研究員のセカイ
太陽光発電や蓄電池を活用した電力融通システムの研究開発を手がける藤本。同じ部署に所属する久保田は、生ゴミなどの有機物からエネルギーとなるガスをつくり、発電する研究開発を行っています。
描く未来像
藤本と久保田の描く未来。
⸺そのまちの暮らしは、決して派手ではない。しかし、人々は、光熱費などを気にすることなく、どんな季節であっても、快適で健康的な生活を送っている。それは同時に、知らず知らずにゴミを減らし、意識せずにエネルギーを効率的に使う生活でもある。
カギを握るのは、太陽光発電。住宅ごとに太陽光で発電、蓄電池に貯め、電気を使うこと自体は珍しくないが、このまちの太陽光発電システムは、住宅で消費し余った電気を、近所で融通し合う。以前は、数軒単位だった電気のシェアは、まち全体、数千世帯規模に拡大した。
もうひとつカギを握っているのは、バイオガス発電。このまちでは、生ゴミなどの有機物を利用して、電気を生み出している。発電量こそ太陽光発電に及ばないものの、天候や季節に発電量が左右されないメリットがあるため、夜間や雨天時での利用が進む。さらに、蓄エネも容易なため災害時の緊急電源として、まちのレジリエンス(回復力・復元力)向上にも一役買っている。
まさに、エネルギーを地産地消するまちだ。たとえ大きな自然災害が起こっても、あるいはエネルギー産出国との間で地政学的リスクが生じても、きっとこのまちでは、安定して電気を生み出し、人々はいつもとあまり変わらない生活を送るのだろう。エネルギーを輸入に頼り、地震や台風なども多い日本にあって、このまちの暮らしは、ひとつの理想形と言える——
いま取り組むこと
今、藤本が取り組むのは、まち単位で電気を融通するシステムです。
すでに、大和ハウスグループでは、業界初(※1)となる雨天でも約10日分(※2)の電力供給、および暖房・給湯を確保できる「全天候型3電池連携システム」を商品化しています。「これは住宅一軒のなかで完結するシステム」と藤本。藤本が手がけたシステムは、複数の住宅をつなぐものです。太陽光で発電した電気をシェアし、蓄電池や給湯設備の制御も合わせて行うことで電力の自給自足を実現しました。「2021年4月よりセキュレア船橋グランオアシスで電力融通を開始しています(藤本)」。再生可能エネルギー電気100%の大規模複合開発は、すでに始まっています。
一方、久保田は現在、主にバイオテクノロジーを活用した環境対応設備を研究開発しています。建物で発生する生ゴミなどからバイオガス(メタンガスを主成分とするバイオ燃料の一種)の原料となる有機物のみを効率よく分別できるようにすることで装置の小型化を目指し、従来では難しかったまちへの導入に向け、検討が始まっています。
バイオガス発電は、日中以外でも稼働し、季節による発電量の変動もなく、一時的な蓄エネが可能です。「太陽光発電を補完、環境負荷を抑え、災害時の給電に使うことができます(久保田)」。大きな可能性を持つバイオガス発電。数年後の実用化を目指し、研究は進みます。
エネルギー系の分野を専攻してきた藤本と、バイオ系の久保田。専攻の違う二人は、エネルギーとは別に感染症対策などの研究にも一緒に取り組んでいます。価値観も似ています。「例えばヒートショック対策として、全館空調なども考えられますが、現状ではコストがかかってしまいます。料金などを気にせず使えるシステムを考えるのは、エネルギー研究にとって重要な役割のひとつと考えます(藤本)」。「もともと、無意識のうちに健康をアシストできる家があれば面白い、それを実現できたらと入社しました(久保田)」。エネルギーは目的ではない。意識せずに使い、人々が健康などの目的を達成できるようにする手段。そんな考え方を、二人は共有しています。
藤本 卓也(ふじもと たくや)
環境エネルギー研究部
次世代エネルギーグループ所属
大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻修士課程修了
2012年4月入社
※入社後、社会人ドクターとして同研究科博士課程修了、博士(工学)
久保田 謙三(くぼた けんぞう)
環境エネルギー研究部
次世代エネルギーグループ所属
大学院理工学研究科フロンティア理工学専攻博士課程修了、博士(工学)
2012年4月入社
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