サプライチェーン
秋葉淳一のロジスティックコラム(4) デジタルロジスティクスリーダーシップ
公開日:2018/12/25
*このコラムは、11月27日に開催された「MOVOFORESIGHT」での講演内容に基づいて作成しています。
アナログはだめなのか
現在、デジタルトランスフォーメイションという言葉に代表されるように、デジタル化への進展が進んでいますが、まず「アナログ」について考えてみたいと思います。
私はアナログには良いところがたくさんあると思っていますが、これだけ人手不足といわれる中においてなぜアナログではなくデジタルなのでしょうか。
アナログとデジタルの違いとは、まず、デジタルはコピーしやすいということです。アナログというのは、非常に属人的なので、コピーしづらい。人手不足の中でコピーしづらいということはどういうことかというと、悪い側面を挙げれば、非効率、経験や勘に頼らざるをえないといった点があります。また、特定の人物のスキルに依存してしまうこともあります。
しかし、経験や勘があるからできることもありますし、特定の人のスキルは必要なものです。第一、全員同じだと、評価もできませんし、目標設定やモチベーションアップも難しくなります。
問題は、本来人間がやるべきことは何かということです。人がやるべきことは作業ではありませんし、全員同じことをしてほしいわけでもありません。
機械にできることは機械でやるべきです。ルールベースで整理できることであれば、計算機をつかえばいいですし、たくさんのデータから統計処理でできることがあれば、人工知能で処理すればいいのです。しかし、人工知能がある確率で出した答えを判断するのは人間です。意思決定や戦略立案、経営判断は人間がするべきことです。
デジタル化を推進する
デジタル化を推進するということは、正確に再現しやすい、コピーしやすいデジタルの性質をどうやって活用するかということです。またデジタルが活躍するためにはデータが重要です。デジタル化がしづらいと諦めるのではなく、できることを見つけてどんどんデータ化していくということが非常に重要です。そのうえで、人は人が得意なこと、やるべきところにフォーカスできます。
今、ロジスティクス業界は、まさに変革のときです。「今」決断すべきです。労働人口は毎日約2200人減少していることを忘れてはいけません。これまではずっと、人口が増加するなかでのビジネスでした。だからこそ属人性というものが、差異化するために非常に重要でした。しかしこれからは誰も経験したことのない人口減少の社会です。的確な意思決定と手立てを取らないと事業の失敗すらありえます。当然リスクもありますが、来年や再来年という話ではなく、今ジャンプできるかできないかが、5年後に大きな差となってしまうでしょう。
イノベーションは、非連続で起こります。ロジスティクス業界も非連続のイノベーションが今起きようとしています。
「AIR」を推進する
今、「AIR」という言い方を広めようとしています。「A」はAIと「I」はIoT、「R」はロボティクスです。ロボティクスというと本当のロボット、物体としてのロボットを想像しがちですが、ロボティクスのプロセスオートメーションという「RPA」のことです。
RPAとは、ルールに沿って単純に作業をこなすことで、比較的安価で導入できる点にメリットがあり、導入も導入後のフォローもAIほど難しくありませんから、RPAに取り組まれている会社も多いと思います。
RPAのステップ1はルールベースです。ルールベースであれば、答えがわかりきっていますから、結果を出しやすくなります。そういう意味でも、非常に大きな1歩となるのではないでしょうか。
データを共有し、シェアリングを実現する
私たちダイワロジテックでは、ロジスティクスにおいてデジタル化を推進し、プラットフォームをつくり、シェアリングを実現したいと考えています。お客様によっては自分たち専用のシステムをつくりたい、自分たちの思いどおりにつくってほしいという方もいます。しかし、そうしたお客様であっても、例えば在庫を共有する、出荷データを共有するといった、シェアリングできるポイントはたくさんあります。一緒にやれること、シェアできることをしましょうと提案しています。
逆に、ロボットなども含めてすべてシェアリングしたい、自社のためだけに投資をするのではなく、また大きなリスクを負うこともできないので、設備やシステムも含めてシェアリングしたいというお客様もいます。私たちダイワロジテックはこの両方に対応します。そのうえで、お客様の売り上げを伸ばす、あるいは利益をより多く出すことに貢献したいと思っています。
なぜロジスティクスの領域でシェアリングを行うのかというと、全体最適による効率化、無駄の排除です。投資リスクの分散は、シェアリングをすることによって当然可能になります。戦うという「競争」から共に作り上げる「共創」という領域になれば、さらにまた新しい世界というものが見えてきますし、そこで出てきた利益をまた次に使えるようになります。
一方、シェアリングに参加する人たちに対して求めなければならないこともあります。参加さえすれば、コストだけ下がると思っている人たちもいらっしゃいますので改めて言います。シェアリングに参加するということは、当然ですが、計画精度を上げなければなりません。「許容と我慢」と言っていますが、みんなで一緒に使うということですから、許容もしなければいけないし、我慢もしなければいけません。
そうすることで、成功を流用、コピーできるわけです。これが実現できれば、参加している全員にとって良い結果が生まれ、これからの市場で勝ち残ることができると信じています。
トークセッション ゲスト:学習院大学 経済学部経営学科教授 河合亜矢子
トークセッション ゲスト:セイノーホールディングス株式会社 執行役員 河合秀治
トークセッション ゲスト:SBロジスティクス株式会社 COO 安高真之
トークセッション ゲスト:大和ハウス工業株式会社 取締役常務執行役員 建築事業本部長 浦川竜哉
トークセッション ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎
トークセッション ゲスト:明治大学 グローバル・ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆
トークセッション ゲスト:株式会社 日立物流 執行役専務 佐藤清輝
トークセッション ゲスト:流通経済大学 流通情報学部 教授 矢野裕児
トークセッション ゲスト:アスクル株式会社 CEO補佐室 兼 ECR本部 サービス開発 執行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸
トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創業者 滝野 一征
トークセッション ゲスト:株式会社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介
トークセッション ゲスト:株式会社ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志
トークセッション ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和
スペシャルトーク ゲスト:株式会社ママスクエア代表取締役 藤代 聡
スペシャルトーク ゲスト:株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰
- 第1回 お互いのビジネスが「シェアリング」というコンセプトで結びついた
- 第2回 まずは見ていただいて、シェアリングの世界を感じていただきたい
- 第3回 シェアリング物流のコアで、かつ本質的なところは、進化すること
秋葉淳一のロジスティックコラム
トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式会社アッカ・インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和
トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式会社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏
「CREはサプライチェーンだ!」シリーズ
- Vol.1 究極の顧客指向で「在庫」と「物流資産」を強みとする「トラスコ中山」
- Vol.2 「グローバルサプライチェーン」で食を支える日本水産
- Vol.3 「当たり前を地道にコツコツ」実現したヨドバシカメラのロジスティクスシステム
- Vol.4 「新たなインテリア雑貨産業」を構築したニトリホールディングス
- Vol.5 物流不動産の価値を上げる「人工知能」が資産価値を上げる
- Vol.6「ロボット」が資産価値を上げる
- Vol.7「人財」が資産価値を上げる
- Vol.8「ビッグデータ」が資産価値を上げる
- Vol.9 AI、IoTがCRE戦略にもたらすこと
「物流は経営だ」シリーズ
土地活用ラボ for Biz アナリスト
秋葉 淳一(あきば じゅんいち)
株式会社フレームワークス会長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構築に携わる。
その後、多くの企業のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構築とそれに伴うビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式会社フレームワークスに入社、SCM・ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導入をサポートしている。
単に言葉の定義ではない、企業に応じたオムニチャネルを実現するために奔走中。