することでコミュニケーションも生まれます。
最近では、生前整理に興味を持ち、セミナーに参加する30代の若い方も増えています。そのうちではなく、片付けたいと思ったときが片付けどき。体力や決断力があるうちに始めましょう。特にリフォームや引っ越しは大きなチャンスです。
まずは目標を立てよう
生前整理=物を捨てるということではなく、快適な暮らしを実現するために行います。まずは物の整理を始める前に、5年後の暮らしをイメージしてみましょう。そのために実現したい「目標」を書き出し「方法」を考え、いつまでに実行するか「期限」を決めます。例えば「旅行に行く」「趣味を始める」などでもかまいません。また、理想の部屋や暮らしをイメージできる画像を集めるのもいいでしょう。
「生前整理」で暮らしをよりよくリセット!
●心に余裕ができる
物を整理し、暮らしが快適になると、心にも時間にも余裕ができる。
●健康面でのメリットも
部屋が片付くと掃除がしやすくなり、物につまずいて転倒する危険も回避できる。
●目標を持ち、生き生きと
気持ちが前向きになり、実現したい目標に向かって、生き生きと暮らせる。
●家族との絆が深まる
自分の情報や将来の希望を家族と共有、コミュニケーションも生まれ、絆が深まる。
物の整理は「捨てる」のではなく、「いる」物を選ぶこと
「いる」物を8秒で判断
片付ける場所を決めたら、全ての物を 出して、1つずつ手に取り「いる」「いらない」「移動」「迷い」の4つに分類します。「いる」は、今この場所で使っている、もしくは使う予定がある物だけ。手に取り8秒以上悩んだ物は「迷い」へ。半年後に見直しましょう。
引き出し1つ、30分から始める
物を出して分類したら、元に戻す作業にも同じだけ時間がかかります。大きな場所から始めると収拾がつかなくなってしまうので、まずは引き出し1つ、分類30分から始めてみましょう。片付ける前と後を写真に撮っておくとモチベーションが上がります。片付けることで使い勝手がよくなり、ストレスを解消したという小さな成功体験を重ねることが大切です。半年から1年かけて無理をせずに行いましょう。
生前整理は1度切りではない
物が整理できたら、エンディングノートを書くなどして、次は思い出や資産などの情報を整理し、1年に1度は見直しましょう。生前整理は一生に1度だけではありません。ライフステージの節目に必要に応じて、何度行ってもかまいません。完璧を求めず、快適を目指しましょう。
\ 物を4つに分類して整理する /
- ●今この場所で使っている物
- ●これから使う予定がある物
- ▸「いる」物を選んだら…
- 取り出しやすく、しまいやすく収納。そして「定位置」に戻しやすいように名札シールを貼り、「定量」は収納スペースの8割を守ります。さらに定期的に見直す「定管理」で、片付いた状態をキープします。
- ●使っていない物(明らかに不要な物) ➡ 処分
- ●まだ使えるけれど使っていない物 ➡ 処分または、人に譲る・リサイクル・寄付などを検討する
- ▸「ありがとう」でサヨナラ!
- 捨てにくい写真や手紙、いただき物などは「ありがとう」と、感謝の気持ちを声に出したり、白い紙に包んで供養の気持ちを込めて手放します。罪悪感が減り、心がラクになります。
- ●場所が間違っている物 ➡ 使う場所に戻す
- ●人の物 ➡ 持ち主に戻す
- ●思い出の物 ➡ 思い出箱を作り保管
- ▸思い出はみかん箱1つに
- 使わないけれど残しておきたい、自分にとって大切な物は、みかん箱1つ程度の量に厳選。将来は家族に引き継ぐのか、処分してもらうのかを決めておきましょう。
- ●8秒で判断できない物 ➡ 迷い袋・迷い箱を作って保管
- ▸迷ったら「カモ退治」
- 「いつか使うカモ」「また着るカモ」…。この「カモ」が、物を処分できない原因です。「カモ退治」を心掛ければ、物はぐんと減らせます。
気になる実家の片付けは?
まずはコミュニケーションを大切に
親の将来を気遣って片付けたいと思っていても、なかなか言い出せないという方が多いのでは。片付けに対して抵抗がある親に「早く片付けて」というのは、逆効果。「一緒に片付けよう」「手伝おうか」と優しく声を掛け、コミュニケーションをとることが大切です。お盆やお正月に家族が集まったときに、写真や年賀状の整理から始めるのもおすすめです。
本人の気持ちを尊重しよう
片付けを手伝うときは、本人の思いを尊重することが大切です。「いらない」と決断したのに、もったいないからとストップをかけたり、本人の「捨てたくない」という気持ちを無理強いしないこと。まずは、決断しやすい物や場所からスタート。例えば、賞味期限がある食材、散らかっていると危ない廊下や階段など。思い入れのある衣類や、趣味の物などは後にしましょう。
山崎 由香さん
ハウスクリーニングと片付けのお店「Happy Life」を夫婦で営む。子どもの片付けから生前整理・遺品整理まで実務やセミナーを開催。生前整理アドバイザー1級認定指導員。10年の保育士経験を持つ。
2019年5月現在の情報となります。