人が集まる場所には花の存在が欠かせません。
住まいの中でも、毎日の食事にまつわるダイニングやキッチンには、
花を取り入れて晴れやかな気分になりたいものですね。
今回はダイニングやキッチンに花を飾るポイントを、
未生流(みしょうりゅう)中山文甫(ぶんぽ)会・会長の中山高甫(こうほ)先生に伺いました。
ダイニングテーブル
みんなに愛される団らんの場
家族やお客さまでにぎわうダイニングでは、お互いの顔が見やすいように背は低めに、横に広がるようにいけましょう。花材はポピュラーなバラを中心に、2種類のピンクで濃淡をつけ、豪華に食卓を彩ります。
バラは重心が上にあるので、花全体のバランスを見ながら足元にボリュームを足しましょう。切り落としたバラの枝葉を足元にいけてあげると、統一感を保ちながらバランスを整えることができます。
花材の種類
- バラ
- グロリオーサ
- オクラレルカ
キッチンシンク
水回りに爽やかさを
キッチンには清潔感のある白やグリーンが合うでしょう。今回は水差しの形をした北欧の花器を用いました。背の高い花器の場合は、中に寒水石(かんすいせき:いけばなで用いられる足元石)を入れて、底上げをしてから剣山を入れるのがおすすめです。
いけるときは、まず「見立て」から始めます。じっくりと花を観察し、葉の付き方や茎の曲がり具合などの自然な表情をどのように美しく生かすのか考えましょう。その後全体のバランスを見て、茎や枝に手で力を加えて形を整えます。今回は、オーニソガラムアラビカムの下部の茎のゆがみを修正しました。矯(た)めるときはゆっくりと力を入れながら、茎が折れないように。硬い枝ものを矯めるときは、曲げたい方向と反対側に何か所か切り込みを入れてください。いけばなは武士によって育まれた文化なので、意外に力を使う場面もあるのです。ひと手間を加えることで、よりいきいきとした表情を楽しむことができます。
花材の種類
- オーニソガラムアラビカム
- サンダーソニア
- ポリポジューム
キッチン背面カウンター
素材や配置でシックさを演出
キッチンの背面に飾り棚がある場合は、ぜひインテリアに合ったイメージの花を飾りましょう。間接照明やおしゃれなグラスなど少し大人っぽい雰囲気には、紫のアンスリウムなど落ち着いた花が似合います。今回花器として使用したのは、砂糖を入れるキャニスター。花は花器以外にもいけられます。他に、ワインクーラーやガラス瓶もおすすめです。
器によって幅や背の高さが異なるので、主材の花は花器の2倍くらいの長さを目安にして切りましょう。いけばなは「間」の美学。3本のアンスリウムのように三角形を意識して花を配置し、「間」を空けることでそれぞれの花の良さを生かせます。美しい「間」をつくるために大胆に花を切る決断力を要するのが、いけばななのです。
花材の種類
- チューリップアンスリウム
- カーネーション
- レモンリーフ
カウンターデスク
すっきりとした香りに包まれて
家事の合間に読書を楽しむカウンタースペースでは、爽やかな香りが特徴のユーカリを飾り、日々の忙しさを忘れてリラックスしましょう。片側に壁がある場合は、反対側に枝を伸ばすようにいけるとバランスがとれます。
今回は椅子のファブリックと色を合わせ、主材には紫のトルコキキョウを。ブルースターも取り入れ、寒色系でまとめました。同系色で色を統一すると落ち着いた雰囲気になるので、集中したい場所にぴったりです。
花材の種類
- トルコキキョウ
- ユーカリ
- ブルースター
お花豆知識
花留めの工夫
剣山を使わなくても、「留め木」を用いて花を思い通りの位置や角度で固定する方法があります。切り落とした枝を留め木として花器の内側にはめ込み、留め木と花器のすき間に花材をいけます。最もシンプルなものは、花器の内径より少し長めに切った1本の留め木をはめ込む「一文字留め」。うまく枝をはめ込めないときは、セロハンテープを花器の口に1片貼ることで手軽に代用できます。Y字になっている枝を用いたり、一文字留めにもう1本留め木を加えて十文字にしたりする場合もあります。
花器の選び方
花をいける器にもさまざまな種類があります。初心者には、口が広くて浅い水盤がおすすめです。他にも、花瓶に花留めをせずそのままいける方法もありますが、上部に花が集中するため花器とのバランスに注意が必要です。専用のものでなくても、食器やかごなど自由な発想で選んで。花器も作品の一部なので、花材との調和が大切です。
アドバイス
中山 高甫先生 (なかやま こうほ)
「現代(いま)に生きるいけばな」を模索する流派、未生流中山文甫会の三代目会長。書や陶芸、音楽など異分野とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。(公財)日本いけばな芸術協会 常任理事
撮影場所:ダイワハウス花博xevoΣ展示場