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建築家と住識者の「いい家つくろう会議」vol.1-2有機ELを通して、
空間に「ゆらぎ」を取り入れたい。

建築家 木村文雄教授をホストに、
様々な業界の第一人者と「いい家づくり」について語り合うトークセッション。
二回目となる今回は、有機ELが住空間にもたらす好影響と、
そこからはじまる新しい生活様式を城戸淳二教授に語っていただきました。

リラックスしたい空間に有機ELは最適

  • 城戸 淳二(以下、城戸):私が現在有機ELで考えているのは、自然を空間に取り込めないかということなんです。有機ELは輝度やスペクトル(光の波長によってできる色の帯)を調整できるので、ほぼ自然光を再現できるんですね。例えば、障子のような建て付けをつくりそこに有機ELを貼っておくと、あたかも外光が差し込んできているように演出できるんです。
  • 木村 文雄(以下、木村):スマート未来ハウスの和室にも採用しましたものね。

地窓風の障子は有機ELを貼ったもの。掛け軸の有機ELには好きな映像を映すことができる。

  • 城戸:そうなんです。私としては現行の照明器具はなくしていきたいんです。調光のきかない光、ゆらぎのない光は無意識下でストレスになっていると思います。脳はかなり感じているはずです。
  • 木村:私も蛍光灯は好きじゃないんですよね。家の設計プランニングでも採用しませんから。

城戸:太陽光とは違うスペクトルですからね。自然界には一定の明るさで光り続ける光源はないんです。太陽も時間によって明るさも色も輝きも違いますし、雲がかかれば光の具合も変わりますよね。エジソンが照明を発明したのが140年くらい前で、それ以前はガス灯かローソク。案外人は焚き火の時間が長いんです。

木村:薪ストーブを入れたいという人はきっと脳に正直なんですね。生(なま)の火を見ているのは心地いいですから。欧米ではローソクだけを使っているレストランもあって、最初は薄暗くてもだんだん心地よくなるんですよね。

城戸:有機ELは、そういう光も再現することができます。なにより光の刺激が少ないですから、いろんな空間ニーズに対応できるんです。すべての空間に採用して欲しいですが、強いて挙げるとすれば寝室ですね。

木村:なるほど、朝の光も夜の光もできますからね。

  • 城戸:現代人には不眠症の方が増えているのですが、ブルーライトの問題が大きいと思うんです。ブルーライトは真昼の太陽から出ているもので、人を活発にする光。夜に浴びると睡眠ホルモンのメラトニンが抑制されてしまいます。
  • 木村:眠りにつきにくい状況をつくってしまっているんですね。

城戸:いわゆる体内時計とも言われるサーカディアンリズム(ある時間になると自然と眠くなったり目が覚めたりする、人の中にあるリズム)の中では、朝夕の光は赤く、真昼は青く、夜は暗くなるわけです。有機ELはそれと同じことができるので、寝室にはベストな選択なんです。

木村:光の質まで調光できるのが、やはり画期的ですね。

  • 城戸:リビングとかリラックスしたい空間にも有機ELを入れてほしいですね。その他の使い方としては、洗面室に入れるのがいいと思います。演色性が高く顔色などが自然なままで見られるので、女性の方のメイクに最適ですね。

有機ELを装備した洗面室のミラー。

部屋の中に青い空、夜の空を再現

  • 木村:自然光は本当に大事で、ダイニングは朝陽が入るか、感じることのできるところに私は配置したいと思っています。その反面、最近は在宅ワークが増えてきたこともあるので、ワークスペースに直射日光が入るのは避けたいんですよね。
  • 城戸:体のリズムを考えると、そのプランニングがいいですね。
  • 木村:ワークスペースや勉強コーナーは光の安定している北側に天窓を設けて、光を入れるのもいいと思います。天窓は雨などへの対応が大変そうですけどね。
  • 城戸:敷地が大きければどんなプランも可能だと思いますが、狭小地で採光が難しいようなところでは、有機ELのディスプレイを利用すればいいと思いますよ。ディスプレイを窓がわりにして、そこに昇ってくる朝日を再現すればいいわけですから。それくらい臨場感のある映像を実現していますよ。

木村:自然光に近いスペクトルで光量も含め再現すれば、本当に朝陽を浴びるのと同じですよね。都市部の狭小地では、どんな建築家もある程度諦めることもあったんです。それが最新の技術で選択肢が増えるのは素晴らしいことだと思います。

城戸:宇宙ステーションなども同じなんです。スペースが限られているので有機ELを壁に貼ってしまえばいい。そこに好きな映像を映したり、地上とつなぐコミュニケーションツールにすればいいんですから。

木村:朝陽が昇ってくる環境と同じものがつくれるのはうれしいですね。

城戸:私のたくらみとしては、それをライブ映像で実現したいんです。壁の有機ELにカリフォルニアの海岸のライブ映像が映っているとか。日々刻々と変わっていくのが面白い。

  • 木村:でも、カリフォルニアだと時差で真夜中かもしれませんよ。(笑)
  • 城戸:たしかに!(笑)
  • 木村:通信環境が5Gになって、映像が8K対応になっていけば、ますます精度が上がりますね。
  • 城戸:スマート未来ハウスでは、天井一面にも有機ELを入れたかったんです。一部には入っているんですが、それだけでは足らなかった。天井一面に入れて外にライブカメラを設置して空を映すんです。家の中の空間だけど、まさに外と繋がっているような。夜は星がきらめいて、すごく綺麗だと思いますよ。
  • 木村:もう空間が、単なる部屋じゃなくなりますね。
  • 城戸:その通りです!私はそれを目指しているんですよ。青い空、白い雲、そして太陽。究極の照明ですよ。小川のせせらぎだったり、先ほどのローソクの炎の揺れだったり、「ゆらぎ」ってあるじゃないですか。それを空間に取り入れたいんです。
  • 木村:話を聞いているだけで、気持ちいい空間だと思えますね。
  • 城戸:雪が降ってくるところを見てみたいですね。きっと気持ちいいと思います。
  • 木村:それで言うと、雨の日の天窓はすごく気持ちいいんですよ。雨があたる音や、はじける滴、窓を流れる水の模様、すごく「ゆらぎ」を感じることができますよ。きっと雨の日が好きになると思います。
  • 城戸:「ゆらぎ」はこれからの家に欠かせない要素と言っていいかもしれませんね。光だけじゃなく、風の吹く音なんかも再現すれば、もっと「ゆらぐ」家にできると思います。住まい全体をゆらがせる日がもうそこまで来ているかもしれませんね。
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