野原を駆け回ったり、海や山で遊んだりしている時、
子どもたちはさまざまなことを吸収しています。
自然体験が子どもをどう成長させてくれるのか、
家庭環境づくりの観点から、専門家の先生に伺いました。
ノーベル賞受賞者など優れた科学者の自伝を見聞きすると、子どものうちは学校の勉強そっちのけで、自然の中で目一杯遊んでいたという方が少なくないようです。私見ですが、小学校から高校くらいまでの学力は、その後の功績に何ら影響を与えないのではないかとさえ思います。私自身の子ども時代も、近所の空き地で虫捕りをしたり、木に登ったり、体を動かしたりして、遊んでばかりいたものでした。当時(昭和30〜40年頃)は都心部にもそうした空き地がたくさんあったのです。
現代は交通事故の頻発や、子どもを狙った犯罪の増加などを背景に、子どもを外で遊ばせるのをためらう親御さんが増えているように感じます。ただ、外遊びは室内遊びに比べて、試行錯誤や発見の回数が格段に多くなります。特に自然の中で遊ぶことは、子どもの能力を飛躍的に伸ばしてくれます。
子どもは自然体験を通じて物事を観察する力を磨き、身体能力を高めることができます。また、さまざまな遊びを通じて主体性も養えるでしょう。自然は、賢い大人になるために必要な力を養う最良の教材だと言えます。
住んでいるのが自然豊かな地域なら、子育てにおいてはとても幸運です。子どもがいつでも自然の中で遊べるような環境に引っ越すことができればベストですが、それがかなわない場合は、毎日の生活で自然体験ができる住まいづくりをお勧めします。
手軽に始められるのは、庭やバルコニーで、いつもスーパーで買う野菜を育ててみること。たとえ小さなプランターでも、子どもは多くを学べます。どの時季に苗を植えれば良いのか、実を食べに来る虫や鳥からどう守ればいいのか。きれいな形の野菜を作るのがいかに難しいか。試行錯誤を繰り返し、一生懸命手入れをして育てた野菜を食べる経験により、子どもは観察力や思考力を身に付けられるでしょう。
また、桃の節句に桃の花を飾ったり、冬至には柚子を浮かべたお風呂に入ったりと、日本古来の自然との付き合い方を暮らしに取り入れるのも一つの方法です。
テラスを大きく確保して、子どもたちがいつでも遊べる場所に。DIYの作業スペースとしても活用できます
デッキを室内の床の高さと揃えて設け、鉢置きスペースに。立体的な庭づくりが楽しめます
ゴールデンウィークや夏休みなどの長期休暇には、観光地や遊園地を訪れるのもいいですが、自然に触れながら遊べる場所に出かけることをお勧めします。
自然の中での遊びとして、ぜひ実践していただきたいのがたき火です。私が主催する教育相談事務所では、定期的にたき火のイベントを開いているほどです。
たき火に適した材料を探し、石を組んでかまどを作り、空気が入るように考えながら薪をくべていくと、どんどん炎が大きくなります。火が安定したら、何かを焼いて食べてもいいし、じっと眺めているだけでも楽しめるでしょう。たき火は子どもには成長を、大人には心の安らぎをもたらしてくれます。
松永 暢史(のぶふみ)先生
教育環境設定コンサルタント。教育や学習の悩みに答える教育相談事務所V-net(ブイネット)を主宰。主体的な子どもに育てるための方法を提案している。著書に『賢い子どもは「家」が違う!』(リベラル社)、『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎)など。
子どもを育てる家づくりバックナンバー
2017年2月現在の情報となります。