IoTはおしゃれの未来も変える可能性があります。
いったいどういうことでしょうか。
IoTでファッションにやってくる未来
ご自身で持っている洋服の全てを把握できていますか?衣替えのタイミングで「あれ、この服今シーズン着なかったな」と思いながら、またしまっておく洋服があったりしませんか?また、おしゃれに関することを考えること自体は楽しいことですが、時間のない時などはよい組み合わせが思いつかず、誰か決めて!と思うようなこともあるのではないでしょうか。
未来の生活では、これまでにはない方法で、その日に着る洋服を提案してくれたり、自分の好きなファッションだけが集められたセレクトECショップができたり、自分の体型にぴったりフィットのオーダーメイドが安価に注文できたり、そんな便利で楽しい世界になっているかもしれません。
着回しの組み合わせや新しい洋服の提案
未来の生活では、身の回りにある様々なことがデータとして記録されていきます。その日何を着ているかというファッションに関する情報も例外ではありません。出かける前に玄関で、その日何を着ているかを自動的にどんどん記録されていきます。そして、そのデータを元に、何を着ようか迷った時には、モンタージュ写真のようにスマートフォンのアプリ上で、今日はどの組み合わせで洋服を着ようかなということを選ぶこともできるようになります。さらに、そこに天気や温湿度、今年の流行などのデータを掛け合わせて、人工知能がその日のおすすめファッションの組み合わせなどを提案してくれるのです。
さらに、普段どのような洋服を着ているかというデータは、ファッションに対してあなたがどのような「好み」を持っているかという大切なデータになります。好きな洋服の色、形、上下の組み合わせ、ズボンやスカートの丈の長さ、カジュアル系、フォーマル系、ストリート系などのジャンルを踏まえて、洋服を選んでいる際に、「このボトムスには今年流行のこのジャケットを買って合わせるといいですよ」というショッピングの提案が出て来て、それがもし自分好みのものであれば、ついつい買ってしまうのではないでしょうか。あなたの好みに合わせたあなただけのセレクトショップがそこにでき上がるのです。
図:着ている洋服の情報をデータ化したファッションの未来
センサー付きの洋服も
一方で、洋服にIoTの機能をつけて便利な世界を作ろうという取り組みもあります。特にスポーツの世界では取り組みが進んでいます。サッカーやバスケットボールなどでは、選手の体の動きをセンシングできるセンサーを組み込んだインナーを選手に着てもらい、練習中や試合中のすべての動きをモニタリング、記録し、分析することで、より精度の高いチームの戦略的な攻撃や防御に生かしていくという取り組みがおこなわれています。
また一般向けの洋服においても、タッチ操作に対応する素材を使ってジャケットを作り、Bluetoothでスマートフォンと通信できる機能を搭載することで、ジャケットをさすったりすることで操作できる商品を発売しているメーカーもあります。自転車などに乗っていてスマートフォンを手に取れないようなケースでも、スマートフォンの操作ができるというのが特徴の製品です。それだけですと、それほど便利に聞こえないかもしれませんが、音声操作と同じように、今後様々な電子機器と連携して、その機器には直接触らなくても自分の洋服の一部を触ったりすることで、機器の操作ができたりということは増えてくることが想定されます。
※イメージ
自分にぴったりの洋服をオーダーメイド
現在、生産工場などで起きている改革においては、ただ同一規格の製品を大量生産するのではなく、マスカスタマイゼーションと言われる、生産ラインを柔軟に動かし、大量のカスタマイズされた商品を作ることを可能とする動きが起きています。生産側でそのような準備が整うと、現在の洋服の購入プロセスの全てが大きく変革し、すべての洋服がオーダーメイドで作られるという世界がやって来ることが予想されます。
そのためには、各個人の体のサイズをきちんと測って伝えることが必要ですが、そこにもIoTの技術が活用されることになります。既に精密に測ることができる採寸用のボディースーツを無償で配布するような企業も出始めています。サイズが分かっていれば、現在のSMLや号数といったざっくりとしたサイズではなく、身体にぴったりの洋服を提案できるからです。
これまでのファッション業界は、事前に工場で服を大量生産して店頭で販売し、余った在庫についてはセールで安売りをする、というスタイルが当たり前でしたが、これからは当たり前ではなくなる可能性があるのです。WEB上のカタログやショールームで実物をチェックして気に入れば、あとは自分の体のサイズを送信すると、オーダーメイドで洋服が作られて、数日後には手元に届くという世界がこれからやってくるのです。しかも在庫リスクやセールでの薄利のリスクを抑えることができているので、商品単価はオーダーメイドにもかかわらず、従来とそれほど大きく変わらない可能性もあるのです。
図:洋服の購入プロセスの変化
もう着ない服はどうする?
加えて、データとして記録していくことで、さらに便利なこともあります。それは、着ている服と着ていない服があって、それはどの服なのかというのが特定できるということです。頻度の高低だけでなく、1度着てそのあと何回かオススメで表示したにもかかわらず着られていない服を特定することが可能なのです。いわゆるタンスの肥やしになっている洋服です。そのような洋服が見つかった場合には、「最近この服は着ていませんが、もし今後も着ないようであれば売却しませんか?」という形でオークションや個人売買で手放すことを自動的にオススメしてくれて、ワンタッチで出品できる、そんな便利さにつながるのです。
今回は生活の中でも、ファッションに注目しました。そこに存在しているけれどデータになっていないために、活用できていなかった情報。それを、データ化して活用することで、生活を便利に楽しくすることができるのがIoTです。未来の生活では、ファッションに関わる皆さんの好みや、実際の着用状況、体型の変化などの情報に基づき、よりファッションを楽しめる世界がやって来ます。皆さんが気付かないうちに蓄積されたデータが活用され、日々の生活を豊かにしていることを実感する日が来るでしょう。
株式会社ウフル IoTイノベーションセンター シニアマネージャー
米田隆幸さん
IoT領域のビジネス支援をはじめとし、クラウドサービスの導入支援からウェブサイト構築など、ワンストップ・ソリューションを提供。
※2018年3月現在の情報となります。