住まいの安全を脅かすのは地震や豪雨といった自然災害だけに限りません。
社会情勢の変化や景気悪化などで増える強盗犯罪、
空き巣などの侵入犯罪から家族と住まいを守るためにできることとはどんなことでしょうか。
住まいの防犯性能や、安全・安心を備えたエクステリアデザインについて
ダイワハウスのエクステリアの担当者が解説します。
Profile
大和ハウス工業株式会社
住宅事業本部
東日本住宅設計室一課
主任技術者
舘 智徳
大型分譲地の街づくりおよび個人住宅や展示場のエクステリアデザインを手掛ける。地域の歴史や文化、地元の材料などをデザインや素材に取り込み、地域とつなげてその土地になじむ設計を得意とする。一級建築士、一級土木施工管理技士、一級造園施工管理技士、一級エクステリアプランナー。
オープン外構が防犯対策に効果的な理由
現在のエクステリアのトレンドは、塀や門扉などで敷地を区切らず、植栽でゆるやかに仕切ったオープン外構です。分譲地などで多く見られるスタイルですが、比較的少ない予算で施工できること、昔に比べて建物や敷地の面積が狭くなっている中でも開放感を演出でき、塀で囲うクローズド外構に比べて車の出し入れがしやすいことなどから、近年の主流になっています。
30年ほど前、1990年代にガーデニングブームが到来した頃は、アイアン調の門扉やフェンスをデザインに取り入れ、塀などで囲うことが好まれた時期もありました。こうしたクローズド外構は物理的に侵入しにくくなるものの、ひとたび塀を越えてしまえば死角に入れるので、犯罪を起こしやすい造りともいえます。その点でいえば、見通しの良いオープン外構は犯罪者が侵入工作をしているところも外から見えやすい点が抑止となり、防犯対策に効果的と言えます。
弱点である窓周りの対策は?
当然ながらオープン外構にもデメリットはあります。パブリックスペース(道路)とプライベートスペース(敷地)の境界が曖昧になり、庭に侵入されやすいともいえます。対策としては、仮に侵入されても室内には入れないように、弱点である窓には防犯ガラスを採用すること。
例えば、弊社の戸建住宅において、1階の窓すべてに標準採用している「防犯合わせ複層ガラス」は、2枚のガラスの間に特殊な樹脂フィルムを圧着したもの。そう簡単に割れない構造になっており、ガラス破りの時間が長引けば長引くほど近隣に気づかれるリスクが上がることを考えると、抑止・防止効果があるといえます。
また、踏みつけると大きな音がする防犯砂利を敷地の横や後ろ側に敷くのも有効です。2階からの侵入を阻止するために、物置など足場となるものの設置場所にも気を配りましょう。
プライバシーに配慮しつつ、建物外周に死角を作らない
もうひとつオープン外構で懸念されるのが、室内のプライバシーが守られにくい点です。日当たりの良い南面に大開口のサッシを設けるケースが多いですが、オープン外構だとカーテンを開けると丸見えになってしまいます。
この場合、塀のように全体的に囲うタイプではなくとも、部分的に目隠しになるフェンスを設置したり、植栽やウッドデッキに建てるデザインフェンスなどを組み合わたりして、外からの視線がちょうど見えないように計算して配置するといいでしょう。
また、近年第二のリビングとして過ごせるおこもり感のあるウッドデッキを採用する方もいますが、これも目隠しフェンスで高さを上げ過ぎるとフェンスの内側が犯罪者にとって潜みやすい死角になりかねません。外から人の気配が分かる程度の隙間のあるフェンスを採用すれば死角にならず、風通しや日当たりも確保できるでしょう。
先進の防犯カメラで玄関周りからの侵入を監視
窓周りや庭の工夫に加えて、最大の侵入経路である玄関にも対策をしておきましょう。ここでは例として、門柱に設置する防犯カメラ機能付きセキュリティインターホン搭載の宅配ボックスをご紹介します。
インターホンに内蔵されている防犯カメラは、訪問者のあるなしに限らず自宅前を24時間録画し、夜間でも鮮明に屋外の様子を撮影します。インターホンには従来の「呼出ボタン」の他にも「宅配ボタン」があり、宅配便に自動応答するように設定しておけば、直接対面することなく宅配ボックスで荷物を受け取ることができます。宅配業者を装った犯罪などから住む人を守り、お子さまだけの留守番時にも安心の機能です。また、呼び出しにはスマートフォンやタブレットで、外出先でもあたかも在宅時のように応答できるので(有料オプション)、不在時に訪問者が呼出ボタンを押したとしても、不在を悟られずに対応できます。
宅配ボックスはスマートフォンと連動させて荷物を受け取ることができるスマートキーを搭載。書留郵便の受け取りも可能(現金書留は不可)※1で、荷物の発送をすることもできます※2。
- ※1最寄りの郵便局で事前⼿続きが必要となります。なお、現⾦書留は受け取ることができません。
- ※2クロネコメンバーズ(無料)への⼊会が必要です。
この防犯カメラ&宅配ボックスは、もともとはダイワハウスとNasta社の共同で、社会問題の解決を目指して開発されました。再配達による宅配業者の労働力不足や、車などのエネルギー消費による環境悪化問題。それがコロナ禍を経て、置き配と非接触のニーズが高まり、防犯要素も加味してリリースされた形です。主にハードウエアではなく専用アプリでコントロールするので、世の中の動向に合わせてバージョンアップを行い、使い心地・安全レベルを常に更新していく仕組みです。
街全体の設計によって犯罪リスクを下げる
分譲地の例になりますが、「セキュレアガーデン豊川八幡駅南」(売主:大和ハウス工業)では前述の防犯カメラを各戸に取り付ける他にも、以下のような取り組みを行っています。
分譲地内の公園や道路に防犯カメラを設置
分譲地内の公園や外部からの出入口となる道路に複数台の防犯カメラを設置し、不法行為や迷惑行為を抑制します。街角に付ける防犯カメラは、設置場所やコスト、管理者や維持費をどうするかがネックになりがちで、マンションや大規模分譲地などのように管理組合が設立されていないと導入が難しく、戸建住宅ではあまり設置が進んでいませんでした。しかし、この分譲地では計画段階から織り込んで採用しました。街角の防犯カメラと、全戸に取り付けた玄関先の防犯カメラで極力死角を減らし、安全・安心な暮らしを支えます。
夜間照明の確保
こちらは住宅分譲地としては豊川市初※3となる、無電柱のすっきりとした街並みが特徴です。街路灯を取り付ける電柱がないため、交差点部に街路灯を計画的に設置しています。交差点部ではある程度人の顔が視認できる明るさ※4も確保しています。
- ※3当分譲地は、豊川市内の分譲地において、初の無電柱分譲地。※豊川市初の無電柱の住宅団地(2022年7⽉当社調べ)
- ※4警察庁「安全・安心まちづくり推進要綱」照度基準クラスA:4m先の人の顔の概要(目・鼻・口)が分かる明るさ
また、無電柱なので家と家の間の街路灯はないですが、道路から2m以内に照明を入れるルールを作り、門柱にもしっかり照明を組み込んでいます。表札灯の裏側にもアクリル板を入れ、表側だけでなく裏側にも明かりが漏れるようにして、一帯の明るさを確保しています。
明暗センサーを採用し、暗くなると自動点灯で街なみをライトアップ。防犯に配慮すると同時に、照明が作る美しい景観で「自分の街に帰ってきた」というわが家への愛着が増すよう、街全体を設計しています。
豊かなコミュニティそのものが犯罪の抑止力につながる
いろいろと防犯の工夫をご紹介してきましたが、一番の犯罪防止策は何といっても街そのものに愛着を持つことだと、私は考えます。
前述した分譲地では外構や建物について一定のルールを定めた「まちづくりガイドライン」も設けました。住む人同士が互いを尊重しながらこのルールを守って良好な住環境を作り上げることで、将来に亘って愛着が持てるような街へと育むことを目的にしています。街に愛着が持てれば自然と豊かなコミュニティが形成され、近隣住民の様子や異変にも気づきやすくなります。年月を経ても空き家になってしまうのではなく、親から子へと代々受け継がれる活気のある街になることを目指しています。
日本では昔から「向こう三軒両隣」といって、お互いが助け合う良き習慣があります。防犯ガラスや防犯カメラなどのハード面はもちろん、住む人同士が街を見守るソフト面の取り組みなども複合的に合わされば、犯罪のない安全・安心な街づくりにつながるはずです。
まとめ
侵入口としてまず狙われるのは「窓」です。侵入窃盗犯は「5分で侵入できなければ諦める」といわれているので、窓周りの対策をしっかり行い、敷地に死角を作らないことが大切です。また、宅配業者を装った犯罪については、今回ご紹介した防犯カメラ機能付きセキュリティインターホンが有効です。いくつかの対策を積み重ねて、「もしもの備え」を強化しましょう。