「料理に時間がかかる、片付けが面倒など、なんとなく効率が悪いのは、収納場所と動線が合っていないからかもしれません」。西口さん宅のキッチンでは、〈冷蔵庫から食材を出す⇒シンクで洗う⇒調理台の上にまな板を置き包丁で切る⇒フライパンに油をひき、炒める⇒調味料で味付けをする〉と、調理時は横に移動するだけ。また、〈食器を洗う⇒拭く⇒しまう〉は、後ろを振り向くだけで、1歩も歩きません。何をどこに置けばスムーズな動線が描けるか、作業の手順を確認しながら決めましょう。
無駄な動線をなくしたキッチン
西口さん宅のキッチンは通路幅は75cm。冷蔵庫→シンク→コンロが一列に並んでいるので動線がシンプル。振り向けば食器棚、ゴミ箱、調理家電に届き、無駄な動きがありません。キッチンは、コンパクトなほど作業効率がよく、使いやすいのですが、スペースが限られるため、どこに何をどのように置くのかがポイントとなります。
「もっとも使いやすい位置は目線からひざにかけて。このゴールデンゾーンによく使う物を収納すると出し入れにストレスがたまりません」と西口さん。体のサイズ、使う頻度によって位置を決めましょう。「わが家は子どもの食器は低い位置に、お菓子は手前に、自分で出せるようにしています」
収納空間は区切れば区切るほど使いやすくなります。鍋やボウルなどを重ねてしまいがちなシンクやレンジ下の大きな引き出しは、収納グッズで空間を区切って立てて収納すれば、ワン・アクションで取り出せ、調理の効率が落ちません。食器棚は棚板を増やすことで空間が区切れます。また、食器や食品は、朝食用、洋食・和食用などグループ分けをしておけば、まとめて取り出せてスムーズです。
システムキッチンの収納
使う場所に使う物を、取り出しやすく収納して、調理をスムーズに。
●シンク下
収納ボックスで仕切り、ボウル、ざるなどを立てて収納。まな板、包丁などよく使う物は手前に。
1番下の引き出しは手前にポリ袋などを取り出しやすくセット。奥は使用頻度の低い保存容器類を。
●調理スペース下
塩、砂糖、だし、粉類などよく使う調味料類を中身が見える容器に移し、ラベルを貼って収納。
しょうゆやみりん、酢、酒類など液体調味料を和風・洋風で分け、計量スプーンも一緒に収納。
●レンジ下
手前にはコンロで使う調理道具や油類を。奥には、鍋やフライパンを重ねず取り出しやすく立てて収納。調理しながらチェックできるよう、よく使うレシピ本も収納。
食器棚の収納
食器棚は収納する高さがポイント。手の届きやすい位置に使用頻度の高い物を収納すれば、作業の流れもスムーズです。
引き出しの中は、手の届きやすい上段・中段にカトラリーや日常食器を。下段には食品のストックを。
棚板を増やして、なるべく重ねず取り出しやすく。手の届きやすい位置に朝食用の器やグラス、マグカップ、高い位置に来客用の器を収納。
死角を利用する
お知らせやカレンダーなどの紙類は、ダイニングや通路から見えない壁の裏側などを利用して、1か所にまとめておけば、雑多な印象になりません。
子どもとの時間を大切にしながら、家事を効率よくこなしたいというのは子育て中の家族の悩みです。「わが家では家事をしながら目が届く場所に子どもの居場所を設けることと、子どもの収納を工夫することで解決しました」と西口さん。キッチンカウンターから見えるダイニングの一角に子どもが遊べるスペースを、壁一面に子どものおもちゃなどの収納スペースを設けています。「リビングに置いていたおもちゃを移動したことで、来客時も慌てて片付ける必要がなくなり、安心してキッチンでの作業ができるようになりました」
ダイニングの一角に設けた子どもスペース
壁一面に設けた子どものための収納。子どもが出し入れしやすいように扉を外したオープンな棚に、大まかな分類で収納しています。子どもの年齢に応じて、細かく分類するなど、収納方法を変えていきます。
「子どもは4歳と2歳。まだ小さいのであまり細かく分類せずに、定位置を決めています」
子どもが字を読めなくても、収納位置にラベリングしておくことで、大人もどんなおもちゃかわかり、子どもとの共通認識ができる。
床置きの大きなおもちゃも、駐車場のようにテープで定位置をわかりやすくマーキング。「2歳の娘も自分で片付けていますよ」
西口理恵子さん
整理収納アドバイザー、インテリアコーディネーター。不動産会社にて新築マンションの営業・企画に携わった後、独立。テレビ・雑誌・講演などで活躍中。著書に『ずっと美しく暮らすシンプル収納の家づくり(ワニブックス)』『捨てなくてもすっきり暮らせる50の智恵(宝島社)』などがある。
2017年10月現在の情報となります。