実家を相続したものの、実際に住むこともなく空き家になるケースが増えています。
実際、住宅7戸のうち1戸が空き家※ともいわれています。
空き家を維持管理するのは、金銭的にも精神的にも大きな負担に。
できるだけ早くに対応できるよう、事前に対策を考えておくことが大切です。
※総務省「平成30年住宅・土地統計調査」より。
空き家には維持費がかかる
空き家のまま保有していると、家の維持費がかかり続けます。固定資産税や市街化区域の不動産にかかる都市計画税などの税金、メンテナンスのために必要な水道光熱費、火災保険、庭の草木の剪定(せんてい)や建物の修繕費用など、負担が大きくなっていきます。
空き家をどう活用する?
空き家の活用方法は「売る」「貸す」などが考えられ、それぞれメリット、デメリットがあります。また解体して更地にすることで、新たな活用方法が見つかることもあります。ただし、固定資産税や都市計画税( 市街化区域の場合)が高くなるのでご注意を。住宅用地向けの軽減措置を受けている場合、住宅用地と認められなくなると、税金は3~6倍になってしまいます。相続した家族が住み、住居費のコストを抑えることができるのが、一番の空き家の活用方法かもしれません。
空き家を「売る」「貸す」場合のメリット・デメリット
必ず買い手や借り手がつくとは限りません。事前に不動産会社などにリサーチしておきましょう。
メリット | デメリット | 費用 | |
---|---|---|---|
家のまま 売る |
●現金化できるため、 相続人の間で分割しやすい。 ●売却のための費用が少ない。 |
●売却先が限られる。 | 仲介手数料 |
更地に して売る |
●現金化できるため、 相続人の間で分割しやすい。 ●売却先が見つけやすい。 |
●解体費用がかかる。 | 解体費用 仲介手数料 |
家のまま 貸す |
●定期的に収入が得られる。 ●手続き等が少ない。 |
●リフォーム代がかかる。 ●借り手がつかない場合 がある。 |
リフォーム代 仲介手数料 |
更地に して貸す |
●定期的に収入が得られる。 ●新たな活用法(駐車場、 資材置き場等)が考えられる。 |
●解体費用がかかる。 ●固定資産税が高くなる。 |
解体費用 仲介手数料 |
国の制度を利用する
相続した土地を国に引き取ってもらえる制度「相続⼟地国庫帰属制度」が、2023年4月27日から開始。また、相続した空き家を売却するときには「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」の特例があります。これらの制度も視野に入れ、相続した空き家をどうするか考えるとよいでしょう。
相続した土地や空き家を手放すときに利用したい制度
相続土地国庫帰属制度
2023年4月27日から開始される、土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度。ただし、抵当権等の設定や争いがなく、建物もない相続で得た土地などの要件(※1)があり、審査手数料のほか、10年分の土地管理費相当額を国に納付する必要があります。
※1 国が引き取らない土地の例…●建物がある。●担保権などが設定されている。●管理または処分を阻害する樹木、工作物などがある。●隣人とトラブルがある。
空き家の譲渡所得の3000万円特別控除の特例
相続した空き家を売却するとき、売却額から家の取得費や仲介手数料などの譲渡費等を差し引いた損益がプラスなら税金がかかりますが、一定の要件(※2)を満たせば、譲渡所得の金額から最高3000万円を控除できます(2023年12月末までに売却した場合)。つまり、売却額から取得費や譲渡費等を差し引いて、3000万円までなら税金がかかりません。
※2 相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3000万円特別控除適用要件の例…●1981年5月末までに建築された建物。●相続発生から3年後の12月末までに売却。●被相続人が亡くなられた時点で同居者がいない。●耐震リフォーム済みの家屋もしくは家屋を取り壊して敷地のみの売却。●相続時から売却時までの間、誰も住んでいない。●売却価格は1億円以下。
※掲載の情報は2022年6月時点のものです。内容は変わる場合がありますので、ご了承ください。
ファイナンシャルプランナー 福一 由紀