人の話し声、テレビの音、食器がふれあう音…。暮らしの中にはたくさんの音があふれ、聞いていて心地いい音もあれば、嫌な音もあります。その中には、私たちの耳に聞こえる音だけでなく、実際には聞こえない高周波音が含まれていて、人間の感覚を刺激する作用があるといわれています。
もし「のんびりしたい」「癒されたい」と思った時は、自然の環境音に耳を澄ませてみてください。川のせせらぎや波の音、鳥のさえずりなどの自然の音には、耳には聞こえない高周波音が含まれているので、気持ちをリラックスさせたい時におすすめです。
人の耳で聞き取れる音域はおよそ決まっていますが、年齢とともにその範囲も変化していきます。高齢者の方にとって、女性の声よりも男性の声のほうが聞き取りやすいと言われるのは、年齢が上がるにつれて高周波の音が聞き取りにくくなるからです。
最近は、蚊の羽音を意味する「モスキート音」を使って耳年齢を測れるってご存知でしたか?高周波のモスキート音が聞こえれば、耳年齢が若いという目安になります。これを利用して、イギリスのコンビニや、東京都足立区の公園で、夜中にたむろする若者を追い払うために高周波のモスキート音を流していたそうです。インターネットやスマートフォンのアプリなどで聞くことができますので、興味のある方はぜひ一度試してみてください!
さて、ここからは、私たちの音の世界をもっと豊かにしてくれる、ちょっと不思議なスピーカーについてご紹介しましょう!
振動スピーカー
床や壁、家具、日用品など、身の回りのいろいろなものをスピーカーに変えてしまうことができるアイテムが、「振動スピーカー」です。音楽プレーヤーの電気信号を振動に変換し、木材やガラスなどさまざまな素材に伝えることで、身近なものがスピーカーに早変わり。家族団らんのひとときに、みんなで囲むテーブルからBGMが流れてきたり、アウトドアではペットボトルから聞こえる音楽に合わせて歌ったり、これからは人が集まるさまざまなシーンに、より溶け込んだ形で音楽を楽しめそうですね。
振動スピーカー
400-SP004 (c)サンワサプライ株式会社
超指向性スピーカー
音を超音波に乗せて一定方向に送れる「超指向性型スピーカー」は、特定の狭いエリアにいる人だけに向けて音を届けることができます。たとえば駅の片側のホームだけに構内アナウンスが聞こえるようにしたり、美術館やイベント会場で前を通った人だけに案内を伝えたり。将来は、寝室で隣に眠るご主人には聞こえないように奥さまが音楽を楽しんだり、リビングで高齢者の方だけにテレビの音が大きく聞こえる、そんなことも実現できるかもしれません。
超指向性スピーカー
超指向性音響システム 放射器 MSP-50E (c)三菱電機エンジニアリング株式会社
近ごろは携帯電話や携帯音楽プレーヤーを使って音楽を外で楽しむ人も増えていますが、家でくつろぎながら好きな音楽や映画を楽しむひとときは、外では味わえない楽しみです。
でも、お隣やご近所にご迷惑じゃないか心配…。そんな方は、音を吸収しやすい布製のインテリアを加えてみてください。家の中で防音の一番の弱点となる窓には、アルミ製や木製のブラインドより布製のカーテンを。床はフローリングのままではなくカーペットやラグを敷いて、クッションも布製に。窓に断熱性のあるインナーサッシ(内窓・二重窓)を取り付ければ、遮音性アップも期待できます! また、本にも吸音性があるので、音を伝えたくない方向の壁際に本棚を置いてみるのもいいかもしれません。
最近の住宅は気密性が高いため、音を吸収する布などが部屋の中にないと、音が響きすぎてしまいます。音が響く空間をライブな空間、響かない空間をデッドな空間といいますが、音を心地よく聞くには、音の反射と吸音のバランスがとれた環境が大切なのです。
また、できれば音楽ルームの壁を5度以上傾けると、さらに良し!室内で手を打ち鳴らすと、音がパァァ~アンァンと波打つように響くことがありますが、これは「フラッターエコー」という現象で、壁が平行しているところで音が反射を繰り返すために起こります。
コンサートホールでは壁を斜めにすることで解消していますが、家庭でも家具を置いたり絵を掛けたりすることで解消できます。日光東照宮の「鳴き竜」は、拍子木を打つと鈴のような音に聞こえることで有名ですが、これもフラッターエコーの一例です。
部屋の形状によっても、音の響きは大きく変わります。実は、1:2や2:3など整数比の部屋は音楽ルームには不向き。整数比の部屋は、音が壁を反射した際に音と音がぶつかりやすい環境ができ、「ブーミング」が発生してしまうためです。ブーミングとは、低音域でブーンと太くて長い反響音が鳴る現象のこと。部屋の寸法比には、このブーミングが起こりにくい黄金パターンがいくつかありますが、身近なところでは6帖間の形状が良いとされる比率のひとつです。
ちょっと専門的な話になってしまいましたが、「フラッターエコー」と「ブーミング」は二大音響障害と呼ばれます。これからどこかの部屋を音楽室として使ったり、将来、建て替えやリフォームで音楽室をつくりたいと思った時のために、音のセオリーをどうぞ頭の片隅に。
若い頃集めたレコードやCDを、最近聞いていますか?昔、夢中になって弾いた楽器を、最近続けていますか?音楽は、人生を豊かにしてくれる友のような存在です。かつて楽しんでいた人にも、これから趣味として始めたい人にも、心地いい音環境をお届けしたい。そんな空間づくりをご提案するのが、快適防音室&静音室「音の自由区」です。
住宅メーカーがつくる音の空間ですから、一般的にイメージするボックスのような防音室とは一線を画するもの。快適防音室&静音室「音の自由区」は箱ではなく、開放的な「部屋」なのです。もちろん、吹き抜けや勾配天井もつくれます。陽射しが降りそそぐ中、大人数で楽器演奏をしたり、広々とした部屋で家族みんなで映画鑑賞もできる、夢のような環境です。
ピアノ演奏室
オーディオルーム
音楽室
この快適防音室&静音室「音の自由区」を開発したのは、総合技術研究所の音環境技術開発グループ。その代表として、玄と牛山に、快適防音室&静音室「音の自由区」に込めた研究者の想いについて聞きました。
間取りも音も設計する
玄:快適防音室&静音室「音の自由区」では、音楽室だけでなく、住宅全体のプランニングから始めます。支店の設計担当者に加え、プランニングの初期段階から私たちも参加して、お客さまのご要望をお聞きして部屋の配置や大きさを決めていきます。たとえばピアノ教室だったら、プライベート空間と教室を分けるという意味で、まず大事なのは玄関を入った所にすぐ教室があることです。動線の次は、グランドピアノを置くのか?アップライトピアノなのか?何台置くのか?などをお聞きして、親御さんが待つソファのスペースもいるなら、12帖くらい必要ですね、と広さを決めていきます。
間取りが決まったら、次は防音性能です。周囲の環境は?何時頃まで利用する?どれほど外に聞こえないようにしたい?など…。一度寝て夜中に起きて弾く方もいますし、家の外には聞こえてほしくないけど中の家族には聞こえてもいい方もいらっしゃいます。
良い音環境をつくるには、設計段階にしかできないことがたくさんあります。家を建てたり、リフォームする時がチャンスなんですよ。その極端な例がオーディオの電源ですね。
オーディオは電源の時代へ
玄:最近、オーディオは「電源の時代」と言われていまして。つまり、オーディオ機器の電源をいかにキレイなものにするか、ということです。
簡単な例をあげると、コンセントに差し込むプラグの向きを反対にするだけで音が良くなるとも言われています。
オーディオにこだわる方の中には、電柱のトランスを他の家と共有せず、自分用のトランスを電柱に置いて、そこから純粋にオーディオだけのために電源を引く方もいらっしゃるんです。費用もかかりますし、非常に大変なんですが、ダイワハウスでも電力会社に交渉して実現したことがあります。「新築時にしかできないことですよね、頑張りましょう」と私たちも気合いを入れて!
快適防音室&静音室「音の自由区」は集まる家
牛山:快適防音室&静音室「音の自由区」づくりは住宅の設計から始まりますから、音楽室も広く開放的な空間が実現できるのが特長です。一人でこもるのではなく、人がたくさん集まるコミュニケーションの空間になるんです。
音環境開発グループ 玄
1993年入社。大学では建築音響学を専攻。現在は住まいの騒音問題から音楽を楽しむ提案まで、音に関わる問題を研究している。趣味はコンサートホール巡り。
音環境開発グループ 牛山
2005年入社。大学では応用音響工学を専攻。現在は楽器練習室やオーディオルームなどの防音・音響について研究している。趣味はスケートとピアノ演奏。
玄:これまでの防音室は、使う人しか部屋に入りませんでしたからね。快適防音室&静音室「音の自由区」なら、そこに友達がいたり、家族がいたり、みんなのコミュニケーションにつながっていく。そんな事例が最近増えているんですよ。
ある若いご夫婦はビオラとチェロを20年弾いていて、「音楽は自分たちの中で非常に大きな存在。子どもが生まれたからといってやめると、私たちの価値観が変わる」と、子育ても音楽も共存できる家を建てられました。音楽仲間も「よくぞ、こんな家を建ててくれた」と大喜びだとか。音楽という趣味を楽しみ、真剣に取り組む姿は、子どもにも伝わるはず。そして、人も集まります。音を聞く、演奏する、楽しむ、そんな目的をもった空間づくりを楽しんでほしいですね。
牛山:この快適防音室&静音室「音の自由区」をきっかけに、将来は「音楽室・防音室といえばダイワハウス」といわれるようになれたなら…。快適防音室&静音室「音の自由区」を開発するまで、もちろん現在も、さまざまな音の研究を続けています。研究だけでなく、お客さまとも直接お会いしますし、快適防音室&静音室「音の自由区」の全国の施工現場に私たちが出向いて施工状況の確認を行うこともあります。こうした研究や実践を積み重ねて、ダイワハウスの〈音ブランド〉を構築できれば、と願っています。