生産緑地の2022年問題
2021年1月、都市部でありながら緑地も多く残る、東京都西東京市の豊かな街並みに、ヴァンヴェール碧が完成しました。敷地面積およそ517坪、2階建て、間取りは1LDK・2LDK・3LDK合わせて18世帯、京町家風の外観と和の外構が目を引く、ペット共生型のコンセプト賃貸住宅です。
以前は生産緑地で、造園業で使用する植木の生産などを行っていました。生産緑地には、2022年問題といわれる、指定解除の問題があります。解除後は税の優遇措置が受けられなくなることから、オーナー様は特定生産緑地として延長するか、土地を売却するか、あるいは別の用途に使うかという選択を迫られています。
今回、ご高齢のご両親に代わって土地活用を進めてきた、オーナー様ご子息の下田様は、生産緑地を解除し、賃貸住宅を建てるというご決断をされました。「元々父が造園業をしていましたが、高齢で引退し、私も会社員だったので、家業を継ぐことは難しいと思い、解除することにしました」と、解除の理由について話されています。
生産緑地を解除し、賃貸住宅を建築するという今回のプロジェクトの指揮を執った、大和ハウス工業の近藤は、まず資金面での対策を検討しました。生産緑地の解除となると、税制面の優遇がなくなってしまいます。固定資産税や相続に関する税務対策、さらに、収入の対策を合わせて進めていきました。
税務対策や収支計画の試算には、大和ハウス工業が独自に開発したPDBシステム(Personal Data Base System)を活用。徹底したシミュレーションの結果、相続時の納税資金を確保する必要が判明します。この結果から、近藤は、生産緑地全体のおよそ7割を活用し、3割を納税資金として残す、部分解除が最適であると判断しました。この提案に対し、下田様は、「ある程度、自分でも相続の金額の想定はしていたのですが、PDBシステムで提案をしていただき、数値で示していただいたので、とてもわかりやすくて、それがよかったと思います」と評しています。
個性が光る、ペット共生型和風賃貸住宅
すでに所有されている1棟目の賃貸住宅がハイグレードタイプということもあり、2棟目となる今回の計画では、下田様には、「何か個性があるようなものを建てたい」というご要望がありました。さらに、このエリアは競合する賃貸住宅が比較的多く、その中でより競争力のあるものにする必要がありました。そこで近藤は、京町家風の要素を取り入れた「セジュールウィット京和風」を提案します。また、最近ペットを飼う方が増えてきているということを踏まえ、ペット共生型というコンセプトを合わせて提案しました。
設計を担当した大和ハウス工業の牧田は、個性際立つ和風の外観を引き立てるため、試行錯誤を重ねました。路地が長く、奥に広い敷地だったため、コの字型の1棟とすることで、敷地を有効活用しました。各世帯の玄関をコの字の内側に向けることで、法的に必要になってくる避難通路を効率よく確保しつつ、中庭のような囲われた空間に仕上げることができます。
外構は、造園業を営んでいたオーナー様が選んだ石をはじめ、四季を感じられるような植栽を配置。ご入居者同士のコミュニケーションの場となる、アプローチ空間となっています。
他にもさまざまな工夫を施しました。ペット共生型というコンセプトのもと、ペット用の足洗い場やスロップシンク、キャットウォークを設置。また、コロナ禍でニーズが高まっているテレワークデスクを完備、さらにおうち時間を充実させる大型のキッチンを導入しました。
こうして、単身の方からファミリーまでご入居いただけるような、全12タイプの間取りが完成しました。賃貸住宅の競合の多いこのエリア、引渡し後の反応も上々です。近藤は、「実際に建物を見に来られた方が、入り口の辺りで立ち止まって、写真を1枚撮られるような方が多くいらっしゃいました。また、設備面や内装も気に入っていただけていますし、ペット共生型ということで、ペットを飼われている方も実際にご入居いただいております」と話します。
生産緑地の解除で決断した今回のプロジェクトについて、下田様から以下のようにご評価いただきました。
「今回の計画で一番マッチした提案をしてくれたのが、大和ハウス工業さんでした。何度も打ち合わせして、お互いに本音で話し合えるような関係が持てたのでよかったと思います。自分で思っていたよりすごく豪華な外観にできたので、とても嬉しく思っています」
生産緑地のお悩みをペット共生型和風賃貸住宅で解決した今回の土地活用。成功の鍵は、PDBシステムを利用することで適切な相続対策に気づき、生産緑地を一部残す判断ができたことです。将来を見据え、安心できる資金計画を立てられるパートナーの存在がとても重要です。
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