適正な食事量はどれくらい?
皆さんのお宅では、普段「何を」「どれくらい」食べさせていますか?猫や犬に必要な食事量は成長段階によって異なり、さらに「何を食べているか」によっても違ってきます。ペットの食事は大きく分けると、必要な栄養分を手軽にバランス良くとれる「市販フード」と、材料を自分で選べて安心な「手作りフード」の2種類があります。市販フードの場合は、まず「総合栄養食」と記載されているフードを選んでください。パッケージに月齢や体重別の必要グラム数が記載されているため、それを目安にすると良いでしょう。あとは運動量や習慣、体質など、猫や犬の個体差を考慮して調整してあげてください。
一方、手作りフードの場合は、年齢や健康状態に適した食事量・栄養バランスを考える必要があるため、「なんとなく」でつくるのは赤信号。十分な栄養学の知識をお持ちでない方にはお薦めできません。もし手作りフードを試す場合は、市販フードと手作りフードを半分ずつ取り入れる方法を検討してみてください。市販フードで一定の栄養分を確保しながら、「添加物や保存料が入っていない」「毎日違った味を楽しめる」といった手作りの良さも味わえるためお薦めです。また、災害時に手作り食を手に入れるのは困難になるため、市販フードに慣れておく意味でも安心です。
ライフステージに合わせた食事方法
市販フードの場合は、去勢避妊の有無、ライフステージ別や年齢別に細かく種類が分かれており、それぞれの成長過程に適した栄養分・カロリーが含まれているため、段階に応じたフードを選べば間違いはありません。ただし、子猫や子犬は胃が小さく消化能力が未熟なため、一度にたくさん食べられない、食べても消化できない場合があります。1回分の量を減らして食事の回数を増やすなど、状態を見ながら調整してあげてください。成猫・成犬になると消化能力が上がるため、一日2回程度に減らしても問題はありません。
シニアになると、再び消化能力が低下して一度に食べられる量が減るため、子猫・子犬の時のようにもう一度食事回数を増やしてあげましょう。また、乾燥したものがうまく飲み込めない、固形フードで口の中を痛めてしまうなどのケースもあります。お湯を加えて柔らかくしたり、水分の多い缶詰に変えたり、ムース状のフードを取り入れたりと、食べやすいよう工夫してあげることが大切です。
ライフステージごとの食事のPOINT
- 子猫・子犬
- 消化能力が未熟
- 1回分の食事量を減らし、1日の食事回数を増やす
- 成猫・成犬
- 消化能力がアップ
- 1回2回程度の食事でOK
- シニア猫・シニア犬
- 消化能力が再び低下
- 1回分の食事量を減らし、1日の食事回数を増やす 柔らかいムース状のフードに変えるなど、食べやすい食事を取り入れる
おやつは必要?
食事の他におやつをあげている飼い主さんも多いと思いますが、栄養面からすると必ずしも必要ではありません。もちろん、「しつけのため」「苦手なことを克服できたご褒美に」「特別な日だから」といった目的や理由があれば、おやつをあげる意味はあります。しかし、「習慣的に食事の後にジャーキーを1枚あげている」だけであれば、必要ないとも言えるのです。大切なのは、何のためにあげるかということ。猫や犬にとって、価値のあるおやつの与え方を考えることをお薦めします。
注意点として、おやつの量が多くなるとカロリー過多になったり、ご飯を食べなくなったりする場合があります。「おやつの代わりに野菜をあげる」「朝ご飯や夜ご飯からドッグフードを数粒取っておやつにする」など、カロリーが増えすぎないよう注意してあげましょう。また、おやつの種類によってはあまり体に良くないものもあるため、信頼できる製造元を選ぶことが大切です。フードの選び方にも言えることですが、材料が記載していない商品や、お客様相談窓口などの問い合わせ先が確認できないものは避けた方が安心。最近は手作りに近い無添加無着色の商品や、国産の原料を使っているおやつの人気も高まっていますが、保存料が含まれてないフードやおやつは消費期限が短いため注意してください。
おやつをあげる時は…
- 「しつけのため」「ご褒美のため」など目的があればOK
- 「習慣的にあげているだけ」なら必要ない
おやつの注意点
- カロリー過多にならないよう、注意しよう
- 信頼できる会社の製品を選ぼう
こんな時、どうする?
食欲がない時は…
病気の疑いがある場合は、まずは動物病院へ。猫や犬は、病気やストレスから食欲不振に陥ってしまうケースも少なくありません。病気の種類によっては食事制限が必要な場合もあるため、フードの内容や量は獣医師の指示に従ってください。一般的な食欲不振の解決策の一つは、「匂いが出る」ようにしてあげること。電子レンジなどで温めて匂いを強くすると、食欲が刺激されます。また、「ドライフードは食べないがトッピングはよく食べる」という場合は、ドライフードにトッピングを混ぜ込むなど、食べたい意欲が湧くよう工夫してあげましょう。「今は食べたくないが気が向いたら食べる」場合もあるため、少し長い時間置いておき、気長に待ってあげるのも一つの方法です。
肥満を解消したい時は…
今や、猫や犬にとっても肥満は大きな問題です。運動だけで減少するのは難しいため、必ず食事制限とセットで取り組むようにしましょう。ただし、単純に食事量を減らすとその分栄養分も減ってしまうため、カロリーの低い減量用フードを取り入れるのがお薦めです。最近は、ポップコーンのように空気を含んでいて、少量でも満腹感や栄養分が得られるフードも発売されています。味の改善も進み、減量用でも十分おいしいものがあるため、猫や犬にとっても負担は少ないはずです。ヒトの減量は本人の問題ですが、猫や犬の減量は食事を管理する側が意識すれば必ず成功するため、一緒に頑張ってあげてください。
猫・犬のダイエットのために…
多頭飼いの場合は…
数匹一緒に飼っている場合は、同時に食事を与えると、食べるのが早い子が遅い子の分まで食べてしまうことがあります。一番良いのは、ご飯を食べ終わるまでずっと付き添い、別の子の分まで食べそうになったら止めてあげること。それが難しい場合や気が強い子同士でケンカをしてしまう場合は、違う部屋で食べさせると良いでしょう。猫と犬を飼っていて、猫の方が食べるのに時間がかかる場合は、犬が行けない高い場所にご飯を置いてあげるという方法もあります。必ず決まったご飯を決まった量だけ食べられるよう、しっかり配慮してあげてください。
まとめ
人と同じように、猫や犬にとっても食事は健康の基本。ライフステージや状態に応じてさまざまな注意点があるため、正しい知識を知った上でこまめに気をつけてあげましょう。また、健康・快適な食生活のためには、食事スペースをきちんと確保することも大切です。ダイワハウスでは、猫や犬の習性や行動、人の動線などに配慮した食事スペースのご提案を行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
アドバイス
- かまくら犬と猫の病院院長 塩谷香織先生
- 生まれ育った鎌倉で、2011年に開業。確かな技術と飼い主とのコミュニケーションを大切にする診療方針が信頼を集め、クチコミでの来院も多い。飼い主向けの介護教室なども開催。 かまくら犬と猫の病院
記事公開日:2017年8月31日