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「21世紀は風と太陽と水」
-風力発電所「DREAM Wind 愛媛西予」-
かつて創業者は「21世紀の事業は風と太陽と水」と予見した。その志を風のエネルギーで具現化するプロジェクト、
「DREAM Wind 愛媛西予」が2020年、完成の日を迎えた。
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大和ハウスグループの風力発電所、第2弾へ
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愛媛県に日本一、細長い半島がある。四国の最西端に突き出す佐田岬半島だ。ここに、海からの強い風を受けて回る巨大な風車群が林立している。そのうちの9基が、大和ハウスグループ初の風力発電所「DREAM Wind 佐田岬」だ。運営管理は大和エネルギーが担っている。
運転開始は2007年。最大出力1,000kW(1MW)の風車9基が、年間30,484MWh※1もの電力を生み出す。一般家庭の年間電力使用量に換算すると、実に約6,800世帯分※2に相当する。
ところで、建築を創業事業とする大和ハウスグループが、なぜ風力発電所を自ら建設し、創エネに乗り出したのだろうか。その出発点には、1990年代に創業者が予見した「21世紀の事業は風と太陽と水」という言葉があった。時が経ち、創業者の想いは風力発電機や太陽光発電システムとして具現化し、やがて大和ハウスグループの環境エネルギー事業にとって大きな節目となる「DREAM Wind 佐田岬」として結実した。
現在、大和エネルギーの執行役員であり、経営戦略室と電力事業部を率いる島川は、2007年当時、技術の責任者として「DREAM Wind 佐田岬」の運営に携わっていた。
2012年、佐田岬に続く次のチャンスが到来する。四国電力が風力発電の導入量拡大に向け、電気事業者を新たに募集することになったのだ。大和エネルギーが蓄えてきた力を発揮する待望の機会だった。早速、事業者として名乗りを上げ、審査や抽選を経て、大和ハウスグループ第2弾となる「DREAM Wind 愛媛西予」プロジェクトをスタートさせた。候補地は愛媛県西予市だ。
島川は環境アセスメントの準備を進めながら、現地に責任者として誰を送り込むか、社内を見渡した。適任者が、いた。大和ハウスグループ内の会社や部署を渡り歩き、新天地に臆することなく立ち向かう白井だった。
- ※1 2018年度実績
- ※2 家庭1世帯あたりの全消費電力量を4,432kWh/年とした場合。経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ」2019年版より試算
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目指す場所は道なき道の先
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白井は「西予に行ってくれ」と島川から告げられた。省エネルギー事業部にいた白井にとって、再生可能エネルギーは初めて行く道だ。風力発電機さえも実物を見たことがなかった。「私でいいんだろうか」と思う一方、自らを新しいことをやると嬉々として力を発揮するタイプと分析するように、新たな挑戦に胸が高鳴った。
2012年、白井は愛媛へ向かった。風車をどこに建てるか決めるには、風況調査を最低でも1年以上行う必要がある。調査には、白井の他に大和ハウス工業から大阪都市開発部のメンバーも加わった。
風車は8基。候補地は、すべて山の中だ。標高は400〜450m。白井たちは道なき道を行き、草を刈り、やぶをかき分け、山を登った。四つん這いで進んだ急斜面もあった。自然環境はできるだけ現状のまま残したい。既存道路から近く、建設地までの取り付け道路や樹木伐採、造成の面積を最小限にとどめられる場所を探して、土地を借りた。そこに高さ60mの風況観測塔を設置し、1年間、風況を観測。「ここなら、いける」と確信を持ち、地主の皆さんをはじめとする地元の方々と交渉、協議を重ね、用地の賃借契約を結ぶ。2018年、ようやく着工の時が来た。
「DREAM Wind 愛媛西予」プロジェクトチームには、事業主である大和エネルギーを中心に各分野のエキスパートが集まった。大和ハウス工業も引き続き参加し、風車の基本設計を担当。土木設計は清水建設、輸送は日本通運、電気工事は四電エンジニアリングが請け負った。
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港から山上までパーツを運ぶ
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組み立ての工程を見守る
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巨大な羽根を山上へ運ぶ
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風車は、大きく分けて4つのパーツで構成される。まず造成した土地にコンクリート基礎をつくり、柱となる「タワー」を建てる。最上部に発電機を格納した「ナセル」を設置。その背面に「ハブ」と呼ばれる連結部と、「ブレード」(羽根)を取り付ける。ブレードまで含めた全高は121m。およそ34階建ビルと同じ高さだ。一つひとつのパーツも途方もなく大きい。ブレードは長さ42m、タワーは78mもある。
風車は日本企業の製品だが、ブレードとタワーは世界の風車生産地アジアで製造されている。ブレードは中国から、タワーは4分割して韓国から8,000トン級の船で輸送。高知の宿毛湾港で通関手続きを行い、風車1基分を3,000トン級の台船に積み替え、愛媛県西予市の三瓶港で荷揚げする。
三瓶港から現地までは車両で運ぶ。
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中国・韓国から届いた風車のパーツ
この陸上輸送が、風車建設においては高いハードルになる。ルートの県道は住宅地を通り、先は曲がりくねった山道だ。42mのブレードを積んで細い山道を上がるのは至難の技である。そこで、中間地点に積み替え場を用意。港から積み替え場までの「1次輸送」は、夜中から朝方にかけて大型トレーラで運搬。現地までの「2次輸送」は、朝から午後半ばまで県道を全面通行止めにして、トランスポーターという特殊車両で時速4km、人が歩くスピードで運ぶ。
日本通運のトランスポーターは、積んだブレードを上下だけでなく、左右にも動かせるのが特徴で、角度の微妙な調整や旋回もできる。よって、道路沿いの樹木伐採や道路拡幅も最小限に抑えられた。環境配慮の面からも最適なプロジェクトメンバーだった。
輸送が最も難しかったのは、風況が最も良い8号機だ。道路から建設地までは50mの高低差。取り付け道路はジグザグに折れ曲がったスイッチバックになり、トランスポーターの運転は困難を極めたが、チームみんなの協力で無事に運び上げることができた。
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パーツを荷揚げする西予市の三瓶港
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7号機の建設地
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狭い道路をスイッチバックで上がる
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地上78mで風に吹かれて
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風車組み立てのクライマックスは、ブレードの取り付けだろう。スタッフ4、5人が78mあるタワーの内部をはしごで上がって頂上の接合部で待ち構え、クレーンで吊り上げられたブレードを1枚ずつ取り付けるのだ。風が吹くとブレードがあおられてユラユラと揺れる。
風は、風車建設工事の大敵だ。強風が吹くと工事は中断。そのため、風の弱い夏に組み立てて、風の強い冬に試運転をする。ただし2018年は例外だった。「平成30年7月豪雨」により西日本を中心に記録的な大雨に襲われた。建設地は無事だったが、近隣の市町村に多大な被害が発生。職方の人たちは地元の復旧に尽力し、半数に減った人員で工事を粛々と進めた。翌2019年も、大雨や台風、地震など数々の災害に見舞われたが、日程を何度も見直しながら竣工を目指した。
組み立てが終わった後は、タワー内の電気工事やエレベーターの設置を行う。また、それぞれの風車間、風車と変電所間の送電設備は、ほとんどを地下に埋設。鉄塔や電柱などの人工構造物で自然の景観を損なうことなく、送電経路の樹木伐採も最小限に。しかも暴風などの災害にも強い送電設備となった。
最初の風車が完成したのは2019年7月。白井は「あぁ、やっと1本目が建った」と思ったが、一息つく暇はない。大和エネルギーの若手社員、山本は事業主としての施工監理業務に奔走した。完成後のメンテナンスを担当する田丸は建設の経緯を把握するため、現地で工事を見守った。白井は、平日は愛媛、土日は大阪の自宅へ夜行バスで行き来した。上司の島川から「次の風力発電所は任せたぞ」と託されたプロジェクトは、気が付くと7年に及び、当時幼かった子どもは小学校の高学年になっていた。
そうして大勢の人々が長い時間と情熱を捧げた「DREAM Wind 愛媛西予」は2020年3月16日、ついに運転を開始した。
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風車の向こうに人がいる、生活がある
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「DREAM Wind 愛媛西予」は、最大出力2,000kW(2MW)の風車8基で、16,000kW(16MW)を発電する。計画発電量は年間約35,000MWhで、一般家庭約7,800世帯分の電力量をつくりだす。
思えば、この一大プロジェクトは、地元の方々や社内外メンバーの協力なくしては実現できなかった。その恩に報いるため、白井は常に「仲介者であり、指揮をするコンダクターでありたい」と思っていた。地元の人々と会話を重ね、施工スタッフとの架け橋になれるよう、全体を見渡す役に徹した。誠実な対応に努め、「白井さんが言うなら仕方ない」と認めてもらえることもあった。
「人と話すのが一番好きで、面白い」と白井は語る。どれほど巨大なものを建てようと、その向こうには「人」がいて、「生活」があることを白井は知っている。再生可能エネルギー事業とは、地域の「人」と共生し、日本や地球の「生活」に長く貢献し続けるための事業なのだから。
大和ハウスグループは、2030年までに自社グループの使用電力量を上回る再エネ発電設備を建設・稼働する目標を掲げ、「風」「太陽」「水」などの再エネを活用した発電施設開発を進めている。2019年度末には、グループが運営する再エネ発電施設は全国253カ所になった。「DREAM Wind 愛媛西予」で、プラス1だ。
「21世紀の事業は風と太陽と水」。創業者の描いた未来は、一歩ずつ現実になっている。
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社内外のメンバーと信頼関係を築く
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愛媛の新しい風景になった風車
※掲載の情報は2020年3月時点のものです。