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快適に暮らす

私たちの暮らしとIoT 第6回IoTで変わる未来の生活
~街編~

※イメージ

スマートシティとは、エネルギーの管理や生活インフラにIoTを活用することで、
環境に配慮しつつ、人々の生活の質を高め、経済発展を目指した街づくりのことを言います。
街を単位としたIoT化の取り組みは、世界の各地で、そして日本でも着々と進んでいます。
今回は、街中でのモノや人のつながりが日常生活に
どんな影響を与え、どう便利になるのかを見ていきましょう。

街の中で、どこにあるか/どこにいるかがすぐわかる

生活の中で役立つIoTの身近な例として、カギや財布などの大切なものに付け、忘れ物・落とし物を見つける「落としものタグ」があります。大切なものに小さなICタグを付けておくことで、自分のスマートフォンで、いつ、どこでなくしたかがわかる仕組みです。カギや財布以外にも、ペットの首輪に付けておけば、いつでもペットの居場所を把握することができます。タグがスマートフォンから一定以上の距離が離れたときにアラームを鳴らすこともできるので忘れ物の防止に使うこともできます。また、タグの付いたものをなくしたときは、忘れ物のそばにいる他のユーザーの力を借りて探すことができるモードも用意されています。

最近では、交通機関の落とし物センターや、イベント会場の忘れ物預かり所にタグ付きの落とし物が届くと、持ち主に通知する仕組みも整備されつつあります。また、同様の技術を使って、認知症や高齢者の見守りに活用する取り組みも進んできています。こうしたサービスも、街レベルでのサポートが可能になれば、検知の精度が上がったり、さらに広範囲を検索できるようになるなど、より使いやすく、そして便利になっていきます。

忘れ物タグの例:MAMORIO社のMAMORIO

バルセロナ市のスマートシティ実現の取り組み

2014年、スペインのバルセロナ市は、EUでのイノベーションを推進する都市に選定されました。市民や観光客向けのサービス拡充を目的にWi-Fi網が整備されましたが、そのネットワークは街のさまざまなサービスに生かされています。

たとえば、街のゴミ箱の容量をセンサーで監視し、いっぱいになったゴミ箱だけを収集する仕組みにしています。こうすることで、収集業務の効率化や交通渋滞の緩和に貢献しています。また、市民向けの駐車場の満空情報もセンサーで監視しており、市民はスマートフォンアプリケーションを使って、いつでも市内の空いている駐車場を簡単に探すことができるようになっています。これは、市民の利便性向上だけでなく、街の渋滞緩和や駐車場収入の拡大にも貢献しています。

バルセロナ市内のゴミ箱1

バルセロナ市内のゴミ箱2。赤がゴミが溜まっている状態、緑はゴミが溜まっていない状態を示す

その他にも、照度や交通状況に合わせた照明の調整(スマートライティング)による省エネの実現や、IPカメラを使った街の安全モニタリング、バス停での広告配信による広告収入拡大などにもWi-Fiネットワークが利用されています。このように、整備されたネットワーク網が街全体を活性化し、収益を上げるためのさまざまな取り組みに活用されているのです。バルセロナ市のスマートシティプロジェクトでは、産業の活性化や雇用の創出につながり、年間89億ユーロも取引が増えたそうです。

※引用元:シスコシステムズ合同会社資料『社会インフラとしてのWi-Fiがもたらす地域のイノベーション』

命をつなぐ、徳島県美波町での実証実験

日本でも、さまざまな地域でLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークを使った取り組みが進んでいます。LPWAとは、低い消費電力で、比較的長距離(数km〜数十km)の伝送に向くネットワークです。携帯電話に使われるLTEや3Gと比較して安価で利用しやすいことから、IoTデバイス向けに普及が進みつつあります。国内の実証実験の実例を見てみましょう。

近い将来に起こると言われている南海トラフ巨大地震が起きたときに、津波の被害が予想される徳島県海部郡美波町では、このLPWAを応用し、災害時でも「止まらないネットワーク」を整備し、住民の避難誘導に生かす取り組みを進めています。住民はスマートフォンやタグ型のセンサーを持って移動することで、警報の表示や避難者・避難所の位置把握に生かします。平常時には、同じ仕組みを使って要支援者や子どもの見守りが行えます。

出典:総務省ホームページ (http://www.soumu.go.jp/main_content/000469031.pdf
「IoTサービス創出支援事業 提案概要」(総務省)(http://www.soumu.go.jp/main_content/000469031.pdf)を加工して作成

街の人々をつなげるIoT

こうしたIoT向けのネットワーク網が整備されると、地域の情報配信などに生かすこともできるようになります。その街に住む人を対象としたスマートフォン向けの「街アプリ」を開発すると、さまざまなコミュニケーションが生まれます。活動量や健康状態が測れるウェアラブルデバイスと組み合わせれば、ジョギング・サイクリングコースの案内に加えて、地域住民同士でタイムを競ったり、励ましのメッセージを送ったりすることもできるようになります。散歩のシーンでは、おすすめの散歩コースの紹介だけでなく、一緒に散歩をするペットの情報交換、周辺のお店のリコメンドなどにも活用ができるようになります。普段あまり接点のない住民同士であっても、街を接点に、こうしたアプリやネットワークを通じて、コミュニケーションが活性化していきます。

公共スペースやバス停などに設置されているサイネージ(電子看板)もIoT化すれば、たとえば、散歩で立ち寄るベンチ周辺に設置されているサイネージに、近くのカフェの情報を表示し、アプリにはケーキセットの割引クーポンを配信して来店を促したり、ランニング中の人には近くのコンビニエンスストアで利用できるドリンクの割引券を配信する、といったことが可能になります。住民や利用者に有益な新しいお店の情報を届けられるのはもちろん、お店側も認知度・売上の向上が見込めます。また、こうしたアプリやタグが日常的に運用されていれば、街の活性化や日常生活の充実につながるだけでなく、災害時にも活用できることは先に述べたとおりです。

利便性の向上、サービスの改善、コミュニケーションの活性化などの日常生活でのメリットはもちろん、災害時にも支え合える環境作りとしてのIoT。街の中がもっとつながれば、安心・安全で豊かな生活が実現されます。街をつなげるIoTは、結果として、モノだけでなく、人も出来事もつなげて、より暮らしやすい環境を提供すると言えるでしょう。

株式会社ウフル IoTイノベーションセンター マネージャー

松浦真弓さん

株式会社マクニカにて、集積回路のアプリケーションエンジニアとして大手製造業の技術サポートを担当。その後、ラティス・テクノロジー株式会社にて、10年以上にわたり、 製造業を中心とした3D CAD関連ソフトウェアのマーケティング、 製品企画、パートナー営業に従事し、同社の成長に貢献。近年は、建築・建設業界の 3Dデータ活用を提案・導入支援するエバンジェリストとして活動した。業務と関連した活動として、iOS端末のエンタープライズ利用を促進する活動を展開する一般社団法人iOS コンソーシアムで、製造業でのタブレット活用を推進する製造ワーキンググループを発起人として設立し、約3年間、リーダーを務めた。2016年5月より現職。

※2017年12月現在の情報となります。

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