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Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。
連載:みんなの未来マップ
2024.10.31
その領域で最先端を走るイノベーターたちの研ぎ澄まされた感覚では、どんな未来が見えているのでしょうか? もしかしたら彼らには私たちとは違ったユニークな未来が見えているのかもしれません。
今回「未来の景色」を描いてもらったのは、東京・蔵前で廃棄素材を蒸留してジンを生み出す、エシカル・スピリッツのCTOを務める山口歩夢さん。現在取り組んでいる"とある研究"がお酒業界のこれからを紐解くカギになるそうです。
山口さんの手がけるジン、その未来はどうなっていると思いますか?
未来の手がかりになるお酒を今、研究しているんです。それが「木の酒(プロジェクト名「WoodSpirits」)」というお酒です。これまでも木の樽で熟成させたり、木を漬け込んだりしたお酒はありました。僕たちは、木そのものを細かく砕いて発酵、蒸留させてお酒にしようとしているんです。
僕たちが造るジンは、何かしらひとつは未活用素材を使用していますが、これも森の間伐の際に生まれる「間伐材」や、従来の木材としての利用が困難なほど曲がってしまっている木材、木の先端部分などの林地未利用材を使うことができます。
技術的には難しいのでしょうか。
かなり難しくて、目下、国立研究開発法人森林総合研究所と共同で研究に取り組んでいるところです。肝になるのが、とにかく木をとんでもなく細かい粒子になるまで粉砕することなんですよね。インクジェットプリンターのインクや化粧品のパウダーをつくる時に使われていた特殊な技術を応用して、木をナノレベルにまで粉砕します。
特殊なミキサーで木材を天然水とともに微粉砕。クリーム状(スラリー)にすることで、酵母が木材を分解、発酵できる状態を実現(エシカル・スピリッツ提供)
木からアルコール分や味がでるのでしょうか。ちょっと想像がつかないです。
ですよね。実は木にもアルコールのもとになる、糖分があります。ざっくりと説明すると、木にはリグニンという物質があって、セルロースという糖の塊とくっついているんですが、ナノレベルにまで粉砕することで、セルロースが露出してくるんです。出てきたセルロースを酵母に食べさせることでアルコールが生成されます。
こうしてできた「木の酒」は、従来の木を漬け込んだお酒と違って、木そのものの味がする。とんでもなく豊かな木の香りがするんですよ。今までの木を使ったお酒とはまったくの別物です。スギ、ミズナラなど木の種類はもちろん、樹齢や産地などによっても味が全然異なる可能性があり、とても面白いんです。
エシカル・スピリッツ提供
この研究が進めば、いろんな"樹木の味"を楽しめるようになるし、もしかしたら、土や石も蒸留してお酒にできる未来がやってくるかもしれませんね。
石も蒸留する未来はすごいですね。どうしてそこまで探究心があるんですか?
おいしいという感情に興味があるんです。昔から思ってたのは、「おいしい」を嫌いな人っていないよな、ということ。とにかくハッピーな感情じゃないですか。もちろん人によるし、環境や、文化によって違います。
ですが、どんな人でも、おいしいからは逃げられない。だから「おいしいという感情」を極めたら世界に打って出れると思っているんですよね。
1995年生まれ。東京農業大学醸造科学科を卒業し、同大学院で人間の味覚について研究する。 在学中から酒造に関わり、2020年にエシカル・スピリッツを共同で立ち上げる。最高蒸留責任者CTOとして、同社のすべてのジンづくりを主導する。地方を起点にウイスキーづくりなどにも携わる。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。
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