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快適に暮らす

私たちの暮らしとIoT 第8回IoTで変わる未来の生活
~パーソナルアシスタント編~

※イメージ

過去には洗濯機、冷蔵庫、テレビの登場で人々の暮らしは大きく変化しました。
さらに洗濯乾燥機や食器洗浄機、お掃除ロボットなどの登場で、家事を自動化したり、
負担やかかる時間を減らして、家族と過ごす時間や趣味を楽しむ時間を生み出すことが
できるようになりました。みなさんも共働きや一人暮らしなど、
さまざまな生活スタイルに合わせて、これらの家電を賢く選んで日々の暮らしで
活用していらっしゃると思います。IoTの登場で、その利便性はますます向上しつつあります。

生活シーンに合わせた家電のコントロール

大和ハウス工業渋谷展示場での Google Home を使った実証実験でも、スマートスピーカーを用いて、朝の準備、出勤前の準備、帰宅時の準備など、シーンに合わせたデバイスのコントロールのデモが行われていました。

大和ハウス工業渋谷展示場での Google Home による家電コントロール

2018年1月にラスベガスで開催された米国最大のコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会、「CES(Consumer Electronics Show) 2018」でも、Samsungのブースでは、生活シーンやテーマに合わせた家電のコントロールがデモで展示されていました。生活のさまざまなシーンに合わせて、必要な家電やデバイスをコントロールする便利さはすでに享受できるようになっており、各家庭に浸透するのは、もうまもなくかもしれません。

その人毎のカスタマイズを可能にするパーソナルアシスタント

次に着目すべきは、シーンだけでなく、その人に合わせたカスタマイズです。たとえば、共働き家庭の場合でも、お父さん、お母さん、お子さまそれぞれで、生活のパターンやリズムも異なります。起床時間、家を出る時間、通勤・通学経路、仕事をする・学校に行っている時間、帰宅時間、就寝時間、さらに平日と週末の過ごし方の差。また、個人の嗜好、音楽や食べ物の好みや趣味など。そして、今の気分や体調など、さまざまな要素と情報があります。たとえば、Google Home には、声から話している人を識別する機能があります。つまり、その話者の情報を個人と紐付けてインプットすることができれば、シーンだけでなく、さらにその人、その場にあった提案をスマートスピーカー経由で行えるようになります。

また、家族団らんの場でも、うれしいことがあったとき、つらいことがあったときなど、その場の雰囲気で対応を変えていく必要があります。シーンに加えて、今の雰囲気や気分を把握して応用することで、よりきめ細やかな対応ができるようになるでしょう。

気分や雰囲気をセンシング

それでは、人が快適に、気分良く過ごすためにはどのような情報が必要でしょうか。たとえば、性格。悔しい出来事があったときに励まして欲しい人、自力で這い上がる人、厳しい状況のほうが伸びる人、褒められて伸びる人、共感して欲しい人。こうした人の特性を、私たちは日々の会話やコミュニケーションを通して、察したり、理解しています。こうした性格や個性、今の状態の判別に応用できそうな技術として、気分や雰囲気のセンシングがあります。ここでは2つほど例を紹介します。

人の発する声から、喜怒哀楽や気分の浮き沈みを判定するエンジンも登場しています。株式会社Empathが提供するエンジン「Empath」(https://webempath.com/)は、さまざまなIoTサービスに組み込むことができます。Webサイトでは、実際に短い文章を音読すると、その解析結果が表示されるデモが無料で公開されていますので試してみてはいかがでしょうか。

WebEmpath API(https://webempath.net/lp-jpn/

また、場の雰囲気を検知する商用の実験も行われています。1つ目の例はレストランです。テーブルに雰囲気を検知するマイクセンサーを置いておき、その場の会話をセンシングします。そこで、解析に必要な音の特徴を抽出してクラウドにアップロードします。このとき、セキュリティの観点から、プライバシーに関わる会話の情報は破棄します。クラウドにアップロードされたデータは独自のルールで解析し、可視化し、その場の雰囲気がひと目でわかるように、リアルタイムにグラフ化して表示させる仕組みです。

図:雰囲気センシングの実験

雰囲気の可視化の例1。盛り上がっているテーブルの場合は全体のレベルが高く、山の高低差がはっきりしている。

雰囲気の可視化の例2。盛り上がっていないテーブルの場合は全体のレベルが低く、山がフラット。

このように、テーブルの雰囲気を可視化することで、すべてのテーブルを常時見回ることなく、バックヤードで一括して状態を把握し、その状態に応じて顧客満足度の向上や売上げアップにつなげるなどの施策を打つことができるようになります。

2つ目の例としては、この雰囲気センシングをオフィス空間に応用する実験も始まっています。株式会社ウフルでは、会議室や執務エリアに雰囲気センサーを置いてセンシングすることで、チームの生産性や健康度などを測定する実験に取り組んでいます。この例では、Happy(幸せ)、Calm(穏やか)、Unhappy(幸せでない)、Angry(怒っている)の4種に雰囲気を分別して表示しています。これに加えて、生産性に影響を与える二酸化炭素濃度や、快適性に関わる温度・湿度、騒音などの情報も合わせて分析することで、オフィスでの生産性を高める施策を打ち出すことが可能になります。

ウフルの「オフィスIoT」、オフィスの雰囲気の可視化

こうした技術は、家庭では、家族が集う場、たとえばリビングやダイニングの雰囲気をセンシングし、そのデータを活用することで、家族で幸せな時間を過ごすためのヒントになることでしょう。

パーソナルアシスタントが もたらす快適な生活

このように、気分や雰囲気をセンシングするということは、その人の今の状態、快・不快を検知することができるということです。さらに、センシングや解析の技術が進歩し、長い期間をかけて大量のデータが集まっていくと、個人や家族の性格や特性に加えて、今の気分や状態を把握し、それに合わせた対応を行う可能性を秘めた技術であるといえます。

寂しいときやつらいときに励ましたり、楽しい気分のときに、より盛り上げる演出をしたり。心地よい音楽、ライティング、香りなどの組み合わせと、人間味と温かみのある会話、さらに思いもつかなかったような素敵な演出も。パーソナルアシスタントが毎日をより豊かに楽しくする日はそう遠い未来のことではありません。

人が成長するように、パーソナルアシスタントも日々、成長する。そして、家そのものも、それに応える形で成長し、住む人の個性に合わせ、生活を上手に支え、楽しく暮らす。そんな素敵な家の実現はもうすぐそこです。

株式会社ウフル IoTイノベーションセンター マネージャー

松浦真弓さん

株式会社マクニカにて、集積回路のアプリケーションエンジニアとして大手製造業の技術サポートを担当。その後、ラティス・テクノロジー株式会社にて、10年以上にわたり、 製造業を中心とした3D CAD関連ソフトウェアのマーケティング、 製品企画、パートナー営業に従事し、同社の成長に貢献。近年は、建築・建設業界の 3Dデータ活用を提案・導入支援するエバンジェリストとして活動した。業務と関連した活動として、iOS端末のエンタープライズ利用を促進する活動を展開する一般社団法人iOS コンソーシアムで、製造業でのタブレット活用を推進する製造ワーキンググループを発起人として設立し、約3年間、リーダーを務めた。2016年5月より現職。

※掲載の情報は2018年2月現在のものです。

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