(1)通所介護
通所介護については、一定規模以上の事業所に対する評価のあり方について、事業規模別の収支差率の状況等を踏まえ、スケールメリットを考慮しつつ、全体として事業所の規模の拡大による経営の効率化に向けた努力を損なうことがないようにするとの観点から、規模の設定及び単位を見直す。また、通所介護が提供する機能訓練の体制及びサービス提供方法に着目した評価を充実する。
(2)通所リハビリテーション
リハビリテーションの利用者が、医療保険から介護保険に移行しても、ニーズに沿ったサービスを継ぎ目なく一貫して受けられるよう、短時間・個別のリハビリテーションついての評価を行うとともに、リハビリテーションの実施者について医療保険との整合性を図る。さらに、利用者のアクセスを向上し、医療から介護への移行をよりスムーズにするという観点から、診療報酬において脳血管等疾患リハビリテーション又は運動器疾患リハビリテーションを算定している医療機関については、通所リハビリテーション事業所としての指定があったものとみなす。
リハビリテーションマネジメント加算については、「PDCAサイクル」の流れを評価したものであること等を踏まえ、月に1 回の評価とし、短期集中リハビリテーション実施加算については、早期かつ集中的なリハビリテーションをさらに充実する観点から報酬上の評価を見直すとともに、3か月以内に限定にすることとする。併せて、3か月以降の個別リハビリテーションについて、新たな評価を行う。
また、理学療法士等を手厚く配置している事業所を評価するとともに、効率的な事業所経営を可能にする観点から、理学療法士等の人員配置基準については、1 以上確保することを条件に利用者数に比例した常勤換算従業者数とし、併せて1人の従業者が対応できる利用者の上限について見直す。
一定規模以上の事業所に対する評価のあり方については、事業規模別の収支差率の状況等を踏まえ、スケールメリットを考慮しつつ、全体として事業所の規模の拡大による経営の効率化に向けた努力を損なうことがないようにするとの観点から、規模の設定及び単位を見直す。
(3)療養通所介護
医療ニーズ及び介護ニーズを併せ持つ在宅の中・重度の要介護者に対するサービスである療養通所介護事業所の経営の安定化を図り、安定的なサービスを提供する観点から、利用定員の見直しを行うとともに、専用の部屋の面積基準について、他のサービスの面積基準との均衡を考慮し、緩和する。
(1)短期入所者生活介護
短期入所者生活介護については、基準を上回る夜勤職員の配置を評価するとともに、入所者の重度化等に伴う医療ニーズに対応する観点から、常勤の看護師の配置や基準を上回る看護職員の配置を評価する。その際、併設事業所においては、本体施設と一体の人員配置を評価する。
(2)短期入所療養介護
夜間や緊急の医療行為が必要な場合であっても対応できる有床診療所を活用することにより、サービス提供事業所を拡充する観点から、診療報酬において「診療所後期高齢者医療管理料」を算定している一般病床等における算定を可能とする。
短期入所中の集中的なリハビリテーションについては、その効果が高いことを踏まえ、介護老人保健施設における短期入所療養介護での個別のリハビリテーションの提供を評価する。
また、緊急時のニーズへの対応をより拡充する観点から、緊急時短期入所ネットワーク加算の算定要件を見直す。さらに、日帰りの短期入所療養介護(特定短期入所療養介護)について、かかる労力を適切に評価する観点から、現在の1日単位の評価から、サービス提供時間に応じた評価に見直す。
特定施設入所者生活介護については、手厚い人員配置に要する経費について、制度的に利用者負担に求めることができる仕組みとなっているとの費用負担の特性等を踏まえ、介護従事者の処遇改善を図る観点から、施設サービス等との均衡に配慮しつつ、基本サービス費の見直しを行う。
また、医療との連携を強化する観点から、特定施設の看護職員と協力医療機関、主治医等との連携を評価する。
福祉用具貸与の価格については、同一製品で非常に高額になるケース等(「いわゆる外れ値」)が一部存在していること等を踏まえ、競争を通じた価格の適正化を推進するため、製品毎等の貸与価格の分布状況等の把握・分析・公表や、介護給付費通知における同一製品の貸与価格幅等の通知を可能とするなど、都道府県、市町村の取組を支援する。
また、福祉用具サービスの向上、貸与種目と販売種目の整理等保険給付のあり方については、状態像に応じたサービス提供の状況、メンテナンスに係る実態把握、有効性等について早急に調査研究を行い、「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」において、引き続き議論・検討を行う。
(1)小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護については、平成18年に創設された新しいサービスであり、高齢者の在宅における生活を支える重要な柱となるサービスとして、引き続き普及を図る必要がある。
その際、利用者数が多い事業所では収支が安定化する傾向にあることを踏まえ、居宅介護支援事業者との円滑な連携の推進や利用者の増加を図るとともに、人員配置基準の見直しにより、経営の効率化のための措置を講じた上で、事業開始時一定期間における経営の安定化を図るための報酬上の手当を行う。
また、利用者ニーズに対応するため、認知症高齢者への対応や常勤の看護職員の配置を評価する。
(2)夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護については、利用者の確保等を通じた事業所の経営の安定確保を図る観点から、日中におけるオペレーションサービスも評価するなど、利用者の24時間の安心確保に資する仕組みを構築するとともに、看護師、介護福祉士等とされているオペレーターの資格要件に、介護職員基礎研修修了者及び介護支援専門員を追加する。
(1)認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
グループホームについては、地域の認知症介護の拠点として、グループホームを退所する利用者が自宅や地域での生活を継続できるように相談援助する場合を評価するとともに、利用者の重度化や看取りにも対応できるようにする観点から、報酬・基準を見直す。
(2)認知症短期集中リハビリテーション(老人保健施設、介護療養型医療施設、通所リハビリテーション)
認知症短期集中リハビリテーションについては、軽度者に加えて中等度・重度の者についても効果があるとの調査結果を踏まえて、対象を中等度・重度の者に拡大するとともに、介護老人保健施設のほか、介護療養型医療施設及び通所リハビリテーションにおける実施について、報酬上の評価を行う。
(3)認知症の行動・心理症状への対応(短期入所系サービス)
認知症高齢者等の在宅生活を支援する観点から、家族関係やケアが原因で認知症の行動・心理症状が出現したことにより在宅での生活が困難になった者の短期入所系サービス及びグループホームのショートステイによる緊急受入れについて、報酬上の評価を行う。
(4)若年性認知症対策(施設系サービス、短期入所系サービス、通所系サービス、グループホーム、小規模多機能型居宅介護)
若年性認知症患者やその家族に対する支援を促進する観点から、通所系サービス、短期入所系サービス、入居系サービス、施設系サービスにおいて若年性認知症患者を受け入れ、本人やその家族の希望を踏まえた介護サービスを提供することについて、報酬上の評価を行う。これに伴い、現行の通所系サービスにおける若年性認知症ケア加算は廃止する。
(5)認知症専門ケア加算(施設系サービス、グループホーム)
専門的な認知症ケアを普及する観点から、グループホームや介護保険施設において、認知症介護について一定の経験を有し、認知症ケアに関する専門研修を修了した者が介護サービスを提供することについて、報酬上の評価を行う。
(6)認知症の確定診断の促進(介護老人保健施設)
認知症の確定診断を促進し、より適切なサービスを提供する観点から、認知症の疑いのある老人保健施設入所者を認知症疾患医療センター等に対して紹介することについて、評価を行う。
介護保険施設については、「生活重視型の施設」又は「在宅復帰・在宅生活重視型施設」等として、医療保険との機能分担の明確化を図りつつ、各施設の特性に応じた機能の明確化・強化を図る。
(1)介護老人福祉施設
介護老人福祉施設については、要介護度の高い高齢者を中心とした生活重視型施設としての位置付けを踏まえ、介護が困難な者に対する質の高いケアを実施する観点から、認知症高齢者等が一定割合以上入所しており、入所者数に対し介護福祉士を一定割合以上配置している施設を評価するとともに、基準を上回る夜勤職員の配置を評価する。さらに、入所者の重度化等に伴う医療ニーズに対応する観点から、常勤の看護師の配置や基準を上回る看護職員の配置を評価するともに、看取り介護加算については、重度化対応加算の要件のうち看取りに関する要件を統合するとともに、施設内における看取りの労力を適切に評価するため、看取りに向けた体制の評価と看取りの際のケアの評価を別個に行うこととする。これらに伴い、重度化対応加算は廃止する。
なお、これらの評価にあたっては、比較的小規模な老人福祉施設について、実態調査の結果を踏まえ、その経営規模による影響に着目した介護報酬上の対応を行う。
また、外泊時費用について、介護老人保健施設等と同様に、評価の適正化を行う。
(2)介護老人保健施設(介護療養型老人保健施設を除く)
介護老人保健施設については、入所者の在宅復帰支援機能を強化する観点から、次の見直しを行う。
介護老人保健施設における夜勤の職員配置については、現在の配置実態を踏まえ、夜間の介護サービスの質の向上及び職員の負担軽減の観点から、基準を上回る配置を行っている施設に対し、報酬上の評価を行うとともに、介護老人保健施設における実態を勘案し、看取りについて報酬上の評価を行う。
在宅復帰支援機能加算については、介護老人保健施設における在宅への退所者の割合に応じた段階的な評価を行う。
リハビリテーションマネジメント加算については、「PDCAサイクル」の流れを評価したものであること等を踏まえて本体報酬に包括するとともに、入所後間もない期間に集中的に行うリハビリテーションを推進する観点から、短期集中リハビリテーション実施加算の評価を見直す。加えて、介護老人保健施設における言語聴覚士の配置の実態を踏まえ、人員配置基準上、言語聴覚士を理学療法士及び作業療法士と同等に位置付ける。
また、事業の効率的な運営を可能とする観点から、支援相談員の人員配置基準について見直しを行う。
入所者を試行的に退所させ、介護老人保健施設が居宅サービスを提供する場合に算定する試行的退所サービス費については、その算定実績等を踏まえ、退所時指導加算の一部(退所が見込まれる入所者を試行的に退所させる場合)として算定することとする。
外泊時費用については、利用者が入院・外泊期間中において居室が当該利用者のために確保されているような場合は、引き続き居住費を徴収をすることができることや必要となるコストの実態を踏まえ、その評価を適正化する。
(3)介護療養型老人保健施設
介護療養型老人保健施設については、療養病床からの転換の受け皿として、入所者に対する適切な医療サービスの提供が可能となるよう、医薬品費・医療材料費や医師によるサービス提供といった入所者に対する医療サービスに要するコスト、要介護度の分布といった実態を踏まえ、報酬上の評価を見直す。
また、「医療機関」から入所した者の割合と「家庭」から入所した者の割合の差が35%以上を標準とする施設要件については、周辺における医療機関の有無や転換前の医療機関の病床数に応じた特例を設ける。
さらに、療養病床を有する医療機関が、転換の前後で全体のベッド数を変更することなく、病棟の一部を介護療養型老人保健施設に転換する場合、転換前後で夜間の看護・介護職員の配置職員数が増加することのないよう、夜間配置基準の特例を設ける。
(4)介護療養型医療施設
介護療養型医療施設におけるリハビリテーションについては、医療保険との役割分担の明確化や整合性を図る観点から、理学療法(I)及び作業療法について、医療保険における脳血管疾患リハビリテーション料(III)等と人員配置基準が同様であることを踏まえ、評価を見直す。併せて、リハビリテーションマネジメント加算及び短期集中リハビリテーション加算について、介護老人保健施設と同様の見直しを行う。
また、言語聴覚士が集団に対して実施するコミュニケーション療法について、報酬上の評価を行うとともに、ADLの自立等を目的とした理学療法等を行った場合の評価については、診療報酬と同様に報酬体系の簡素化の観点から見直しを行う。
さらに、介護療養型医療施設における夜勤の職員配置については、現在夜間勤務等看護加算で評価しているところであるが、要介護度の高い者が入所していること等を踏まえ、基準を上回る職員配置を行っている施設に対し、報酬上の評価を行う。
外泊時費用については、介護老人保健施設と同様、その評価を適正化するとともに、入院中の患者が、他医療機関を受診した場合についても同様にその評価を適正化する。
管理栄養士又は栄養士の配置を評価した栄養管理体制加算については、その算定実績を踏まえ、基本サービス費に包括して評価するとともに、栄養マネジメント加算については、栄養マネジメントの適切な実施を担保する観点から、その評価の見直しを行う。
口腔機能向上加算、栄養改善(栄養マネジメント)加算及びアクティビティ実施加算については、サービス提供に係る労力等を適切に評価する等の観点から、その評価の見直しを行うとともに、アクティビティ実施加算について、運動器機能向上加算、栄養改善加算、口腔機能向上加算に係る届出を行っている事業所についても算定を認める。
また、サービスが必要な者に確実にサービスを提供する観点から、栄養改善(栄養マネジメント)加算、口腔機能向上加算について、対象者の基準を明確化する。
さらに、医療と介護の連携を図る観点から、歯科医療を受診している場合であっても、本加算が評価しているサービス内容と重複しない範囲についての評価の見直しを行う。
一方、介護保険施設において、介護職員が入所者に対して計画的なケアを行うことができるよう、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が日常的な口腔清掃等のケアに係る技術的指導・助言を行う場合に評価を行う。
利用者の要支援状態の維持・改善を評価する事業所評価加算については、引き続き継続するとともに、事業者の目標達成に向けたインセンティブを高め、利用者により適切なサービスを提供する観点から、要支援状態の維持をより高く評価する方向で算定要件の見直しを行う。
<資料の出典元>第61回社会保障審議会介護給付費分科会資料(平成20年12月3日開催) 資料1-3より