お気に入りの椅子を見つけたい、使い続けたい。
そんな思いに応えてくれるのが
大阪・池田市にある
「椅子屋Sheep(シープ)」です。
椅子の張り替えやリメイクした椅子、
オリジナルのスツールなどがそろう
工房兼ショールームを訪ねました。
2024.1
坂の上にある
広々とした空間を持つ店で
板塀と木の看板が目印。芝生の緑
が心地よい庭を通って中へ。
ウッドデッキのエントランスはソファや椅子が置かれていてくつろげる。
大阪市内から車で約30分、「大阪の奥座敷」とも呼ばれる伏尾温泉や古刹・久安寺の程近く。坂の上に広がる住宅街の一角に椅子屋シープはあります。椅子専門店として2013年に大阪市内で開業、2021年に現在の場所に移転して工房兼ショールームを構えました。
元撮影スタジオだったという店内は広々した空間を生かし、自分たちで仕切り壁や中2階、展示棚を設置。さまざまな椅子や雑貨がずらりと並び、奥の工房スペースからは時折ミシンを踏む音が聞こえてきます。
作業台やミシンが置かれた一角が工房に。ここで古い椅子が新しく生まれ変わる。
工房にはさまざまな張り替え用の生地
や使用する糸が。
「もともと建物が好きでインテリアに興味がわき、椅子に惹かれていったんです。木工職人をめざしたんですが家具を扱うならいっそ椅子だけでいいかと(笑)。張り替えでいろいろな椅子に触れると面白いし楽しいですね」と話す店主で椅子職人である田中一貴さん。椅子専門店として立ち上げてからは、個人や店舗から依頼される椅子の張り替えはもちろん、ユーズドの椅子のリメイク、さらにオーダーメードなど幅広く手掛けています。
「最近は個人の方からの張り替えの依頼が随分と多くなりました」と話す妻の綾子さんは販売全般のほか、カラーコーディネーターの資格を生かして生地選びを提案。椅子用のくるみボタンや革を使ったオリジナルの雑貨なども手掛けています。
張り替えることで新鮮な存在に!
さらに愛着が増すきっかけにも
「長く使っていると、まず生地や中のウレタン素材から劣化していきます。そこでウレタン素材を交換して座面を好きな生地に張り替えると、一点もののような感じになるんです」と一貴さん。自分好みに仕上がれば愛着が増すというもの。費用はかかりますが、そこが張り替えの魅力の一つといえそうです。
さらに座り心地も変えられると一貴さん。「中に入れるウレタン素材にもさまざまな種類があって数種類、最低でも2種類を重ねて使います。素材の上下を入れ替えるだけでも座り心地は変わるので、好みの硬さに調整することができますね」
実際、ソファの張り替えで、年を重ねて腰痛がある人が楽に立ち上がれるよう、それまでより硬めに仕上げたケースがあったそう。見た目だけではなく使い心地も今の暮らしにフィットさせれば、さらに長く愛用できそうです。
3台のミシンを工程によって使い分ける。
ソファの張り替えの様子。ソファは大きく
立体的なので手間がかかるのだそう。
田中一貴さんに質問!
椅子の張り替えのココが知りたい
Q.張り替えはどのような工程で行うの?
A.まず見積りをして、OKをいただいたら生地を決めます。そこから、椅子の座面をめくってウレタン素材を取り出して交換します。椅子の形に合わせて裁断して縫製した生地を張って止めます。通常、お預かりしてから仕上がるまで3週間ほどかかります。
Q.生地は選べるの?
A.椅子用の厚手の生地のカタログから選んで、張り替えることができます。ほかにも耐久性があれば服飾用やカーテン用の生地を使って張り替えることもできるので、お気に入りの生地を持ち込んでいただくことも可能です。
以前、おばあちゃんが持っていたという着物の生地を持ち込まれた方もいました。かなり和のイメージの椅子になりましたね。
Q.どんな椅子でも張り替えられるの?
A.基本的に大丈夫です。もともと座面に生地が張られていない板面の椅子でも、ウレタン素材を入れて生地を張ることができるので、少しイメージを変えたいなというときにもいいと思いますね。
Q.古い椅子でも大丈夫?
A.これまでに20年、30年使われていた椅子の張り替えもありました。年数というより使用頻度によって傷み方が変わってきます。
インテリアや用途に合わせて
お気に入りの椅子に仕上げよう
使い慣れた椅子を古くなったからと処分してしまうのはもったいないこと。新しいインテリアに合わせてリメイクすればまだまだ活躍してくれるかもしれません。そんな椅子の可能性を広げてくれる、専門店ならではの張り替えのポイントを綾子さんに伺いました。
※価格のないものは参考商品です。
シンプルな椅子は生地の
素材や質感にこだわって
シンプルな椅子にスペインから輸入したファブリックを使用した例。ファブリックなのに革のような風合いが特徴。「合皮が劣化して割れが出てくるのが嫌な方にはこのようなファブリックがおすすめ。合皮より比較的、耐久性がよく長持ちします」
革のような質感としっとりした手触りを
持つファブリック。
インパクトのある生地で
存在感のある一脚に
「最近は自分専用のマイチェアを求める方が多いです。一人掛けのソファのような感覚ですね」。好みの生地と硬さであつらえた椅子はマイチェアにもぴったり。存在感のある椅子はインテリアのアクセントにもなりそう。
古い椅子を趣のある
アンティーク風に仕上げて
小さくてレトロな風合いの木の椅子はユーズド品。「もともと座面と背もたれは木だけだったんですが、雰囲気に合わせてコーデュロイの生地を使ってリメイクしました」。26,000円。
ロッキングチェアは座り心地も
アップさせて
「最近、お問い合わせが多いのがロッキングチェアですね。インテリアに合わせて、モダンなオレンジの生地に張り替えました」。ウレタン素材を取り換えて座り心地も増しました。
おそろいの椅子で
カフェコーナーを演出
2脚を同じ生地で張り替えておそろいに。「張り替えは小さな椅子でも可能です。個性的な色柄は輸入生地を使っていて、小さい面積ですがインパクトがあってオリジナル度が増しますね」。各5,500円。
番外
ボクとワタシの特等席!
マイミニチェアも
ミニチュアみたいなソファはオリジナルの子ども専用椅子。「オットマン付きの椅子はわが家でも子どもたちのお気に入り。お孫さんへの贈り物にされる方もいらっしゃいます」。ハンドメイドの良さはぜひ子どもの頃から触れさせて。
左から、子ども用ソファ・ドット柄48,000円、水色チェック柄・オットマン付き59,800円。
column
オリジナルのスツールは
使い勝手のよさが魅力!
オリジナルの椅子を手掛けたいと製作したスツールは、無垢材を使用、ノックダウン(組み立て式)でばらばらに取り外しできるのが特長。「そのままで使っても、座面クッションを外して座ったり、ミニテーブルとして使ったりもできるので何かと便利です。座面クッションはスナップで簡単に取り外しができるので、気分やインテリアに合わせて取り換えてもいいと思います」と綾子さん。座面クッションの生地は色柄が豊富なのでインテリアに合わせて選べます。
オリジナルのスツールには座面が円形の〈marumoko〉、座面が長方形の〈kakumoko〉がある。いずれも木部は無垢材(ウォルナット、オークの2種)、座面クッションは数種のファブリックとレザーがある。サイズは座面が〈marumoko〉直径26cm、〈kakumoko〉横幅36cm、高さは座面クッション付きで23.5cm、48cm、65cmの3種。
写真上段左から〈kakumoko〉座面クッションのみ(レッド)15,000円、〈mini kakumoko〉木の部分のみ、(カーキ)35,800円。中段左から〈mini marumoko〉(ブラックチェック)34,800円、〈marumoko〉(オレンジレザー)44,800円、(ポルカドット)36,800円、(幾何学レッド)36,800円。下段左から〈kakumoko〉(木のスツール)29,700円、(リントン ブラウンミックス)37,800円、(ガンディーニ ホワイト)37,800円。
組み立て式なので、持ち運びも手軽
新作のベンチ。本革とファブリックの座面クッション2つが取り付けられる仕様に。
ベンチ横幅90cm、奥行き22cm、高さ50cm(木面まで41cm)、64,800円。
座面クッションを一つだけにしてテーブル代わりにも。
椅子屋Sheep(シープ)
大阪府池田市伏尾町72-96
tel.072-703-2370
10:00~18:00 ショールームの営業は月・水・日曜
isuyasheep.com
※表示価格は消費税込み2023年12月現在。詳しくは椅子屋シープのウェブサイトをご確認ください。
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